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倒閣のすゝめ

2015年7月16日 08:50

コラ画像 福沢諭吉は、その著『学問のすゝめ』の冒頭でこう述べた。「『天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず』と言えり」……本当にそうか?この国ではいま、万人が反対する戦争への道を、安倍晋三という極右政治家がしゃにむに突っ走っている。君臨する独裁者の耳には、大衆の声はおろか天の声さえ届かぬ状況だ。
 14日、集団的自衛権の行使を目的とする安全保障関連法案が、衆議院の平和安全法制特別委員会で強行採決された。きょうの本会議で可決され、論戦の舞台は参議院に移る。だが、政府与党にとっては消化試合。60日ルールがあるため法案成立が確実視される見通しとなっている。
 この国の民主主義を否定した安倍に、まだ政権を任せるというのか――。

戦争に向けてまっしぐらの安倍
 つい数日前、安保法案について「相当理解が深まった」と語っていた男が、土壇場になって「理解が進んでいない」。それなら止めるべきなのに、怒号の中での強行採決。まったく筋が通っていない。戦争をやるための法案を「国民を守るため」などとうそぶく男のやる事。民主主義など糞くらえといったところだろう。採決にあたって安倍は、孟子の一節を引用し「千万人といえども我ゆかん」の決意を示してみせた。この場合の「千万人」とは即ち国民のこと。主権者の声を、“踏みにじる”と宣言したに等しい。

 安保法案への理解は深まったのか、深まっていないのか――結論からいえば、“かなり深まった”というのが本当のところだろう。もちろん、了解に近付いたということではない。安倍政権の狙いが、「戦争ができる国家」にあることが分かってきた、という意味でだ。国会での議論が長引けば長引くほど、「安保法案反対」の声が広がっているのはその証しである。

 そもそも、集団的自衛権の行使容認は憲法解釈を勝手に変えるという“禁じ手”によるもの。これを実現するための法案が、憲法に沿ったものであるはずがない。つまりは違憲。「事態」ばかりがいくつもあるが、ようは様々な理由をつけて、武力行使の範囲を拡大しようという魂胆だ。安保法案を「戦争法案」と断定することは、決して間違いではない。

 「安倍さまのNHK」は、安保法案の審議時間が110時間を超えたと宣伝した。昭和35年以降、6番目に長い審議時間だという。だが、「平和国家」は戦後70年、「民主主義」に至っては明治・大正の時代から百数十年をかけ、先人たちが命がけで育て上げてきたものだ。比較することさえばかばかしくなるこの差を、NHKはもとより安倍と政府与党は理解していない。歴史の否定は安倍の専売特許だが、平和国家や民主主義まで否定することは許されまい。

民意無視の危険性
 特定秘密保護法、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認、普天間飛行場の辺野古移設、原発再稼働、そして安保法案……。いずれの政治課題も、安倍が反対意見を黙殺して強行してきたものだ。その一方で、国民は何を得たのか?アベノミクスは一部の株式投資家や輸出企業を喜ばしただけ。大多数の国民は、何の恩恵も受けていない。期待感だけで食ってゆけるほど世の中は甘くないはずだが、お人好しが多いのか、まだ安倍の経済政策にすがろうとしている人がいる。30%台後半から40%台の支持率はその表れと言うしかない。しかし、まやかしもそろそろ効力がきれそうだ。つい先日、上海の株価が日本の株式市場に多大な影響を与えたことは、中国を仮想敵とする安倍にとって、随分と皮肉な出来事だったに違いない。株価が大幅に下がった時、アベノミクスは終焉を迎える。

 その中国が、日本に戦争を仕掛けるなどということが現実に起こり得るか?「起こり得る」と答える政治家がいるとすれば、よほど不勉強なのか、頭が悪いかのどちらか。国際社会の中で、中国が孤立の道を選ぶはずがないからだ。安全保障環境の変化だの、積極的平和主義だのと安倍は言うが、これまで日本は、現在以上に難しい局面をくぐり抜けてきたではないか。かつてのソ連は、中国以上に危険な国だった。本当の危機は、暴走する政治家に支配された日本国内にこそ、ある。

 戦後、これほど民意を踏みにじった総理大臣は存在しない。戦前で似たような人物を探せば、暴走陸軍の代表だった東条英機が思い浮かぶ。状況はまさに同じ。戦争を始めた総理として、東条と並んで安倍の名が歴史に残るのは必至である。安倍は祖父である岸信介を敬愛しているというが、岸が目指したのは60年安保によって日本を守ること。安倍の集団的自衛権は、米軍の補完勢力として戦争を行うというもので、国民に悲劇をもたらしかねない愚行なのである。

いまこそ「倒閣」
 憲法は、この国の主権が国民にあるという。ならば安倍晋三という希代の戦争好きを、このまま総理の座に据えておく必要はあるまい。主権者の力で、安倍政権を倒すべき。人の上に立ったつもりでいる安倍を、天も許してはおかないはずだ。まず、戦争反対の声を上げることからはじめよう。時間は、まだある。1万円札の思想家が生きていれば、「倒閣のすゝめ」を著したに違いない。



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