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残された疑惑 ― 福岡市民病院 不正の真相(下)

2015年11月26日 08:50

福岡市民病院 “停職3カ月”の懲戒処分を受けた福岡市民病院の元事務局長。部下を巻き込んだ不正契約は、公表分で2件。契約金額は計230万7,000円だった。
 同病院を運営する「地方独立行政法人福岡市立病院機構」作成の事件経過によれば、元事務局長は、「前の職場」に勤務していた時から付き合いのあった業者に仕事を取らせるため違法な行為に走った形。確認したところ、「前の職場」とは民間の病院だという。
 それにしても、市からの出向職員を使嗾(しそう)するほど、病院内で力を有していた元事務局長とは何者なのか?そして、元事務局長を対象に収賄での立件を目指したとされる福岡県警の捜査は十分なものだったのか?開示された文書から、実態を探った。
(写真は福岡市民病院。病院機構HPより)

懲戒事務局長―公募で選ばれた逸材
 これだけの事件を起こした元事務局長だが、逮捕されることもなく、たった3カ月の停職。復職する可能性もあり、民間では考えられない甘い対応だ。病院機構側は、元事務局長の氏名はおろか経歴さえ公表していないが、開示された文書の中に元事務局長の素性をうかがわせる記述があった。度々出てくる「前職において~」という文言がそれ。つまり、業者との関係ができたのは「前の職場」ということになる。病院機構に聞いたところ、前職が民間病院の職員だったことだけは認めており、そこに癒着の原点があるのは確か。元事務局長を特定する手立てを考えていたところ、やはり開示された文書の記述の中に、公表されていない彼についての情報があった。下の文書を見ていただきたい。

職員の不適切な契約処理について

 赤いアンダーラインで示した通り、元事務局長は今年4月から事件発覚の7月まで、「こども病院の事務部長」だったことが分かる。懲戒処分の公表文にもなかった記述だ。これだけ分かれば該当する人物を特定するのは容易。元事務局長の氏名と大まかな経歴をつかむことができた。以下、元事務局長を「I氏」とする。

 I氏は52歳。前職は、福岡県飯塚市にある「飯塚病院」の職員だった。飯塚病院は、高島宗一郎市長の後ろ盾といわれる麻生太郎財務相のご実家企業「株式会社麻生」が経営する筑豊屈指の医療施設である。

 飯塚病院に勤務していたI氏は、平成22年4月に設立予定だった「地方独立行政法人福岡市立病院機構」の事務局長公募で選ばれた逸材。公募したのが福岡市だったため、いったんは市職員として雇用され、その後、機構のプロパー職員になったとされる。市民病院の運営が病院機構になった当時に作成された文書には、事務局長としてI氏の名前が記されていた(下がその文書)。

独立行政法人とは?

 I氏が福岡市民病院で不正を働いてまで仕事を与えた業者は、麻生・飯塚病院時代からの腐れ縁だったということになる。すると、“他にも同様の事案があったのでは”と疑うのが普通だが、なぜか福岡県警の捜査が、問題になった2件の契約以外に広がった形跡はない。

 県警の捜査対象となっていたのは、明らかにI氏。旧知の業者に受注させた掲示板、表示板の2件の製作業務契約が「入口」だったのも確かだ。不正の手口も悪質で事件性の濃い案件だったが、I氏が事情聴取を受けたのはわずかに数回。金銭授受の裏付けがとれなかったため立件が見送られたというのだが、不可解なことに、県警は問題の2件以外の契約について精査していない可能性が高い。

捜査が止まった?
 下は、機構が作成した事件経過の一部。赤いアンダーラインと矢印で示した記述に注目した。

116-1.jpg

 病院機構が県警の求めに応じて提出したのは、市民病院の委託契約書関係書類。すべての契約関係書類のなかから、疑わしい契約を割り出すのが捜査の常道だと思っていたので、記述にある「A社関係等」が気になった。『等』とはいかなる意味か?

 県警に提出された契約関係書類が“A社分を含めたすべての契約関係書類”なのか、あるいは“A社が関係する契約関係書類”ということだったのか、はたまた不正が発覚した“A社との2件の契約関係書類だけ”なのか――。もし、県警に提出されたのが“A社が関係する契約関係書類”なら不十分。あり得ない話ではあろうが2件の契約分だけだというのなら、まさに形だけの捜査ということになる。いずれの場合も、他の業者との不正が見逃されることになるからだ。

 念のため、病院機構に県警に提出した契約関係書類について確認した。すると機構側はあっさり「A社分だけですから」。日を置いての再確認でも「A社の2件分だけ」という回答だった。県警は、懲戒対象となった2件以外の契約について、詳しい検証を行っていないということになる。捜査が尽くされたとは言い難い状況だ。

 ここで、平成23年当時の2件の契約についての流れを再掲しておきたい。(*I氏は「事務局長」、市から出向していた職員は「係員」と表記)

事件の経緯(表)

 I氏の行為はどう見ても悪質。市民医療を汚したという意味でも責任は重く、「停職3カ月」で済むような話ではあるまい。逮捕が当然の事件が、なぜこの程度の処分で幕なのか――。HUNTERは、病院機構に対しさらなる情報開示を求めることにした。

(以下、12月の配信記事で)



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