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佐賀県パソコン教育事業 県教委が「改善検討委」を一方的に打ち切り
決済文書は不存在 ― 隠ぺい姿勢露呈

2015年11月16日 06:00

佐賀県教育委員会 タブレット型パソコンを使った「先進的ICT利活用教育推進事業」の総括を行うとして、今年5月に検証組織「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会」を立ち上げた佐賀県教育員会が、年度途中の11月10日、一方的に同委員会の終了を宣言していたことが分かった。
 機材トラブルの続発、不透明な業者選定など数々の問題点が指摘されてきた同事業の検討作業は緒に就いたばかり。検討委員会のメンバーから出された課題を放置したまま、県教委が隠ぺいに走った形だ。

唐突に会議打ち切り
 今月10日、第7回を迎えた「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会」の冒頭、福田孝義副教育長がこう切り出したという。

 ―― 10月に開催した第4回佐賀県総合教育会議にて、改善検討委員会で出された課題も含めて報告した。中学生が進路決定する時期にも差し掛かり、方向性については決定しなければならない状況だった。
 知事や教育委員の中で来年度も(事業を)推進ということで確認した。ただし、改善検討は今後も続けるように言われている。この委員会は今回で一旦閉じさせていただく今後、機種選定や改善検討を行う場合は、新たに人選することになると思う

 一方的な打ち切り宣言に驚いたのは検討委のメンバー。検討委は、年度内いっぱい議論するものとばかり思っていたからだ。検討委の正式名称は「平成27年度ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会」。5月の第1回会議で配布された説明資料にも、検討委の開催期間について、『平成27年5月29日から平成28年3月31日までとする』と明記されている(下参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

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 検討委の会議はこれまで7回。会議ごとの協議内容は、次のようになっていた。

・第1回:教委側から事業に関するこれまでの経緯等を説明
・第2回:ICT利活用についての国及び業界の動きについて
・第3回:教育現場の意見を聴取
・第4回:     同
・第5回:課題として現場から出された意見とこれまでの対応状況
・第6回:県教委としての今後の進め方及び改善に向けた意見について
・第7回:ICT利活用教育の今後の進め方について

 第6回目までは、現状把握とパソコンを使って授業を行っている現場の声を整理した形。突っ込んだ議論には至っておらず、いわばその前段階だった。疑惑が持たれていた機種選定過程や、50億円を超える巨額な事業費の検証などは手つかず。複数の委員から事業の関連文書やデータの請求があったが、県教委側が開示に応じたのはごく一部の情報だけだったという。ようやく委員全員で課題を共有し、“これから本格的な議論を”という時の打ち切り宣言。委員の中から、「事業の詳細を知られたくない県教委の姿勢がハッキリ見えた。隠ぺいしなければならない事実があるとしか思えない」といった声が上がるのは当然だろう。

打ち切り否定の県教委だが……
 13日、県教委側に取材したところ、一方的な打ち切りを否定。それまでの会議の中で、「県教委として、検討委は今年いっぱいで終了することをお話ししていた」と言う。検討委の議事録を確認してみると、第4回会議の最後に、会議の開催予定を聞かれた福田副教育長が「月1回程度開催し、12月ころにまとめたいと思っている」と話してはいる。だが、年度末までの会議開催を言い渡されている委員たちは、これを検討委の終了時期を指した言葉だとは思っていなかったらしく、ある委員は次のように話している。

 ―― 12月は、あくまでも“途中経過のまとめ”としか思っていないかった。検討委のメンバーが聞いたら、怒るんじゃないか。そもそも、第7回で打ち切りを言い出した県教委の姿勢に、ほとんどの委員が呆れていたほどだから。検討委の議論は未消化の部分ばかりで、“まとめ”や総括などはるか先の話だった。

 どうやら、議論の行方に危機感を持った県教委側が早い時期に検討委を終わらせることを想定し、伏線を張っていたと見るのが自然のようだ。

打ち切り決定 ― 決済文書は不存在
 じつは、5月の第1回会議で県教委が示した『平成27年5月29日から平成28年3月31日までとする』という開催期間は、県教委内部で正式な決済を経たもの。勝手に変えることなどできないはずだ。そこで、検討委の打ち切りを決めたのはいつで、誰が決定権者だったのか県教委に聞いたところ、明確な回答ができない状況。開催期間変更に関し、情報公開請求の対象となる公文書が存在するのかとの問いに対しては「公文書としては残っていない」という。開催期間短縮は、県教委内部での正式な手続きを経たものではないということだ。ちなみに、検討委打ち切り発言を行った福田副教育長は、「先進的ICT利活用教育推進事業」の責任者。部長時代から、事業の組み立てや業者選定に辣腕を振るってきた人物である。

 県教委は、来年度も改善検討を続けるとしているが、委員の交代にも言及しており、ここまでの議論が無駄になるのは確実。改善検討とは名ばかりで、事業推進のためのアリバイ作りだった可能性が高い。

止まらぬ県教委の暴走
 「先進的ICT利活用教育推進事業」を巡っては、昨年度、県立高校の全新入生にタブレット型パソコンを強制購入させたものの機材不良などのトラブルが続出。業者選定にも疑惑が浮上する事態に――。批判の高まりを受けた県教委は、「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会」を設置して議論を始めたものの、HUNTERの情報公開請求から議事録作成を怠っていたことが発覚。いったんは「不存在」とした第1回会議の議事要旨を公表するなど、隠ぺい姿勢が際立つ格好となっていた。生徒を置き去りにした、県教委の暴走である。

 今年1月の佐賀県知事選挙で初当選した山口祥義知事は、就任会見で事業の見直しを明言している。



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