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オスプレイ佐賀配備 防衛相発言にみる「沖縄軽視」

2015年11月 2日 08:45

オスプレイ 新型輸送機オスプレイ(写真)の佐賀空港への配備を要請するため山口祥義佐賀県知事と会談した中谷元防衛相が、米軍普天間基地所属のオスプレイ訓練を佐賀に移すとしていた当初の計画をひっこめ、ひとまず自衛隊のオスプレイやヘリ部隊だけを配備する方針を明らかにした。“沖縄の負担を軽減するため”という大義名分が、いつのまにか消えた格好だ。
 一方、沖縄では普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、国と県との法廷闘争が必至の状況。安倍政権は、沖縄に負担が集中する現状を当然と思っているらしく、“移設反対”の民意と向き合おうともしない。
 こうした姿勢を如実に示したのが会談の中で出た中谷氏の発言。オスプレイ配備にあたって、佐賀では「知事の同意」が前提で、“負担集中”もさせないのだという。本土内の意向は重視するが、沖縄県民の思いは無視――同じ日本で、なぜこれほど沖縄だけが軽んじられるのか?

口に出た沖縄軽視の本音
 中谷防衛相は29日、佐賀県の山口知事と会談し、次のように語っている。

 これまでの経緯を申し上げますが、昨年夏に小野寺前大臣や武田元副大臣が古川前知事に対してオスプレイの佐賀への配備、目達原駐屯地からの自衛隊機50機の移駐、そして、沖縄の負担軽減のためのアメリカ海兵隊の利用の3点をお願いをさせていただきました。山口知事からは、アメリカの海兵隊の利用を含む佐賀空港利用の全体像・将来像のご質問をいただいておりますが、佐賀空港利用の全体像・将来像のうち、アメリカの海兵隊の利用につきましては、自衛隊や海兵隊が行う訓練の規模、回数、そして、全国の都道府県が受けとめられる負担の内容にも左右をされるために、今般、自衛隊機の配備、移駐とは切り離して、要請を取り下げさせていただきます

 もともと佐賀空港の軍事利用は、“沖縄の負担軽減”が目的だったはず。しかし、米軍が計画に難色を示したことから、普天間基地所属のオスプレイをひっこめ、自衛隊のオスプレイ配備優先へと方針転換した経緯がある。オスプレイ配備に慎重だった山口知事だが、どうやら米軍抜きの計画には前向き。佐賀市など関係自治体と県民の反応を見極めながら、最終的にはオスプレイを受け入れるとの見方も出ている。

 だが、平気で国民を騙すのが安倍政権。政府は、佐賀で米海兵隊のオスプレイ訓練を行うことを、あきらめたわけではない。そこで、将来の訓練実施を担保するため、“沖縄の負担軽減”という切り札を持ち出す。

 ただし、政府としては沖縄の負担を全国で分かち合うべきとの基本的な考え方に基づきまして、引き続き全国の他の空港との横並びの中で佐賀空港の活用も考慮させていただきたいと思っております。

 基地が集中する沖縄のため、全国でその負担を分かち合おうというご立派な姿勢だが、次の発言で、沖縄軽視の腹の内をさらけ出す。

 このため、今後、米国との協議や負担軽減をめぐる全国の自治体の取り組みの状況をよく勘案をした上で、必要に応じて改めてお願いをさせていただくことがあり得ますが、負担軽減の一環としての米海兵隊の空港の利用に当たっては当然ながら知事の同意を得た上で利用させていただくものであり、佐賀県に負担が集中するような利用は全く考えておりません

 沖縄では、「知事の同意」どころか翁長雄志知事の政治生命をかけた反対にあっているのが現状。それでも辺野古移設を強行しているのが安倍政権だ。同じ日本の自治体でありながら、なぜ本土内の知事にだけ配慮を示すのか?さらに言うなら、「佐賀県に負担が集中するような利用は全く考えておりません」という防衛相の一言は、“沖縄ならいい”とする本土側政治家の考えの裏返しだ。

負担集中の実態
 沖縄の米軍施設は31。区域面積は226,233 千m2にのぼり、県土全体の1割を占めるている。沖縄本島に限れば2割が米軍基地。丘陵地や台地が県土の大部分であることを考えれば、異常な状態だ。一体どのような施設があるのか、下の米軍施設一覧表で確認しておきたい。

沖縄の米軍施設

 31施設のうち13施設は「演習場」。暮らしに近接して、砲弾・銃弾が飛び交うといった自治体が。沖縄を除く46都道府県のどこにあるというのだろう。「佐賀県に負担が集中するような利用は全く考えておりません」――中谷氏のこの発言は、沖縄なら基地が集中しても構わないと言っているに等しい。

 本土の米軍施設は51だが、区域面積は79,993 千㎡に過ぎず、国土全体の0.02%を占めるにとどまる。国土の 0.6%に過ぎない沖縄に、国内米軍基地の75%が集中する現状について、本土の政治家はあまりに無関心。それどころか、“国防のためなら犠牲になれ”と言わんばかりの横暴さだ。

政権が守りたいのはアメリカの国益
 先月27日、辺野古の埋立承認を取消した沖縄県への対抗措置を発表した菅義偉官房長官は、地方自治法に基づく代執行等の手続を行うと宣言し、こう述べている。

 ―― (沖縄県の)取消処分により、普天間飛行場の危険性除去が困難となり、外交・防衛上重大な損害を生ずるなど、著しく公益を害する。

 じつに身勝手な主張だが、裏返せば政権の能力のなさを証明したようなものだ。普天間の危険性除去は、沖縄に基地を押し付けてきた政府の責任。地元が県内移設に反対している以上、別の場所で移設先を探すのが筋だろう。それができない政府にこそ問題があるのに、沖縄を悪者にしてはばからないというのだから、開いた口が塞がらない。

 「外交・防衛上重大な損害」が、具体的にどういうことなのかも分からない。「外交」というが、米国との約束にこだわっているのは安倍首相と外務省、防衛省。日本の国民の多くが辺野古移設に懐疑的であることを無視した言い分だ。

 「防衛」の観点から見てもおかしい。沖縄に駐留しているのは主として海兵隊。これはアメリカの国益を守るための緊急展開部隊で、いわば先制攻撃が専門。防衛のための組織ではない。ならば、政府が言う「防衛」とは、どこの何を守るためのものか?

 沖縄の米軍が、日本本土の防衛を任務としていないことは、米国がかかわったベトナム以来の戦争で明らかになっているはず。「日本を守るために沖縄の基地が必要」という主張はこじつけに過ぎず、実態はアメリカの国益を守るための基地なのである。沖縄を犠牲にして米国のご機嫌を取り続けてきたのは、他ならぬ自民党政権。これこそ安倍首相が脱却するのだと言い続けてきた「戦後レジーム」の核心部分のはずだが……。



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