放射性廃棄物の処分場誘致を巡り、疑惑の証拠書類を廃棄したり、現職課長が議会で虚偽答弁するなど、次から次へと不適切な町政運営の実態が明らかとなった鹿児島県南大隅町に、森田俊彦町長の出張に関する新たな疑惑が浮上した。
問題の出張は、平成24年11月に町長が原子力ムラの闇の代理人とされる人物の会社を訪れた際に、直前に行った北海道視察。同町への情報公開請求で入手した出張命令書の記載内容を確認したところ、北海道における町長の足跡を証明する文書が、何一つ残されていないことが分かった。
同行者の有無も含めて、出張の実態は不透明なまま。親密とされる「闇の代理人」と一緒に、核関連施設の視察を行った可能性がある。
核ゴミ処分場で動く最中に北海道出張
核ゴミ処分場を巡る疑惑のなかで、東電の闇の代理人とされているのはオリエンタル商事(東京都)の原幸一社長。平成24年、森田町長と原氏は、核ゴミ処分場の誘致に向けて頻繁に政府関係者や東電会長に接触していたことが明らかになっている。現在までに判明している森田町長の同年6月から11月までの核ゴミ処分場に関する行動は次の通りだ。
6月と7月に行われた政府関係者や東電会長(当時)との極秘会談は、正式な出張目的に合わせてセットされたもの。出張命令書(下参照)によれば、6月29日の出張目的は「全国基地協議会・防衛施設周辺整備全国協議会合同総会」への参加。7月11日は「大隅総合開発期成会中央要望」となっている。
問題は下の出張命令書に該当する11月の出張。町長は、日程最終日の4日にオリエンタル商事本社を訪れていたが、この時の出張目的は「観光施設調査」「環境省要望」と関東在住の南大隅町出身者が集う「関東南大隅会」への参加。追跡可能な環境省や関東南大隅会は別として、北海道における「観光施設調査」は、証拠書類がなければ実施の確認がとれない。
南大隅町役場に確認したところ、北海道での訪問先は命令書記載の「宗谷岬」。町内には佐多岬があり、観光開発の参考とするため訪問したという。だが、写真を含めて訪問を裏付ける記録は何一つ残されておらず、本当に宗谷岬に行ったのかどうか、疑わしい状況だ。
視察地の近くに「幌延深地層研究センター」
宗谷岬の近く、幌延町には日本原子力研究開発機構が管理運営する「幌延深地層研究センター」がある。同センターは、放射性廃棄物の地層処分に関する研究を行う施設。町長とオリエンタル商事の原氏は平成21年、福島県の原発を視察し、いったん東京に戻って都内に1泊後、青森県六ヶ所村にある核関連施設を視察していたことが分かっており、核ゴミ処分場の誘致に動いていた森田町長が、原氏と幌延深地層研究センターを視察した可能性は高い。
国から核ゴミ処分場の受け入れ要請を受け、「断りに行った」としてきた森田町長だが、この時期の北海道視察はいかにも不自然。町側は核関連施設の視察を否定しているが、本当の目的が何だったのか、実態解明を求める声が上がりそうだ。