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鹿児島県100億円産廃処分場 事実上の経営破綻

2015年7月28日 08:00

処分場 鹿児島県が地元住民らの反対を無視して建設を強行した産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(薩摩川内市)が、稼働から6か月で事実上の経営破綻状態に陥っていることが明らかとなった。
 産廃受入量は予定の10分の1以下。採算割れが半年続いているが、状況改善への道筋は立っていない。
 100億円もの公費を投じた事業が、さらなる県民負担を招くのは必至とみられる。

産廃受け入れ――計画の6%
マニフェスト HUNTERは先月、エコパークかごしまの事業主体である鹿児島県環境整備公社に対し、マニフェストの情報公開請求を行った。産廃業界のマニフェストには、産廃の種類、数量、収集運搬業者、処分業者などが記入されており、エコパークかごしまにどのような産廃が、どの程度搬入されたかが分かる仕組みだ。その結果、今年1月の営業開始から6月中旬までに、エコパークかごしまに産廃を搬入した車両は約200台。エコパークかごしまの産廃受入数量は、1242.54トンに過ぎないことが分かった。(右が開示されたマニフェスト)

 エコパークかごしまの稼働期間(埋立期間)は15年。60万トンの産廃を埋め立てる予定で、事業試算はこの数字を基に作成されている。昨年2月の県議会定例会で、産廃搬入料金と施設運営維持費、施設運営の採算性などについて答弁を求められた当時の県環境林務部長新川龍郎氏(現・環境整備公社理事長)は、次のように答弁していた。

 管理型最終処分場にかかる料金等についてでございます。処理料金等については、県環境整備公社が検討を進めており、公社としては、処理料金の平均単価をトンあたり19,000円とし、埋立期間15年で60万トンの廃棄物の受け入れにより、約114億円の収入を見込み、また支出は、公社の運営費や施設の維持管理費約54億円、建設費の借入金返済約59億円、合計約113億円を見込んでおり、現時点では収支はおおむね見合うものと考えております

 この答弁後、公社への情報公開請求で入手した「事業試算」が下の4枚である。

収支見通しの概要(案) エコパークかごしま(仮称)収支見通し(案)

収支見通しについて(案) エコパークかごしま(仮称)の収支見通しの試算

 計画通りなら、年間の産廃受入量は4万トン。半年なら2万トンが必要だ。しかし、前述のように今年1~6月の産廃受入量はわずか1,242トン。計画量の6%しか受け入れていない。しかも、受け入れた産廃の半分以上は処分料が最も安い「がれき」。当初、主な受け入れ産廃とされた「汚泥」は全体の2割程度にとどまっており、経営を圧迫する原因となっている。

打開策なし ― ツケは県民に
 打開策はあるのか――。結論から述べると、民間企業ならこの段階でアウト。経営破綻は時間の問題だ。鹿児島県によれば、平成22年度に管理型施設での処分が必要とされた産廃は県全体で3万8千トン。27年度には3万6千トンになると予想されていたとしており、産廃そのものの排出量は減る傾向。もともと年間4万トンという計画自体、絵に描いた餅だったのである。前掲の事業計画では年度別の収支が黒塗り非開示(前掲右下)になっていたが、初年度の数字が現状とは程遠いものだったことは容易に想像がつく。計画を大幅に下回る受入量ということになれば、まともな経営ができるはずがない。

 エコパークの低迷は。県内で発生した産廃の大半が、県外の処分場に捨てられていることを示している。県や公社は、エコパークの周知を図るというが、建設までの過程で、周知は十分に行ってきたはず。処分料比較で“県外に運んだ方が得”という状況があるとすれば、エコパークへの産廃搬入が増える要素はない。

 事態を悪化させる要因はまだある。県内では、湧水町に民間の管理型処分場が建設予定で、完成すればエコパークへの産廃搬入が減るのは当然。そうなると状況はいま以上に悪化し、エコパークの存在自体が公社や県のお荷物になる可能性が高い。

 エコパークかごしまの年間支出は、公社の運営費や施設の維持管理費に約3.6億円、建設費の借入金返済に約4億円で、計7億6千万円が必要。現状のままなら、初年度の受入量はおよそ3,000トンから多くても4,000トン。トンあたり19,000円なら最大でも7,600万円の収入しか得られず、残り6億8千万円が不足する計算だ。この不足分、そして来年度の不足分は、どうやって捻出するのか?答えは「税金」しか見当たらない。ツケは県民に回されるのである。

独裁県政の象徴事業
 もともとエコパークかごしまの整備計画は、地元民を無視した伊藤知事の暴走。県内に最終処分場が一箇所もないという大義名分を掲げ、知事本人の音頭取りで始まった事業である。

 県内29箇所の処分場対象地については、満足な調査が行われておらず、知事の指示で薩摩川内市川永野の一箇所に絞っていたことが明らかになっている。そこは、海外からも訪問者がある霊峰「冠嶽」の裾野。薩摩藩以来、信仰の対象となってきた山の一角を、産廃で汚そうという計画なのだ。特別にこの地が最終処分場に適していたわけではなく、むしろ不適。冠嶽は、近隣の水源になってきたほど湧水が豊富で、後々深刻な被害をもたらす可能性が指摘されている。

 そんな場所になぜ産廃処分場を造ったのか―背景にあるのは植村組と県の癒着だ。処分場用地は、地場ゼネコン「植村組」のグループ企業「ガイアテック」が所有する採石場跡地。県は植村側に5億円の土地代を払った上、建設工事は、同社が参加した特定建設工事共同企業体(JV:大成・植村・田島・クボタ)に受注させている。「植村組ありき」の計画は、建設業界との癒着に支えられた伊藤県政の象徴でもある。

 地元住民らの根強い反対を無視して平成23年10月に着工したが、工期は1年遅れ。18億円に上る追加工事費が発生するなどすったもんだの末、昨年暮れにようやく竣工にこぎ着けていた。ここまでにかかった公費は100億円。経営破綻でさらなる税金投入となれば、泣くのは県民。その時、官僚出身の伊藤祐一郎という鹿児島の独裁者は、どう責任をとるのか?



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