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僭越ながら:論

安保法成立 ほくそ笑むアメリカと経団連
「死の商人」と化す平和国家

2015年9月24日 08:00

日米 国旗 国内は反発、米国は歓迎――評価の違いが、安全保障関連法案の実相を照らし出している。
 民意を無視した強行採決から5日、報道各社の世論調査結果が出揃った。内閣支持率は軒並み低下。説明不足を指摘する声は8割に上っており、来年夏に行われる参院選で法案の是非が争点化するのが必至の情勢となっている。
 一方、米国政府は「歓迎」の意を表明。自衛隊を米軍の補完戦力にしたい同国の思惑が浮き彫りとなった格好だ。
 見落せないのは、安倍政権の暴挙を、アメリカ以上に喜んでいる国内の勢力が存在することである。

拡がる反発
 安保法の成立後、20日から21日にかけて主要なメディアが行った世論調査の結果をまとめた。(*法案を「評価しない」とする回答は「法案反対」に分類した)

世論調査2.jpg

 安倍政権べったりの読売・産経を含め、すべてのメディアの調査で内閣支持率が下落している。不支持が支持を上回っているのも共通。衆・参で強行採決を繰り返した審議過程や、憲法違反の疑いが濃い法案そのものへの評価が、政権支持率に跳ね返ったのは確かだ。戦争法案に反対してきた人々の間からは、与党議員に対する落選運動を提唱する声が上がっており、来年夏の参院選で自公に逆風が吹く可能性が高い。「有権者はどうせすぐ忘れる」――そう高を括っていた与党の見通しは、甘かったと言わざるを得ない。だが、一番の問題は、民意との溝を埋めようともしない首相の姿勢だ。法案成立後、安倍首相の発したコメントはこうだった。

 ―― 平和安全法制は、国民の安全と暮らしを守る抜くために必要な法制で、戦争を未然に防ぐためのものだ。 

 まだこうしたきれいごとで国民を騙し通せると思っているらしいが、この首相談話に頷いたのは少数だろう。米国の軍隊を守ることが、なぜ日本国民の安全と暮らしを守ることにつながるのか――衆参での審議をつぶさに見てきたが、首相は最後までこの疑問に答えることができなかった。むしろ、自衛隊が米国の武力攻撃を支援した場合、日本のリスクが高まることが明確になっている。集団的自衛権の行使が国民の安全を脅かすということを、すでに多くの国民が見抜いているのである。

 安保法制が≪戦争を未然に防ぐ≫と首相は言うが、“抑止力が高まる”との主張も、とうに説得力を失っている。そもそも、他国の攻撃に備えるため、政界有数の装備を誇る自衛隊があり、「日米安保条約」が存在する。沖縄の米軍基地が広大な県土を占拠しているのは、日本の安全を守るためだろう。近代戦における抑止力とは、相手と同等もしくはそれを上回る戦力のこと。現状で抑止力が足りないと言うのなら、日本は核武装するしかなくなる。目には目、抑止力には抑止力という考え方が、世界中で1万6,000発を超えるとされる核兵器を作り出したのではなかったか?

 我が国が集団的自衛権を行使することによって、“米軍にとっての抑止力”は高まる。だが、自衛隊は人手と予算が余計にかかるだけ。重ねて述べるが、米軍を守るための法制によって高まるのは、“戦争に巻き込まれる可能性”でしかない.

アメリカは「歓迎」
 国内で、安倍政権の独裁的手法に反発が広がる一方、自衛隊に自国の軍隊を守ってもらうことになったアメリカは、嬉しさを隠さない。法案成立を受け、米国務省は早速声明を発表している。

 ―― 同盟を強化し、地域と国際的な安全保障上の活動において、より積極的な役割を果たそうとする、日本の取り組みを歓迎する。

 国防総省も米上院軍事委員会の共和党・マケイン委員長も「歓迎」を声明。図々しくも、日本のさらなる役割拡大を求めている。米国がベトナム、アフガン、イラクで行ってきたのと同様の戦争に、日本は否応なく引きずり込まれていくことになる(もっとも、沖縄は敗戦から今日まで、戦争に巻き込まれ続けているが……)。

平和国家から「死の商人」へ
 アメリカ政府以上にタチが悪いのは、もろ手を挙げて戦争への道に賛同する日本の財界だ。法案の強行採決に先立つ9月15日。経団連(日本経済団体連合会)は、目前に迫っていた安保法案の成立を見越して『防衛産業政策の実行に向けた提言』を発表している。武器輸出三原則の撤廃、10月の防衛装備庁(防衛省の外局)発足を踏まえてまとめられたものらしいが、「1、防衛産業の現状と環境変化」「2、防衛生産・技術基盤の強化と装備品の国際共同開発等の推進」 「3、防衛装備庁への期待産業界の取組み」「4、産業界の取組み」の4つのテーマごとに、財界としての考え方を示している。まず、提言の冒頭『わが国を取り巻く状況』では、こう書き出している。

 北朝鮮の弾道ミサイルや核兵器の脅威に加え、中国は軍事力を広範かつ急速に強化し、ロシアも日本近海における活動を再度活発化するなど、わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しくなっている。また、国家安全保障戦略で示された国際協調主義に基づく積極的平和主義によるわが国の国際貢献が、災害派遣なども含めて求められている。

 まるで政府与党の国会答弁の文章。さらに読み進むと、安保法案が持つの別の意味が明らかとなる。

 現在、国会で審議中である安全保障関連法案が成立すれば、自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる。自衛隊の活動を支える防衛産業の役割は一層高まり、その基盤の維持・強化には国際競争力や事業継続性等の確保の観点を含めた中長期的な展望が必要である

 「防衛産業」とは、すなわち「軍事産業」。集団的自衛権の行使が実現すれば、軍事産業は活況を呈す。これは、その時を見据えた「提言」だと経団連は言っているのである。多くの国民が「戦争法案」だと感じている法案を、経団連は「だから必要」と言っているようなもの。法案をめぐってざわつく国内に向け、経済界の意思を示して政府を援護したともみえる。結びはさらに具体的だ。

 安全保障に係わる新規のプログラムへの参画等により積極的に人材を採用し、組織の活性化、継続性、多様性の確保および中小企業を含めた優れた技術を持つ企業の参入促進を図るとともに、国民による理解を促進し、防衛産業の発展に努めていく

 『国民を騙して、軍事産業の発展を期す』――最後の一文は、こう読みかえるべきだろう。安保法案がもたらすのは、“軍産複合体が牛耳る軍事国家”。安倍が目指しているのは、単に「戦争ができる国」ではない。アベノミクスが描く成長戦略の軸は、原発と武器の輸出。かくして「平和国家」は、戦後70年目にして戦争好きの「死の商人」に成り果てる。本当にそれでいいのか――。



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