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鹿児島市内の小学校 児童のホーム転落事故を事実上の隠蔽(上)
市教委への事故報告なし 在校児童・保護者へは未公表

2015年12月 7日 07:30

薩摩松元駅 鹿児島市内の市立小学校が、児童の下校途中に起きたJR駅でのホーム転落事故を保護者に周知せず、市教委への事故報告も怠っていたことが明らかとなった。
 児童の転落事故が発生したのは10月中旬。重大事故につながる可能性があったにもかかわらず、学校側は関係者との間だけで事後処理を済ませ、在校生の保護者たちには何の注意喚起もしていなかった。
 4日、HUNTERの鹿児島市教育委員会への取材で、学校側が市教委への事故報告を怠っていたことも判明。取材に応じた学校長は事実関係を認めた上で反省を口にしたが、一連の対応を検証したところ、事案の表面化を避け責任逃れを図ろうとした学校側の姿勢が浮き彫りになった。

下校時、児童が駅ホームから転落
 事故対応を怠っていたのは、市内上谷口町にある市立松元小学校。同校には、約3キロ離れた松陽台町などJR鹿児島本線上伊集院駅周辺に居住する家庭の児童が200人以上通学しており、転落事故は子どもたちの下校途中、学校近くの無人駅「薩摩松元駅」(下の写真)で起きた。

薩摩松元駅

 数人の児童が駅のホームで昆虫観察に夢中になる中、低学年の児童がホームから約1メートル下の線路上に転落。他の児童らが防犯ブザーを鳴らし、気付いた見守り当番の保護者らが助け上げたという。児童は、打撲のほか出血を伴うけがを負っていた。保護者らが居たおかげで助かった形だが、一歩間違えれば重大事故に発展した可能性がある(下が転落事故が起きた薩摩松元駅のホーム)。

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事故を伏せた学校側
 問題は、事故後の学校側の対応。事案発生から2カ月が過ぎようとしている現在も、列車通学を余儀なくされている地域以外の保護者は転落事故があったことを知らされておらず、全校的な対策強化は手つかずのまま。転落事後が起きたことさえ知らぬ児童・保護者が大半だという。

 転落事故が関係者以外の保護者に伝わったきっかけは、保護者らの組織「あいご会」の松陽台地区組織が、地域の家庭向けに作成・配布した通知文書。事故発生から1か月以上経った先月26日、「登下校時におけるJR利用について」と題する事故の顛末と家庭での指導強化を図る理由などを記した文書が、JR利用時のマナーなどを列挙した別添文書とともに、小学生がいる家庭に配られていた。

 この間、学校側は全校生徒や保護者に事故発生の事実を伏せたまま、松陽台地区からJRで通う児童たちだけに、下校時の注意事項を伝達しただけ。その際も、薩摩松元駅での転落事故については、一切触れていなかったという。

なかった市教委への事故報告
 HUNTERは4日、鹿児島市教育委員会に対し転落事故についての報告の有無を確認。市教委が当該事案の事故報告が未提出であることを認めたため、松元小学校の校長に取材した。

 学校長は、転落事故が発生したことを保護者全体に説明しなかったことについて、「けがが軽かったため、重く受け止めていなかった。反省している」と釈明。市教委への事故報告を怠ったことについては、同様の理由で「うかつだった」としている。

 事故後の対応が誤りだったことを認めてはいるが、これは取材を受けてのこと。校長は、転落事故の折に居合わせた児童らとその保護者だけで解決を図ったことを認めており、言うならば内々で事を済ませた形。重大事故につながる可能性があった事案を意図的に伏せた格好だ。

 学校側による一連の対応は、事実上の隠蔽ではなかったのか――疑問を感じて取材を重ねたところ、責任逃れに走った学校側の姿勢が浮き彫りとなる。

つづく



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