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川内原発再稼働 容認できない無責任体制

2015年8月 7日 10:20

川内原発 九州電力・川内原子力発電所が11日にも再稼働する見通しとなった。原発推進を決めたのは安倍政権。これに「お墨付き」を与えたのは原子力規制委員会だ。最終的に再稼働を容認したのは鹿児島の独裁者・伊藤祐一郎知事ということになるが、いずれも原発に関する国民の反対意見には、耳を傾けようともしなかった。
 予想された事態ではあったが、ここまでの過程は拙速、杜撰のオンパレード。無責任体制のなかで、新たな「安全神話」が生まれようとしている。
(写真は、川内原子力発電所)

規制委の無責任
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は「審査したが、安全だとは私は言わない」という姿勢。もともと規制委という組織には責任意識などない。再稼働を急ぐ原子力ムラの圧力は強烈だったらしく、保安検査で見つかった書類不備は事実上見逃し。遅れている一部設備の耐震評価については、1年の猶予期間を与えて九電を救った格好だ。杜撰というより慣れ合い。原発に重大な事故が起きても、「うちは審査しただけ」で済ますつもりだろう。規制委の審査が原発推進論者の免罪符になっていることを考えると、この組織の無責任さは、極めてタチが悪い。

知事の無責任
 事業者である電力会社の他に原発を止める権限があるのは、立地自治体の首長だ。いったん過酷事故が起きれば、放射能被害が広範囲に及ぶことが分かっていながら、この国の原子力行政はいまだに法的根拠のない仕組みを見直そうとしていない。

鹿児島知事会見.png 川内原発も薩摩川内市長と県知事の合意だけで再稼働OK。周辺自治体の住民の声は、電力会社にも国にも届いていない。最後の砦は「知事」なのだが、鹿児島の伊藤知事(右の写真)は県民の声をまともに聞いたことのない独裁者。原発再稼働の嚆矢になることに誇りを持っておられるようで、原発絡みの重要情報さえ「知らせる必要はない」と明言している。7月17日に行われた知事の定例会見では、「除染」への取り組みについて聞かれ、次のように述べている。

 今度は除染等々の話がありました。その都度、実際にそれがワークするとなると、今おっしゃるようなものも必要でもありますが、それについても十分な対応をしたいと思います。どのバスでうんぬんというのは、その都度その都度、いろんな形で若干変化していきますので、具体的な場所はその都度その都度適正に判断するとしか言いようがないと思いますが、それも含めて十分に我々として頭の中にありますので、そういう対応も必要な対応等々については準備していきたいと考えています。

 除染についての対策は「頭の中にあります」――つまり、考えてはいるが、形になっていないと言っているのである。季節によって風向きが異なるため、原発事故が起きた場合の避難方法や除染施設の場所は、時期によって変わる。再稼働を認める以上、県の責任で事故対策を明示するのが当然なのに、知事はこれを怠っているということだ。このあと、知事はスンナリ対策の不備を認める発言をし、訳の分からない理屈でそれを正当化している。

 この前、各市町村ごとの除染場所等々についてのお話がありました。我々としては、この除染等々を的確にやりたいと思っていますので、然るべき準備はしたいと思います。ただ、緊急的な対応応用編ですので、それが実際にどの場所でどうこうということになると、やはりその時の状況に応じて判断せざるを得ないと思うのです。したがって、それは準備はしますが、あらかじめきちんと最初から何カ所かどこどこと決めるというやり方は、むしろ全体をおかしくする可能性もありますので、そこは「柔軟に、流動的に、弾力的にかつまた適切に」という、そういう形にならざるを得ないと思うのです、実際。ですからそういう形で我々としては対応したいと思います。

 原発は動くが、事故対策は後回し――驚くべき無責任ぶりだ。伊藤という知事は、はなから県民のことを見下している。会見の最後の方では、「情報非開示」を宣言している。

 我々は候補地としてはいろいろデータを持っているのです。でもそれを示す方が良いのかどうかという話も含めて、やはりその時々の判断によらざるを得ないと思うので、そこは我々が十分に準備するということで対応させていただきたいと思いますね。またそれで十分かなとも思うのですが。

 “原発に関する情報は持っているが、県民に知らせる必要はない。事故対策は、これから準備してやるから、それで十分だ”――上から目線もここまで来れば犯罪行為。これほど傲慢な姿勢を許す鹿児島県民は、よほど我慢強いということだろう。ただし、九州各県の住民にとっては大迷惑。もう一度リコールでもやって、知事の首をすげ替えることをお勧めしておきたい。

政府の無責任――テロには無防備
 「集団的自衛権の行使が可能となれば抑止力が高まる」――安倍首相はそう言ってきたが、集団的自衛権どころか、専守防衛さえ満足にできなそうにない。

 言うまでもなく、世界の脅威となっているのは「テロ」だ。安全保障法案が成立し、集団的自衛権の行使に踏み切った場合、日本はこれまで以上にテロの標的になる可能性が高い。その場合、国内でテロの標的になるのは警備が甘く、攻撃によって甚大な被害を与える施設――真っ先に頭に浮かぶのは「原発」である。

川内原発海側

 海沿いに建設された日本の原発がいかに無防備であるか、これまでも度々報じてきた。上は川内原発の写真だが、海側からは極めて容易に侵入が可能。覚悟を決めた人間なら、いとも簡単に原子炉建屋にたどり着くだろう。武装した兵士ならなおさら。原発は、事故の可能性だけでなく、テロによる破壊というシナリオも想定可能なのだ。これのどこが「安全」なのか?外国の軍艦を守る前に、国内の原発を止めることの方が先ではないのだろうか。

 川内原発の再稼働を許せば、全国で運転停止中だった原発の再稼働にも弾みがつく。「命よりカネ」の選択は間違いだと思うが……。



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