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伊藤鹿児島県政 放射線測定装置の不具合を2年間隠ぺい
川内原発再稼働で騙された鹿児島県民

2015年11月18日 08:30

鹿児島県庁・川内原子力発電所 川内原発再稼働の前提となった鹿児島県の避難計画は、やっぱり食わせ物だった。
 会計検査院が公表した26年度決算検査報告で、鹿児島県が平成24年度に設置した25個所の放射線測定装置(モニタリングポスト)が、設計ミスから測定不能になる時間帯があったことが明らかとなった。
 鹿児島県内のモニタリングポストは全部で67基。4割近くに不具合があったことになるが、県は平成25年にこの事実を把握しながら事実上放置。公表はもちろん、原子力規制委員会への報告さえ行っていなかった。
 この間、伊藤祐一郎知事は民意を無視して川内原発再稼働に合意しており、避難誘導時の態勢に重大な欠陥があることを知りながら県民を欺いた形。改めて、嘘つき知事の責任を追及する声が上がりそうだ。
(写真は鹿児島県庁と川内原発)
 
会計検査院が放射線測定の不備を指摘
 会計検査院が指摘したモニタリングポストの不具合とは、県が整備したモニタリング設備が太陽光発電を利用したシステムだったため、日照不足で電力が得られず、測定不能になる時間帯があったというもの。会計検査院は、「放射線を24時間連続して監視できること」などとされていた仕様が守られておらず、設計が不適切だったため放射線を24時間連続して監視する機能を維持できなかったとして整備に係る交付金相当額6,945万7,000円を不当と認定していた。下が、会計検査院決算検査報告の該当部分である(赤い矢印はHUNTER編集部)。

01環境省.png

 モニタリングポストの整備費は、環境省(原子力規制委員会)が県に支出した「放射線監視等交付金」を原資としたもの。このため、会計検査院の指摘を受けた原子力規制委員会は、鹿児島県に対し厳重注意を行っている。

モニタリングポストの不具合、2年間放置
 国が、原発事故の際に放射性物質がどのように拡散するかを予測できる唯一のシステム「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の利活用をやめた現在、モニタリングホストは事故時避難の最後の砦。“測定不能でした”では済まされない大失態だが、県側に反省する姿勢は皆無。それどころか、平成25年5月の段階でモニタリングポストの不具合を把握していたにもかかわらず、会計検査院の指摘があるまで、事実上放置していた可能性があることも分かってきた。

 県危機管理局原子力安全対策課に確認したところ、モニタリングポストの不具合を把握したのは「平成25年の5月」だったという。会計検査院からの指摘は今年の5月。つまり、県は2年間、モニタリングシステムの不備を放置していたということになる。県は「対応策を協議していた」というが、会計検査院の指摘から3カ月で追加工事に及んだところを見ると、この言い訳は通用しそうにない。

「環境放射線モニタリング技術委員会」の不作為
 不具合放置の証拠は他にもある。鹿児島県は、川内原発周辺地域の環境放射線監視測定について学識経験者の意見を聞くため、大学教授らで構成された「鹿児島県環境放射線モニタリング技術委員会」を平成24年度に設置し、年4回のペースで会議を開いてきた。だが、モニタリングポストの不具合が判明した平成25年の5月以降に開かれた9回の会議の記録には、この問題についての記述はなく、先月29日の平成27年度第2回委員会の結果報告に、ようやく次のような記述が認められる(赤い矢印はHUNTER編集部)。

補助事業の実施及び経理が不当

 これ以外の会議結果は、毎回≪川内原子力発電所周辺環境放射線調査結果報告については、空間放射線量及び環境試料の放射能とも、これまでの調査結果と比較して同程度のレベルであり、異常は認められなかった≫。8人もいる大学の先生方が、モニタリングポストの不具合を知らなかったとすれば、原因は県の組織的な隠ぺい。知っていて問題視しなかったのだとすれば、ただの御用組織ということになる。いずれにしろ、「不作為」の批判は免れない。

原発再稼働優先で不具合隠ぺい
 鹿児島県の隠ぺい姿勢は今に始まったことではないが、モニタリングポストの不具合を隠していたことは、県民に対する背信行為だ。県は、川内原発1号機が再稼働した8月11日の前日までに、商用電源からの電力供給が可能となるよう追加工事を行い、原発事故対応の不備を繕っていた。原発の安全神話が崩壊した「東日本大震災の発生=福島第一原発の事故発生」以降の、川内原発を巡る動きをまとめた。

川内原発を巡る動き
 モニタリングポスト改修工事は8月3日から10日まで。川内原発再稼働の1日前に、駆け込みで間に合わせた形だ。九州電力は11日、川内原発1号機の原子炉を起動させていた。

 伊藤知事は、原発事故が起きた場合の避難誘導にとっては致命傷となるモニタリングポストの不具合を知りながら、原発再稼働にゴーサイン。“県民の安全より原子力ムラの利益”――これが伊藤知事の基本姿勢となっている。

崩れた避難計画の前提
 下は、規制委への情報公開請求によって開示されたSPEEDIデータの一部。平成24年と25年に作成されたものだ。

スピーディ スピーディ1.jpg

 鹿児島県は、避難計画策定にSPEEDIデータを利用しておらず、このデータを保有さえしていない。原発事故が起きた場合は、モニタリングポストの測定データに従って避難誘導を行うとしてきたが、設置したモニタリングポストに不具合があれば、避難計画自体が「絵に描いた餅」。大前提が崩れる事態の隠ぺいに走った伊藤知事の責任は、決して軽くはない。

 4選出馬が確実視される伊藤知事だが、鹿児島県民はこの嘘つき独裁者の続投を許すのだろうか?



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