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玉音放送と戦争法案

2015年8月 6日 09:25

「玉音放送」の音声ファイル原盤 今月1日、宮内庁のホームページ上に、昭和天皇が自らの声で戦争終結を告げた「玉音放送」の音声ファイル原盤(右の写真。宮内庁HPより)が公開された。「玉音」とは天皇の肉声。8日には、その玉音放送を軸に70年前の8月15日を描いた映画「日本のいちばん長い日」が公開される。
 天皇の名のもとに始められた戦争を、終結に導いたのも天皇。玉音放送の重みを最も理解していたのは、昭和天皇だったのではないだろうか。戦後、国民に向けられた慈愛のまなざしを忘れることができない。
 思いを引き継がれた今上天皇、そして皇后陛下が、この国の誰よりも平和を希求してこられたことに異論を唱える日本人はいないだろう。
 戦争法案の審議が進むいま、改めて天皇皇后両陛下と皇太子殿下の「お言葉」を確認しておきたい。

天皇皇后両陛下、皇太子殿下のお言葉から
 両陛下は昨年6月、沖縄を訪問され、戦争末期の昭和19年(1944年)、沖縄の疎開児童らを乗せて九州へ向かう途中にアメリカの潜水艦に撃沈され、780人の児童を含む1,500人近くの犠牲者を出すという悲劇に見舞われた「対馬丸」の慰霊碑に献花された。今年4月には慰霊のため、太平洋戦争の激戦地パラオ・ペリリュー島を訪問されている。この国にあって、誰よりも平和と国民の安寧を望んでこられたのは天皇皇后両陛下である。改めて、お二人が発せられたメッセージを拾ってみた(以下、いずれも宮内庁HPにある「お言葉」より抜粋)。

 昨年12月19日、お誕生日に際しての天皇陛下のお言葉。

 先の戦争では300万を超す多くの人が亡くなりました。その人々の死を無にすることがないよう、常により良い日本をつくる努力を続けることが、残された私どもに課された義務であり、後に来る時代への責任であると思います。そして、これからの日本のつつがない発展を求めていくときに、日本が世界の中で安定した平和で健全な国として、近隣諸国はもとより、できるだけ多くの世界の国々と共に支え合って歩んでいけるよう、切に願っています

 一昨年の天皇誕生日に際しては、こう述べられている。

 戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います。戦後60年を超す歳月を経、今日、日本には東日本大震災のような大きな災害に対しても、人と人との絆を大切にし、冷静に事に対処し、復興に向かって尽力する人々が育っていることを、本当に心強く思っています。

 次は皇后陛下のお言葉(平成26年のお誕生日。宮内記者会の質問に対する文書ご回答)。

 世界のいさかいの多くが、何らかの報復という形をとってくり返し行われて来た中で、わが国の遺族会が、一貫して平和で戦争のない世界を願って活動を続けて来たことを尊く思っています。遺族の人たちの、自らの辛い体験を通して生まれた悲願を成就させるためにも、今、平和の恩恵に与っている私たち皆が、絶えず平和を志向し、国内外を問わず、争いや苦しみの芽となるものを摘み続ける努力を積み重ねていくことが大切ではないかと考えています

 平和への思いは、皇太子殿下も同じ。今年2月、お誕生日の際には次のように語っておられる。

 私自身、戦後生まれであり、戦争を体験しておりませんが、戦争の記憶が薄れようとしている今日、謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切であると考えています。両陛下からは、愛子も先の大戦について直接お話を聞かせていただいておりますし、私も両陛下から伺ったことや自分自身が知っていることについて愛子に話をしております。

 我が国は,戦争の惨禍を経て、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、平和と繁栄を享受しています。戦後70年を迎える本年が、日本の発展の礎を築いた人々の労苦に深く思いを致し、平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っています

 昨年のお誕生日、「憲法遵守」を明言された折のお言葉。

 日本国憲法には「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定されております。今日の日本は、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、現在、我が国は、平和と繁栄を享受しております。今後とも、憲法を遵守する立場に立って、必要な助言を得ながら、事に当たっていくことが大切だと考えております。

 拙い解説など無用だろう。天皇皇后両陛下、皇太子殿下が発せられてきたのは、明らかに戦後70年の節目に向けてのもの。守るべきは「憲法と平和」だと明確におっしゃっているのである。その節目の年に、戦争法案を通そうとしているのが安倍政権。国民だけでなく、天皇皇后両陛下のご意思にも背く暴挙であり、実態としては「クーデター」に等しい。保守を自認してきた自民党の政治家たちは、一連の「お言葉」をどう受け止めているのか?理解できないというのなら、「保守」の看板を下ろすべきだろう。

 昭和20年の夏、戦争を止めることができたのは天皇だけだった。それから70年、いま戦争への道を絶つことができるのは、主権者たる私たち国民。「玉音放送」の時代に戻るような法案を、断じて許してはならない。



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