嘘つき町長に毒されたのか、核ゴミ疑惑に揺れる南大隅町(森田俊彦町長)は、役場の組織まで腐り始めている。
放射性廃棄物の処分場誘致にからむ疑惑の核心となった「委任状」を廃棄したり、現存している町長の出張命令書を「不存在」とするなど不適切な町政運営の実態を露呈した鹿児島県南大隅町に、今度は現職課長による議会での虚偽答弁疑惑が浮上した。
同町への情報公開請求を通じて、総務課長が議会で明言した「録音データ」が不存在だった可能性が生じたもの。虚偽答弁が事実なら、明らかな信用失墜行為。地方公務員法に抵触する疑いがある。
議会で「隠し録り」明言
町議会で虚偽答弁を行った疑いが持たれているのは、同町で総務課長を務めている石畑博氏。石畑課長は、平成25年3月の町議会定例会において、核ゴミ疑惑についてHUNTERの記者が町長を取材した折の「録音データ」を課長自身が残したと明言。配信記事に「抜けている事」があるとしていた。下は、南大隅町議会への情報公開請求で入手した町議会会議録の該当部分である。
森田:総務課長に答弁させます。石畑課長:色んなお客さん来る訳ですけれども、その中にはですね、全て情報取材の中は、私が全部立会いをしております。こちらもそれ相応のですね、やはり録音そのものはしておりますので、中身についてですね、全てその記載の中身が録音のとおり記載されているかという部分につきましてはチェックはしておりませんけれども、途中が抜けている事、そして、また全部が記載をされていないという事だけはですね、これは事実であります。
答弁の中で課長は、“全ての取材に立会い”、“録音していた”としており、業務の一環として“隠し録り”を行っていたことは明らか。さらに、録音データの存在を議会で明かしており、残されたデータが「公文書」であることは疑う余地がない。
ちなみに、HUNTERが森田町長に取材したのは2回。いずれも町長室のテーブルの上にICレコーダーを置いてやり取りしており、隠し録りは行っていない。下が当時の写真である。
一方、森田町長は、総務課長の答弁を受けた形でHUNTERの取材活動が町長選の対立候補から依頼されたものであったかのように話を創作。自らに向けられた疑惑が、あたかも政争のための“でっち上げ”だと言わんばかりの答弁を行っていた。「抜けている」部分について、“先程総務課長も答弁されたけど、これに載ってない事実もありますという事であれば、何かあれば教えて欲しいんですが”(町議)と訊かれた町長は、次のように答えていた。
森田:多分ですけれども、私の言葉のやり取りの中で、冒頭だったと思うんですけども、「肥後さんからの依頼ですね」という事を言ったかと思っております。それと、攻撃を受けたから私は嘘をつきましたけれども、訂正して下さいということでお願いをした次第でございました。
ここに出てくる「肥後さん」とは、同年4月の町長選で森田町長の対立候補になると目されていた人物。森田町長は、HUNTERの記者が会ったこともなかった肥後氏に、依頼されて取材に来たという話をでっち上げていた。
「攻撃を受けたから私は嘘をつきましたけれども、訂正して下さいということでお願いをした次第でございました」のくだりも嘘。核ゴミを巡る取材や報道の過程で、町長が「嘘をつきました」とうなだれることはあったが、HUNTERが「訂正」を求められたことは一度もない。
録音データが「備忘録」???
町議会でのやり取りを問題視したHUNTERは先月、南大隅町に問題の「録音記録」を情報公開請求。これ対する町側の回答が、下の「不開示決定」である。
録音記録は「不存在」。公文書として残された記録はないという。前述した通り、録音記録があるとすればそれは「公文書」だ。録音記録の存否について、改めて同町総務課に確認を求めたところ、課長補佐は次のように説明している。
「録音データはあります。ありますが、それは課長が『備忘録』として録音したもので、公文書ではありません」
録音データはあるが、課長個人の備忘録だったという非常識な回答だ。録音の事実を公表し、その内容に基づいて町長が答弁を行った以上、話の正当性を証明するには録音データの開示が不可欠。それがなければ、両人の議会答弁は真っ赤な「嘘」ということになる。そもそも、録音データは本当に存在するのか――?
録音記録不存在なら地公法違反
結論から述べるが、録音データは「ない」と言わざるを得ない。少なくとも、平成25年に行った森田町長への2回の取材で、課長が録音を行った可能性があるのは2度目の取材時だけ。それもわずかな可能性にすぎず、1回目に課長が録音を行ったというのは「虚偽」である疑いが極めて濃い。初回の取材時、HUNTERの記者が課長の一挙手一投足を確認していたからである。
総務課を訪れた記者は、まず職員と話をし、次いで課長に取材要請。たまたま部屋を出てきた町長をつかまえ、そのまま町長室に入っている。この間、わずか3分。課長が録音機材を操作する余裕などなかったのである。「録音した」という課長の議会答弁だが、1回目の取材においては不可能だったと断言せざるを得ない。
地方公務員法は、自治体職員の信用失墜行為を懲戒処分の対象としており、石畑総務課長の答弁が虚偽だった場合は厳しい処分が当然となる。
課長の虚偽に乗っかった森田町長の答弁も虚偽。町長選を前に、疑惑拡大を恐れた二人が、政敵に批判の矛先が向くよう話を作った格好だ。
嘘で固めた森田町政
これまで報じてきた通り、森田町政は嘘で塗り固められている。東京電力・勝俣恒久元会長と密接な関係にあった「オリエンタル商事」(東京都)の原幸一社長からモーターボートを譲渡されていながら、当初その事実を否定。嘘がばれて、収賄疑惑に発展した。
また、町長は原氏に対し、低レベル放射性廃棄物から使用済み核燃料まで、ありとあらゆる核ゴミの最終処分場のほか、原発本体まで含んだ核関連施設誘致のための権限一切を与えるという「委任状」を渡していたが、HUNTERの取材にはこの存在も否定。町長選直後、TBSの報道で事実関係が暴露され、一転して委任状の存在を認めるという前代未聞の事態となっていた。委任状には森田町長の直筆署名があり、公印が捺されていたことも分かっているが、南大隅町はこの委任状を廃棄したとしている。
総務課長と町長が、そろって虚偽答弁に及んだ25年3月の町議会。町長は、質問した町議と委任状に関して次のようなやり取りを行っている。
町議:町長が商工会長時代ですね、議長、商工会長、漁協の組合長が書いたという、処分場に関する全てをお任せする内容の念書にサインをしたという事が(HUNTERの記事に)書いてあるんです。これ。サインをしたと。 もう19年か20年の事だろうから町長は記憶にないと言われるかもしれませんが、書いてあるんです。この事は、認めますか、認めませんか。記憶にないと言われますか、どっちですか。森田:私は書いた覚えがございません。それと、先程、議員が原氏に私が協力をしたというふうに言われましたが、私は、原さん、もしくは他の関係者の方に協力をした覚えもございませんし、利益供与も、また、何かを我々が提供するとか、逆に言うと何か図ってやるというような事はありません。
議会での虚偽答弁が、許されるとは思えないが……。