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数学嫌い・伊藤鹿児島県知事 失政の証明
100億円産廃処分場 予算関連資料が示す破たんの可能性

2015年9月10日 09:30

鹿児島知事会見.png 「女子にサイン、コサイン、タンジェントを教えて何になる」と発言した伊藤祐一郎鹿児島県知事(写真)。本当に数学が苦手だったらしく、知事が建設を強行した100億円産廃処分場が、事業試算の誤りから経営破たんの危機を迎えていることが明らかとなった。
 鹿児島県への情報公開請求で入手した外郭団体「鹿児島県環境整備公社」の予算関連文書によれば、県と同公社が地元住民らの反対を無視して整備した産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(薩摩川内市)の収益が、計画を大幅に下回る状況。搬入された産廃が、施設運営に必要な量の10分の1以下だったことも分かっており、予算関連文書が破綻の可能性を証明した形だ。
 事業計画が杜撰だったことは明らか。ツケを回されることが確実な県民から、厳しい批判が上がりそうだ。

民間なら「倒産」が視野
 公社が作成した平成26年度の「収支予算書」(下の文書参照)などによれば、処分場の開業初年度となった今年1月~3月期、1億260万円を事業収益として見込んだのに対し、実際の収益は約1,170万円。産廃受入れによる売上は計画の10分の1で、不足額は約9,000万円となっている。

 27年度は、前年度の2倍にあたる2億2,572万円の事業収益を見込んでいるが、4月~6月も依然として苦戦が続いており、通年で予定収益を大きく下回るのが確実。現状のままなら、収益は7,000万円程度にとどまる計算だ。

H26年度

H27年度

 27年度について詳しく見ると、4月から6月までの産廃受入量は897.73トン。これを入手したマニフェストによって分類し、公表されている受入れ産廃ごとの価格に従って計算すると、この間の収益は1,654万円。事業計画通りなら、3カ月で5,643万円の収益が必要なはずだが、目標の3割にも達していない。このままいけば、約1億5,000万円の不足。26年度の9,000万円と合わせ、2億4,000万円余りが不足する見通しとなる。

 一方、公社の運営費や施設の維持管理費に約3.6億円、建設費の借入金返済に約4億円で、最低でも約7億6,000万円とされていた年間支出は、27年度で9億円近くに増大。収益不足に反比例し、支出が増えるといった赤字の垂れ流し状態だ。収入も支出も、県が主張してきた数字からかけ離れるばかり。民間なら「倒産」が視野に入る経営実態である。

杜撰過ぎた事業収支
 エコパークかごしまの稼働期間(埋立期間)は15年。60万トンの産廃を埋め立てる予定で、事業試算はこの数字を基に作成されている。昨年2月の県議会定例会で、産廃搬入料金と施設運営維持費、施設運営の採算性などについて答弁を求められた当時の県環境林務部長新川龍郎氏(現・環境整備公社理事長)は、次のように答弁していた。

 管理型最終処分場にかかる料金等についてでございます。処理料金等については、県環境整備公社が検討を進めており、公社としては、処理料金の平均単価をトンあたり19,000円とし、埋立期間15年で60万トンの廃棄物の受け入れにより、約114億円の収入を見込み、また支出は、公社の運営費や施設の維持管理費約54億円、建設費の借入金返済約59億円、合計約113億円を見込んでおり、現時点では収支はおおむね見合うものと考えております

 この答弁通りなら、エコパークにおける年間の産廃受入量は4万トン。半年なら2万トンが必要だ。しかし、今年1から6月までの産廃受入量はわずか1,242トン。計画達成に必要な量の6%でしかない。開業直後ということを割り引いても、あまりの惨状。目を覆いたくなるような収支計画の杜撰さだ。

 鹿児島県によれば、平成22年度に管理型施設での処分が必要とされた産廃は県全体で3万8千トン。27年度には3万6千トンになると予想されていたとしており、産廃そのものの排出量は減る傾向。もともと年間4万トンという計画自体が、絵に描いた餅だった。

県公社は数字を隠ぺい
 県公社の隠ぺい体質にも問題がある。前述の県議会答弁後、公社への情報公開請求で入手した「事業試算」が下の4枚。肝心の数字はすべて黒塗り。実態が公共事業であるにもかかわらず、公社は情報開示を拒んでいた。

収支見通しの概要(案) エコパークかごしま(仮称)収支見通し(案)

収支見通しについて(案) エコパークかごしま(仮称)の収支見通しの試算

 県が開示した予算関連資料によって、26年度と27年度に予定された事業収益や支出の状況は分かった。しかし、来年度以降の事業収支計画は不明のまま。このまま赤字が垂れ流されると県民負担が雪だるま式に膨らむが、その規模や時期的な答えを見出すことができない。

台風被害で設備の脆さ露呈
 泣きっ面にハチとはよく言ったもの。整備費に100億円もかかった「エコパークかごしま」だが、台風被害で事実上の休業に追い込まれていたことも分かっている。先月25日に九州を襲った台風15号の影響で、覆蓋施設の屋根2か所が破損。薩摩地方で発生した大規模停電によって、エコパークかごしま自体の機能も停止していた。非常用発電装置を追加で設置するなど対応に追われたが、電話は29日まで不通のまま。結局、営業を再開できたのは翌週の31日になってからだった。
 設備の脆さは、将来の汚染水漏れ=地下水汚染の可能性を示すもの。処分場のある霊峰「冠嶽」の一帯は古くからの水源地で、懸念された健康被害が現実になる可能性が高い。

 伊藤知事が、住民らの反対意見を無視して建設を強行した「エコパークかごしま」に、投入された公費は100億円。そのうえ、巨額な追加負担というのでは、県民は泣くに泣けない。杜撰な計算が招いた惨状――“数学嫌い”では済まされる事態が、鹿児島県で起きている。



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