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鹿児島・伊藤独裁県政 県民は失政の尻拭い役
― 住宅供給公社の惨状 ―

2015年11月 5日 08:40

鹿児島県庁 伊藤祐一郎鹿児島県知事の県政運営は、まさに独裁。住民の意思などお構いなしに、力ずくで自身の施策を押し通すのが彼の流儀である。川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働にあたって、避難計画の不備を指摘されながら、県民そっちのけで原子力ムラと共同歩調をとったことは記憶に新しい。
 失政の犠牲になるのは、いつの世も弱い立場の一般住民。原発で事故が起きた場合は多くの県民が放射能を浴びるが、無駄な事業のツケを払わせられるのも県民だ。
 伊藤独裁県政の象徴として、HUNTEERが追い続けてきた事業が二つ。薩摩川内市に整備された産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」と、鹿児島市松陽台町に整備が進む県営住宅である。いずれも、「県民のため」という謳い文句は嘘っぱち。処分場建設は地場ゼネコンの救済、県営住宅の方は外郭団体「鹿児島県住宅供給公社」の救済を目的としたものだった。
 県の包括外部監査結果(平成25年度)を引用する形で、県住宅供給公社をめぐる県政の歪みを検証する。

鹿児島県住宅供給公社の惨状
 鹿児島県住宅供給公社は、昭和40年に鹿児島県が全額出資して設立した外郭団体だ。≪住宅を必要とする勤労者に対し、住宅の積立分譲等の方法により居住環境の良好な集団住宅及びその用に供する宅地を供給し、住民の生活の安定と社会福祉の増進に寄与する≫との事業目的で、宅地分譲及び賃貸施設管理を行ってきた。

 平成25年4月までに55団地・約9,300戸の住宅を供給してきたが、近年の地価下落傾向等に伴って保有資産の価値が下がり、平成16年度には赤字に転落。平成18年度には県から約115 億円の無利子貸付を受けるに至っている。

 公社は平成18年に「経営健全化計画」を策定し、平成21年度の経常収支黒字化と平成29年度の債務超過解消を目指すとしていたが、経常収支が黒字化したことは一度もない。下は県の包括外部監査結果報告にある同公社の19~24年度における損益推移だが、どう見ても惨憺たる状況。民間ならとうに倒産している数字だ。

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住宅政策の失敗―ツケを払うのは県民
 経営悪化は、地価の下落だけが原因ではなく、むしろ、売れない分譲地を次から次へと開発した結果と言うべきだろう。24年度末分譲事業資産残高は84億円であり、総資産161億円の半分超。売れ残りの土地が膨らんだのは明白だ。

 資産合計約161億円に対し、負債の総合計は183億4,800万円(内、長期借入金165億2,800万円)となっており、平成24年度末の債務超過額は22億円超。これは全国の地方住宅公社のなかでも4番目に厳しい財務数値なのだという。それでも鹿児島県は、公社の存続に固執。包括外部監査の結果報告には、今後の方向性についての所管課の回答として「存続」と明記されていた。これを受けて、監査人は「積極的な分譲促進、賃貸管理事業の入居率向上による収益の確保」という課題について、次のように指摘している。

 各都道府県及び政令指定都市に設立された地方住宅供給公社57 公社のうち、平成20-24年度の間に15 公社が解散し、平成25年度も奈良県住宅供給公社の解散が予定されているが、鹿児島県では公社の今後について存続方針と回答している。
 平成24年度決算における当公社の債務超過額は特定調停を実施していない公社の中では山梨県(38億円)に次ぐ22億円であり、全国的にも非常に厳しい状況といえる。公社の借入金残高175億円のうち、県からの借入金約115億円は金融機関借入金に劣後する債務であり、加えて民間金融機関借入金には県の全額損失補償が付されており、県の債権放棄及び追加支出が発生する可能性がある

 売れない分譲地の開発を続けたあげく、県費による115億円もの貸付金は「放棄」。さらに、追加支出が必要になるというわけだ。失政のツケを払うのは県民――“盗人に追い銭”とはこういうことを言うのだろう。

県営住宅増設―やはり公社の救済策
 監査結果報告の中で、もっとも注目したのが次の一節だ。

 毎期経常赤字が続いているが、主な原因は分譲事業の販売不振である。平成24年度は県への用地売却(ガーデンヒルズ松陽台県営住宅用地)により減価償却前黒字となったが、県の支援後も借入金金利負担は依然重く、「経営健全化計画」の目標である経常収支黒字の達成可能性は、現状のままでは難しいといえる。

 ここにある「ガーデンヒルズ松陽台県営住宅用地」とは、これまで度々報じてきた松陽台県営住宅建設のために、県が公社から取得した土地のこと。県公社がガーデンヒルズ松陽台で販売を予定していた戸建用地は470区画だったが、販売不振で公社の経営が悪化。170区画程度(平成23年2月までの実績)を売却したところで、伊藤祐一郎知事が方針を大きく変え、分譲予定地で最大の面積を占める戸建用区画約5.6 haを、すべて「県営住宅」に変更するとして県が約30億円で取得していた。

 これまで県は、問題の土地取得について“公社の救済策”を頑として否定してきた。だが、包括外部監査の監査人は、この土地売買を「県の支援」と断定。県はこの指摘に反論しておらず、救済策だったことを認めた形となっている。県民の税金で、住宅政策の失敗を穴埋めしたのは確かだろう。

売れない分譲地、土建業者らに売却
 しかし、その後も公社の分譲地は一向に売れず、経営状況は悪化するばかり。公社は、ガーデンヒルズ松陽台の土地売却を進めるため、販売先の都合に合わせて複数の契約書を作成。県とつながりの深い土建業者らに、分譲地を買い取らせていたことが明らかとなっている。ガーデンヒルズ松陽台の戸建用地は284区画。これまでに販売されたのは249区画だが、このうち108区画が、大手ハウスメーカーや県建設業協会加盟社など50社に販売されていた。契約書の種類は14種類にものぼっており、著しく公平性を欠いた形。不適切な土地販売によって、公共事業で造成された土地が一部業者に利益をもたらす結果を招いている。

 お付き合いで買った土地ということか、土建業者らは買った分譲地を事実上放置。草は生えるは、禁じられた土地転売の看板を立てるはのやりたい放題。HUNTERの報道を受けて、契約通りの建売りに乗り出した業者もいるが、荒れた状況は現在も変わりない。下は先月中ごろのガーデンヒルズ松陽台の一角。土建業者の所有地には何故か黒いシートが敷かれ、めくれ上がるなど醜い状態。付近の住民が顔をしかめて通るといった具合だ。

町田建設・丸久建設(1)(151021)  町田建設・丸久建設(2)(151021)

失政は明らかだが 
 県公社による宅地開発の失敗 → 税金で穴埋め → 損失拡大 → さらなる税金投入――これが伊藤県政の手法だ。売れない開発地を買い取ったものの、松陽台は市街地から遠く、一般的な県営住宅の増設では入居者が集まらない。必要性を疑問視されるのが必至だったことから、考え出されたのが「子育て世代向けの県営住宅」だった。

 だが、松陽台周辺には保育所もなく、小学校はJRの列車で一駅先。子育て環境としては最悪である上に、入居期間は原則10年なのだという。無責任な子育て支援というしかないが、人の入れ替わりが激しい地域で、街が熟成するとは思えない。見えてくるのは「ゴーストタウン」。巨額の税金を使った弥縫策が、再び県民を苦しめることになる。

 強引な県政運営の象徴である100億円産廃処分場「エコパークかごしま」も、開業から1年で破たん必至の状況。さらなる県費投入が見込まれる事態となっており、こちらも県民の負担は増える一方だ。来年は知事選。鹿児島県民が独裁県政をどう評価するのか、注目である。



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