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安倍首相国会発言で見えた「国家総動員法」の時代

2015年11月12日 08:40

安倍晋三首相 安倍晋三首相は11日、参院予算委員会の閉会中審査の中で「緊急時に国民の安全を守るため、国家、国民自らがどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどのように位置づけるかは極めて重く大切な課題だ」と発言。現行憲法を改正し、緊急事態条項を新設する必要があるとの見解を示した(写真)。
 緊急事態条項とは、有事や大規模災害などの緊急時における政府の権限を明確化し、国民の生活や経済活動などに制限を加えることを認める規定。東日本大震災後、その必要性を指摘する声が上がったのは確かだが、安倍政権下で想起すべきは戦前。日中戦争が泥沼化する中、帝国日本は、首相発言と同様の趣旨を目的に掲げた戦時法規を制定していた。「国家総動員法」である。

国民縛った戦時法規
 1938年(昭和13年)、日中戦争が泥沼化する状況で制定されたのが戦時法規である「国家総動員法」。下は、その第一条である。

第一条
  本法ニ於テ国家総動員トハ戦時(戦争ニ準ズベキ事変ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ際シ国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効ニ発揮セシムル様人的及物的資源ヲ統制運用スルヲ謂フ

 口語訳すれば、≪本法律において国家総動員とは、戦争時(戦争に準ずるような事態を含む)に際し、国防という目的の達成のため、国の力を最も有効に発揮できるよう人的、物的資源を政府が統制し運用することをいう≫といったところ。戦争遂行のためには、人も物も政府の統制下に置くということだ。

 「緊急時に国民の安全を守るため、国家、国民自らが果たすべき役割を憲法に位置付ける」――参院予算委での首相発言を具現化したのが緊急事態条項だが、これこそ国家総動員法の立法趣旨と同じものなのである。もちろん、現行憲法にはこんな規定はない。しかし、2012年(平成24年)に自民党が公表した「日本国憲法改正草案」には、新設の『第九章 緊急事態』として盛り込まれている(以下、自民党憲法改正草案より抜粋)

第98条(緊急事態の宣言)
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる

第99条(緊急事態の宣言の効果)
1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる

3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない

 大規模災害は別として、安倍自民党の方向性に従えば、“いざ戦争”で国民の自由などなくなるのである。首相にとっては、これこそ「美しい国」。何から何まで戦前回帰だ。

歴史は繰り返す 
 国家総動員法が制定されるまでの過程では、現在と似たような光景が繰り広げられてことも知られている。当時、政府を代表して法案の趣旨説明を行った陸軍の中佐が、議場からのヤジに激高。「黙れ」と恫喝し、一時議会をストップさせるという騒ぎを起こしたのである。安保法の国会審議中、「早く質問しろ」と野党議員を恫喝したのは安倍首相。昭和の状況を真似たわけではなかろうが、権力者の戦争法成立を焦る気持ちは、昔も今も同じということだろう。

 国家総動員法の成立以後、日本は太平洋戦争への道を突き進むことになる。



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