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戦後70年の安倍談話 結論は「戦争のできる国」

2015年8月17日 08:45

000065395.jpg 永田町の政治を見続けて30年以上。学んだのは、美辞麗句を並べ立て、長広舌をふるう政治家ほど信用できないということだ。
 国会で長々と自説を展開し、実態不明の「美しい国」を連発する安倍晋三首相はその典型。14日に発表された戦後70年談話は、じつに象徴的なものとなった。なんと歴代首相の3倍という長文。「侵略」や「お詫び」といった注目のキーワードを入れ平和主義を装ったものの、ようは“まやかし”。日本の戦争責任を曖昧にして、アジア諸国に対する今後の謝罪を事実上否定する内容だった。談話の締めくくりでは、「積極的平和主義」の推進を宣言。安全保障法案と同じで、「平和」の二文字を隠れ蓑に、戦争のできる国を目指す構えであることが明らかとなった。

長文・きれいごとの裏には……
 安倍談話の特徴は、長文であることと第三者的視点。とにかく長い。村山談話が約1,300字で原稿用紙3枚強、小泉談話が約1,130字で原稿用紙3枚弱だったのに対し、安倍談話は3,000字超。原稿用紙で8枚にもなる。長広舌には決まって裏があるものだ。

 敗戦までの歴史をたどった前半は、原稿用紙2枚程度の記述のなかに「~ました」が18回。教科書的な表現に終始しており、首相の歴史観を確認することはできない。中盤に「侵略」「反省」「お詫び」といったキーワードを入れているが、歴代首相の談話で示された内容を引用しただけ。安倍首相自身が発したメッセージはどこにも出てこない。ここまで殊勝な姿勢を示しておいて、ようやく首相の思いが明確になるのが後段。とくに次の部分だろう。

≪日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません

 「これ以上の謝罪は無用」――首相はそう言っているのである。だからといって「私が謝るから」という潔い話ではない。もともと首相の持論は、祖父である岸信介元首相と同じ。侵略戦争の否定と、謝罪の拒否なのだ。若い世代に見栄を切ってみせたつもりのようだが、この方向性がもっとも諸外国を刺激するということが理解できていない。謝罪を否定する日本人が増えれば増えるほど、アジア各国からの信頼は失われていく。

 この後、≪しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります≫と矛盾するようなことを述べているが、整合性がないわけではない。首相の言う「過去の歴史」がかなり歪んでいるからである。

 談話の中に≪経済のブロック化≫という言葉が二度出てくる。まず、前半の教科書的記述のなかにサラリと入れ込んでおり、≪当初は、日本も足並みを揃えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました≫――これは後段への伏線だ。首相の真意は、後段の次のくだりで明らかとなる。曰く≪経済のブロック化が紛争の芽を育てた過去を、この胸に刻み続けます≫。やはり戦争の原因は経済のブロック化。日本の帝国主義については何も触れておらず、戦争の実態をぼかした形となっている。“日本だけが悪いんじゃない”――これが首相の歴史観。だから謝罪を否定するのである。

公式サイトに首相の真意
 談話のなかで謳った平和主義や歴史認識の大半が、安倍自身のものではないということはハッキリしている。首相の公式サイトには、「慰安婦・歴史認識問題」の項にこう書いてある。

いわゆるA級戦犯は国内法的な意味での犯罪者ではない

 日本において、国内法的にいわゆる戦争犯罪人ではないということでございます。遺族援護法等の給付の対象になっているわけでありますし、いわゆるA級戦犯と言われた重光葵氏はその後勲一等を授与されているわけでありまして、犯罪人であればそうしたことは起こり得ない、こういうことではないかと思います。(中略)

 そもそも日本においては、いわば国内法的に犯罪者ではないということははっきりしているわけであります。(中略)

 いわゆるA級戦犯と言われる方々は、東京裁判において戦争犯罪人として裁かれたわけでありますが、国内としては、国内法的には戦争犯罪人ではないということは私が先ほど申し上げたとおりであります。私の認識もそうであります。

平成18年10月6日・衆院予算委
いわゆる侵略戦争は国際的な定義として確立されていない

 当時も、私は、さきの大戦において多くのつめ跡をアジアの地域に残した、このように考えていたわけでございます。そして、日本人を塗炭の苦しみの中に落とした、こういう認識を持っていたわけでございます。しかし、その中で、いわゆる侵略戦争ということについては、これは国際的な定義として確立されていないという疑問を持っていたような気がするわけでございます。

平成18年10月6日・衆院予算委

 東京裁判に疑義を呈し、A級戦犯は無罪だと言わんばかり。さらに「侵略戦争」も否定しており、これらの主張が談話の内容と相容れないことは明白だ。

結論は「戦争のできる国」
 安倍談話の結論は、次のくだりにある。
≪私たちは、国際秩序への挑戦者となってしまった過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります。≫

 安倍政権の「積極的平和主義」とは、自衛隊の武力を用いた国際貢献。つまり、集団的自衛権の行使を前提とするものだ。現在国会で審議されている安全保障関連法案は、これを実現するために不可欠。だが、国民から総スカンを食っており、与党公明党の母体である創価学会からも反対の声が上がる事態となっている。自称・平和の党に配慮し、ついでに国民を欺こうとしたのが、今回の安倍談話。やはり、長広舌と美辞麗句は信用できない。



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