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やっぱり茶番! 佐賀県教委ICT教育事業「改善検討委」の実態 

2015年7月13日 08:20

佐賀県教育委員会 トラブル続きとなったタブレット型パソコンを使った教育事業の総括を行うとして「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会」を立ち上げた佐賀県教育員会が、同委員会のメンバー選定理由を文書化していないことが分かった。
 県教委と関係の深い教育関係者やPTAの役員ばかりで構成された同委のメンバーが、どのような理由で選ばれたのか分からない状況。さらに、作成を怠っていた議事記録についても、内部文書でホームページ上での公開を規定していたことが明らかとなり、不明朗な組織運営の実態が浮き彫りとなった。

改善検討委を巡る経緯 
 検討対象となっているのは、平成23年度から実施されてきた「ICT利活用教育推進事業」。県内すべての県立高校生徒にタブレット型PCを購入させ、成績向上を図るという触れ込みで進められてきた事業だ。実証研究を経て、26年度から県立高新入生徒全員にパソコン購入を義務化。各家庭に「5万円」を負担させたことで、同年度の新入生徒(6,579人。中途編入を含む)家庭の2割以上が県の融資制度などを利用した形での「借金」を余儀なくされていた。事業には、すでに50億円を超える公費が投入されている。

 事業への疑問の声を無視して、パソコン教育事業を進めた結果、県教委が指定したタブレット型パソコンは不良品の山。教材のインストールやアンインストールで授業を停滞させた上に、不透明な機種選定過程が明らかになるなど様々な問題が顕在化する事態に――。今年1月の佐賀県知事選挙で初当選した山口祥義知事は、就任会見で同事業の検証を明言していた。

 県教委は今年5月、タブレットPCを使った教育事業の総括を行うことを決め、検証組織の立ち上げを発表。その目的について、次のように記していた。

≪平成23年度から全県規模で実施している「ICT利活用教育推進事業」について、これまでの取組を振り返るとともに、将来展望についての総合的な改善検討を行うことにより、佐賀県ならではの教育の特色を活かした、より効果的なICT利活用教育の実施につなげることを目的として「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会(以下「改善検討委員会」という。)」を立ち上げ、事業推進に向けた協議や情報交換等を行っていきます。≫

 どう見ても後ろ向き。一体何を話し合っているのか確認するため県教委に対し行った情報公開請求で、第2回会議までの議事録を作成していなかったことが判明。隠ぺい姿勢が問題視される状況となっていた。

不透明な検討委設置経過
 それでは検討委発足は、どのような手続きを経たものか――改めて委員の選定理由等について県教委に情報公開請求を行ったところ、個々の委員の選定理由を記した文書がなく、公文書上で説明できる状態ではないことが分かった。

 委員会の構成メンバーは15名。佐賀新聞編集主幹とICT教育専門企業代表者の他は、県教委と関係の深い教育関係者やPTAの役員ばかりとなっている。こうした第三者組織の立ち上げでは、構成メンバーの選定理由を残すのが普通だが、県教委側は、委員の選定理由が分かる文書を残していないという。県教委は、いわば身内の集まりでお手盛り検討を行い、その結果を事業を追認させるための道具に利用する可能性が高い。

意図的だった「議事録不存在」
 「改善検討」を謳いながら、検討委の目的を「検証ではなく、意見を聞く場」と開き直る県教委。議事録を作成していないかったことも、意図的だった可能性が出てきた。今回、開示された決済文書に添付されていた下の文書がその証しだ。

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 これは、5月29日に決済された『平成27年度ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会(第1回)の会議資料及び運営について』と題する伺いの添付資料。赤いアンダーラインで示したように、会議の公開や議事概要のホームページ上での公開が明記されている。県教委は、議事記録作成の必要性を十分認識していたということだ。

 しかし、HUNTERが議事録不存在の問題点を指摘した折、県教委側は「議事録も録音データもない」としたうえで、「今後も議事録を残す予定はない」と断言。「検証ではなく、意見を聞く場」と開き直る姿勢を見せていた。決済文書の存在を知りながら、議事記録の不存在を公然化しようとしたのは明らか。議事内容が漏れることを恐れた“県教委幹部”の思惑が働いた、と見るべきだろう。

 ある佐賀県教育関係者の話。
「検討委は茶番。委員に就任した人たちは、戸惑っているのではないか。委員15人のうち、問題のタブレット端末の実物を見たことがあるのは、数名に過ぎないはず。もちろん、トラブルばかりで停滞した授業の実態も、ほとんどの人が実際には見ていないだろう。皆さんが、県教委に利用されている。
 この事業の最大の問題点は、生徒を置き去りに県教委と業者が暴走したこと。使えないパソコンを押し付けられた生徒や、多忙を強いられた教員のことを、県教委が真剣に考えているとは思えない。必要なのは『意見を聞く場』ではなく、事業を厳しく検証する組織。50億もの税金が消えた事業である以上、知事部局が主導する検証組織が必要だ」



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