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新国立競技場見直し 安倍首相会見発言に疑義

2015年8月26日 08:50

安倍首相 嘘、ごまかし、話のすり替え、通じなければキレて威嚇――これが集団的自衛権の行使を実現するため、戦争法案の成立に向けて暴走を続ける安倍晋三という政治家の実像だ。ヤジをとばしては謝罪を繰り返すなど言葉の軽さも目立っているが、またしても首相の発言に疑義が生じている。
 信ぴょう性に疑問が出てきたのは、「新国立競技場」建設計画の見直しを発表した時の首相発言。早い時期から見直しを検討してきたかのような話しぶりだったが、これ裏付ける証拠の存在を巡って、文部科学省が不可解な対応をみせている。

首相 ― 五輪前工事完了を明言
 首相が、新国立競技場建設計画の見直しを発表したのは7月17日。この時、次のように語っている。

 東京オリンピック・パラリンピックの会場となる新国立競技場の現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで新しい計画を作りなおす。そう決断致しました。
 オリンピック・パラリンピックは、国民みんなの祭典です。何よりも優先されるべきは、国民の皆さん、アスリートの皆さんから祝福されるものとすることです。
 国民の声に耳を傾け、1か月ほど前から現在の計画を見直すことができないか検討してまいりました。本日、オリンピック・パラリンピックまでに工事を完了できるとの確信が得られましたので、決断を致しました。

 『1か月前から検討』『オリンピック・パラリンピックまでに工事を完了できるとの確信』――首相はそう明言している。安全保障法案と政権への風当たりが強まり、支持率低下が顕著になり始めた時期での見直し発表。都合の良い時にだけ『国民の声に耳を傾け』」などと言い出す首相のツラ皮の厚さには呆れるが、発言内容が本当なのか気になるところ。会見から5日後の7月22日、関係官庁に情報公開請求を行った。

発言根拠はどこに?
 請求先は文部科学省と内閣府。新国立の所管は文科省で、見直し作業は内閣府または内閣官房が行うと考えたからだ。請求したのは「新国立競技場の建設計画見直しを発表した安倍首相が、『1か月前から見直しを検討してきた』と述べた根拠を示す文書」(役所側の受付は7月27日付)。約1か月経った今月24日、内閣官房と文科省から、その結果が送付されてきた。まずは内閣官房の答えである。

行政不開示決定通知書

 結論は「不開示」。情報公開の担当窓口によれば、内閣府にも内閣官房にも該当する文書は残されていないという。残るは文科省だけだ。そして、見直しを検討したはずの文科省の答えが下。規定で30日以内とされる開示決定期限を、延長するとしている。

開示決定等の期限の延長について

 ≪業務多忙により、開示請求があった日から30日以内に開示決定等を行うことが困難≫――つまり、忙しくて構っていられないということ。30日近く時間をかけておきながら、ずいぶんと不真面目な対応だ。25日、担当している文科省スポーツ・青少年企画課に確認したところ、忙しくて該当文書があるかどうかの確認さえとれていないという。しかし、この話は信用できない。

隠されているのは……
 そもそも同課が、文書の特定ができないほど≪多忙≫であるはずがない。急遽、新国立の見直し業務を担うことになったのは内閣官房。超多忙なのは内閣官房の方なのだ。その内閣官房は、文書の存在についてきちんと確認したうえで、不開示決定を行っている。蚊帳の外に置かれた文科省が、文書の特定もできないほど多忙であるはずがない。結論引き延ばしの理由は、該当文書がないか、この時期に見られたくない内容であるかのどちらかということになる。

 首相は会見で「オリンピック・パラリンピックまでに工事を完了できるとの確信が得られました」と明言しており、そこまで言う以上、根拠を示すのは当然。その根拠となるのが「1か月ほど前から現在の計画を見直すことができないか検討」してきた内容だ。形として残っていなければ、こうまで断定的な物言いはできまい。それがないとすれば、首相発言は「嘘」。見せられない内容だとすれば、政府にとってよほど都合の悪いものだと考えるべきだろう。

 安全保障法案への不信・不安が急速に広がるなか、高額な整備費用に批判が集中した新国立競技場の計画見直しで人気取り――これが首相の狙いだったはず。事を急いだ分、会見で根拠に乏しい発言を行った可能性がある。戦争好きの宰相は、国民をなめきっているとしか思えない。



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