維新の党が分裂し、橋下徹大阪市長に近い大阪維新系と他党からの合流組が袂を分かつという。集団的自衛権という国の根幹を揺るがす政治課題の国会審議が大詰めを迎えようというなかでのドタバタ劇。この政党に所属する議員たちに、国政を語る資格があるとは思えない。
党を割らないために離党するとした橋下氏だったが、舌の根も乾かぬうちに新党結成宣言。あまりの身勝手に、昨日の配信記事で橋下氏を「嘘つき」と断じたところ、その理由を明らかにしろという複数のメールを頂戴した。触れたくもないネタではあるが、読者からの要望。以下、橋下氏のペテン師ぶりについて――。
分裂否定が一転「新党」
まず、先月27日に橋下氏が党内の関係者らに送ったメールの全文からご覧いただきたい。
各位国政においては、安保法制についての重大局面を迎えています。
国政政党として内紛劇にエネルギーを割いている場合ではありません。
さらに国のためには政権交代可能な野党を作り上げなければなりません。
また大阪維新の会においては、今般、大阪府知事選挙、大阪市長選挙で候補者を擁立する方針として、これから党内プロセスを踏んでいきます。
このような状況から
1、柿沢幹事長は辞任しない
2、公開討論会は開催しない
3、今、党が割れるようなことはしない
4、僕と松井知事は、国政政党維新の党を離れて大阪、関西の地方政治に集中する
このようにしたいと思います。
本来は直接説明しなければならないところ、こちらも府政、市政を執り行う身であり、その機会をすぐに設定できません。
今回の問題は急を要する問題だと思い、まずはメールでお伝えさせて頂きます。
今回の件の扱いは松野代表に一任となったと聞いておりますので、以上よろしくお願いします。
橋下
ゴタゴタの発端は、柿沢未途幹事長が山形市長選で民主党などが支援する立候補予定者を応援したこと。維新は自主投票だったが、なぜか松井一郎大阪府知事が猛反発。幹事長辞任を迫る松井氏に大阪系の議員が同調し、非大阪系との間で党内対立が深まっていた。
この問題への回答が上のメール。橋下氏は、柿沢氏の辞任を否定した上で自身と松井氏の離党を宣言。≪内紛劇にエネルギーを割いている場合ではありません≫とした上で、≪今、党が割れるようなことはしない≫と明記。さらに、メールを送った直後の会見でも「党を割らない」と断言していた。
ただ、なぜ橋下氏が離党しなければならないのか分からない。“おかしい”と思っていたところ、翌日になって橋下氏は豹変。大阪維新の会の会合で、新党結成を表明する。≪党が割れるようなことはしない≫と断言した橋下氏自身が、党分裂を主導した格好だ。この間、前言撤回の理由については何の説明もなされていない。
橋下氏が態度を変えたのは、松野頼久代表が柿沢氏を更迭しなかったからだとされる。だが、メールの中で橋下氏は≪柿沢幹事長は辞任しない≫との裁定を下している。後になってごねるのでは、単なる言いがかりに過ぎまい。自分の発言に責任を持たないのが橋下氏の特徴だが、今回のケースは度を越えている。松井氏と示し合わせた分裂劇――そう見ると一連の動きにも合点がいくが、嘘をついたことは事実。信頼しろという方が無理だろう。
ペテンの2例目
維新の党は、8月末31日までに年2,000円の党費を納めた人に、11月の党代表選における「投票権」を与えるとして党勢拡大を図ってきた(下参照。同党のホームページより)。
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国会議員だけでなく地方議員や党員にまで同じ1票を与えるよう提唱したのは橋下氏。その橋下氏は6月、党内にあてたメールのなかで次のように述べていた。
さらに党員に代表選挙の一票を与えるインセンティブは最大限に活用可能です。献金額に応じて。党員を一定数集めてくれたことに応じて。選挙活動等、党への貢献度に応じて。一票与えるインセンティブは工夫次第で最大限活用できます。ここが党勢拡大のための知恵の絞りどころかと。
インセンティブとは、つまり馬の鼻づらにぶら下げるニンジン。党勢拡大のため、餌である「1票」を最大限に利用しろと言っているのである。このご指導を受けてはじめられたのが、2,000円で1票を売るという党員拡大キャンペーンだった。だが、分裂で代表選の実施は事実上なくなった形。代表戦参加に期待して2,000円支払った人が、「裏切られた」と思うのは当然だろう。嘘をついてカネを集めるのは詐欺。橋下流にペテンの臭いがつきまとうのは、いまに始まったことではないが……。
橋下氏最大の嘘は…
「2万%ない」と言った府知事選に出馬した橋下氏のこと。嘘やごまかしは政治家の常と思っているふしがある。大言壮語と挫折を繰り返してきたが、反省の色はまったく見えない。だが、「またか」で通用したのもここまで。下は、彼がTwitterに書き込んだ内容だが、政治家としては最低のレベルであることを示している。
国会前に集まって安保反対を訴えたのは12万人。全国で同様の動きがあったことも報じられている。数が多かろうが少なかろうが、老若男女の上げる声を否定するというのは、それこそが民主主義の否定ではないのか。気に入らぬ相手は罵倒し、自らの主張を正当化するのが橋下流だとすれば、これは民主主義とは程遠い独裁者の考え方というしかない。改革だの民主主義だのと叫んで庶民の味方を演じてきた橋下だが、そのすべてが、己の野望を達成するための「嘘」だったということになる。
最後に、橋下氏のつぶやきをもう一つ。
「バカ」は国民全体に向けられた言葉。たしかに、こんな政治家は不要である。