政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

原子力規制委員長 桜島関連質問に「答えてもしようがない」
知事は海外 ― 川内原発再稼働関係者たちの無責任

2015年8月20日 08:45

川内原発 川内原発(鹿児島県薩摩川内市)再稼働から8日、フクシマの教訓を無視して放射能の恐怖を復活させた関係者たちの無責任ぶりが浮き彫りとなった。
 19日に行われた定例会見で、噴火の危険性が高まっている鹿児島市の桜島と川内原発の関係について聞かれた原子力規制委員会の田中俊一委員長は、根拠を示さぬまま桜島の影響を否定。記者の質問に逆切れし、一方的に質疑を打ち切ってしまった。
 一方、再稼働に合意を与えた鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、県都鹿児島市の非常事態を尻目に台湾出張。関係者がそろって責任を放棄した形となった。
(写真は川内原発)

桜島噴火 ― 影響否定も根拠薄弱
 19日の定例会見。桜島が噴火警戒レベル4になったことを受けて、川内原発への影響や九電からの連絡について聞かれた田中委員長は、不機嫌そうに次のように答えた。

 規制委員会には何もないですけどね。気象庁の発表してるのは3キロ、4キロ以内の立ち入り禁止でしょ。川内原発50キロにま大きな影響が及ぶようだったら、今はもう鹿児島市内に人はおれないですよ。違いますか?そんなの常識じゃないですか。

田中委員長 規制委がネット上で配信している会見の模様(右の写真)を見たが、田中氏の態度は傲慢そのもの。この言い方は極めて不謹慎で、事実誤認も含まれている。桜島の噴火は日常茶飯。大きな噴火も度々起きており、鹿児島市内はもちろん、遠く離れたいちき串木野市、薩摩川内市でも降灰がある。大きいか小さいかは別として、川内原発にも何らかの影響があるのは事実だ。噴火によって川内原発に大きな影響が及ぶ可能性はあるが、それが鹿児島市内に人が住めなくなるようなものとは限らないだろう。

 昔から鹿児島市内の降灰はひどく、日中、灰が太陽の光を遮ることもしばしば。それでも住民は桜島と向き合って暮らしている。田中委員長は、鹿児島の実情がまったく理解できていない。

 そもそも、福島第一の事故原因さえ判明していないなか、原発再稼働を認めたことが「非常識」。田中氏の言う「常識」とは、原子力ムラの都合によるものだ。従って、都合の悪いことには答えない。記者が「何を以て(噴火の)予兆とするのか」と問い質したところ、飛び出したのが次の発言だ。

 答えてもしようがないから、やめましょう

 驚いたことに、桜島関連の質疑はこれで終了。田中氏もひどいが、記者クラブの弱腰にも開いた口が塞がらない。

九電・規制委は火山噴火を過小評価
 九電や規制委は、桜島が噴火した場合の影響について、過小評価してきた経緯がある。2013年5月の九電社長の会見。川内原発への火山の影響について、九電が『これ以上の調査は必要ない』と判断した理由を聞かれた瓜生道明社長は、およそ次のように話し、問題はないとの見方を示している。

 「バックフィット(既存原発の新たな安全性評価)の時に限界もあり、川内3号の時に文献調査、それから学者の皆さんとの話だとか、過去のデータ等を踏まえながら判断した。火山で一番悩ましいのは灰。灰についての対応はどうか。私どもとしては、ある程度の灰が降ったとしても、変電施設なり、中枢施設なりに入らないよう、しっかりしたフィルターを設置しており、大丈夫だと判断している」――瓜生社長は、川内原発がある薩摩川内市では過去の降灰が確認されていないとも語り、社長に確認を求められた社員もこれに同意していた。

 だが、九電側の見解が誤りであることを示す資料がある。新たな原子力規制基準には、原発に影響を及ぼすと判断される火山による影響評価の実施が盛り込まれている。川内原発においては桜島ということになるが、九電が桜島の影響はないとする理由は、“偏西風”の影響で桜島の火山灰が東に向かうからというもの。しかし、この主張は川内原発で事故が起こった場合の「放射性物質の拡散予測」と大きく矛盾する。

 下は、2012年に原子力規制委員会がいったん公表し、誤りがあったとして新たに出し直した放射性物質の拡散予測図に関する資料。そのうちの川内原発に該当するものだ。

予測.bmp

 修正された予測図(右側)によれば、川内原発を起点として放射性物質のほとんどが海側(つまり西側)に向かって拡散する形となっているのが分かる。この予測図が正しければ、九電のいう“偏西風の影響”は否定されてしまう。桜島の降灰についての九電側説明と明らか矛盾するものだ。桜島の灰は東に、川内の放射性物質だけは西に――そんな都合の良い話などあるわけがない。しかし、規制委は九電の主張を容認。火山学会の警告をも無視して川内再稼働にお墨付きを出している。

 田中委員長は19日の会見で、火山の専門家組織を立ち上げモニタリングのデータを評価してもらう仕組みを作っていくとも話しているが、結局規制委として火山噴火についての備えはないということ。無責任体制のなかでの原発再稼働なのだ。

鹿児島知事会見.png鹿児島県知事―危機を尻目に台湾出張
 無責任は立地自治体の知事も同様。川内原発再稼働にお墨付きを出したのが規制委なら、九電に合意を与えて最終的なゴーサインを出したのが伊藤祐一郎鹿児島県知事。南国の独裁者は、桜島に噴火のおそれが高まっているにもかかわらず、18日から20までの日程で、予定通り台湾出張に出かけてしまった。

 川内原発再稼働―臨界―営業運転と緊張が続くことが予想されるなか、訪台を計画するのも非常識なら、県都の危機を尻目に鹿児島を不在にするのはさらに非常識。無責任体制のツケは、いずれ県民に回ってくる。



【関連記事】
ワンショット
 47年前と変わらぬ雄々しい姿が、そこにあった。太陽の塔。...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲