衆議院で審議中の安全保障関連法案が、来週にも衆議院で採決される見通しとなってきた。与党単独での強行採決を避けるため、橋下維新を取り込む構えだが、国民の7割以上が反対もしくは慎重審議を求めているなか、民意を踏みにじる行為が許されるとは思えない。
「国民より米国」――安倍首相の基本姿勢は揺るぎそうもないが、米軍を守るために日本が戦争に巻き込まれる必要は、断じてない。安倍首相をはじめとする右翼陣営は「日米安保は片務条約」と主張するが、果たして本当にそうなのか?米軍関連予算の推移を確認したところ、途方もない金額を積み上げてきた実態が明らかになった。
在日米軍関係経費とは
現在、米軍のために支出される予算は、三つの流れで区別されている。まず一番大きいものが「在日米軍駐留関係経費」。これは「地域協定に基づく支出」と「特別協定に基づく支出」、提供国有財産借り上げ費など4つの支出費目を足したものである。このうち「地域協定に基づく支出」と「特別協定に基づく支出」の合計が、いわゆる『思いやり予算』と呼ばれるものだ。思いやり予算は、米軍基地で働く日本人従業員の給与などを日本側が受け持ち、米軍の負担を軽くするために1978年から始められた支出で、年々その額が肥大化してきた。
次に、1997年から支出されているのが「SACO関連経費」。「SACO」とはSpecial Action Committee on Okinawaの略。「沖縄に関する特別行動委員会」のことで、普天間飛行場(宜野湾市)を含む沖縄の米軍基地の整理・縮小等を協議した日米両国政府によって1995年に設置され、96年12月に最終報告を取りまとめた。 当時の首相は故・橋本龍太郎氏。97年から土地返還や訓練改善、騒音軽減のための事業が実施されており、それにかかるのがSACO関連経費である。
3つ目が「米軍再編関係費」。沖縄に駐留している海兵隊のグアムへの移転費や基地周辺自治体への再編交付金、新たな基地建設を含む移転に関する費用などで構成されるものだ。支出が始まったのは2007年。安倍内閣の時であることに注目したい。2014年度に890億円だった米軍再編関係費は、今年度になって1426億円に――。米国に媚を売る安倍首相の姿勢は、国民の気付かないところでしっかりと発揮されていた。
まとめてみれば「20兆円」
1978年度から垂れ流されてきた「在日米軍関係経費」を以上の3つに分類し、年度別にまとめたものが下の表である。
1978年度から2015年度までの38年間に、米軍のために費消された税金は約20兆円。現在の国家予算(一般会計)の5分の1にあたる血税が、日米安保の代償として支払われてきたのである。これに加え、自衛隊を使って米軍の軍事行動を補完するというのが安倍の集団的自衛権だ。
日米安保は「片務条約」ではない
米国は、「日米安全保障条約」によって日本を防衛する義務を負っている。これに対し、日本側は“米国を守る義務を負っていない”として、この条約を「片務協定」だとするのが安倍首相の主張。首相はかねがね、不平等な条約だから日本も相応の義務や責任を負うべきだと公言してきたが、この考えが集団的自衛権の行使を推し進める根拠の一つになっていることは明らかだ。だが、そうなると20兆円もの米軍関係予算は何のための支出だったのか、という素朴な疑問が提起されることになる。
日本が負担してきたのは在日米軍関係経費だけではあるまい。わずか10条からなる「日米安全保障条約」(正式名称:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)の第6条には、次のような規定がある。
日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
この一文があったがゆえに、米軍は国内の主要な土地を軍事基地として接収し、好き勝手に使ってきた。最大の犠牲を強いられたのが県土の1割、本島に限れば2割を米軍に取り上げられた沖縄であることは周知の通りだ。巨額な在日米軍関係経費支出に広大な基地用地の提供――日米安保が片務条約であろうはずがない。
安全保障関連法案が成立し、集団的自衛権の行使に踏みきった場合に流されるのは、日本人の「血」。血税の垂れ流しだけでは済まなくなる。本当にそれでいいのか?声を上げる方法は、いくらでもあるはずだ。