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橋下支配復活 維新が目指す政権との出来レース

2015年6月30日 08:00

維新の党 「維新の党」最高顧問の橋下徹大阪市長が、党内での発言力を増している。大阪都構想の実現に失敗し、市長退任後の政界引退を表明した同氏だったが、今月14日に安倍晋三首相と会談を行ってから完全復活。安全保障関連法案への対応を巡って噂される“政権との裏取引”を証明するかのように、党内掌握に走り出した。
 大阪維新系の「西」とそれ以外の「東」で路線対立が表面化、分裂の危機を迎えていた党内だったが……。

橋下支配
 先週、維新の党所属の国会議員にあてて、2通のメールが送られてきたという。少し長くなるが、橋下氏の党運営に関する考え方がよく分かる内容なので、原文のまま掲載する。以下はその内容。

 橋下最高顧問より「代表選挙における強烈なメッセージ」のだし方について提案がございましたので、皆様へお送りいたします。

維新の党は新興政党。強烈なメッセージが必要。
国会議員、地方議員、党員(党員の場合は党へのコミットの度合いで票の割合が異なっても合理的)の代表選持ち分を全員一票にすることの効果。
1、永田町の人間関係だけにこだわらない代表選出のプロセス。
2、実際に代表候補者は国会議員の人間関係に縛られることなく、幅広く国民の支持を得る主張・活動をやることができる。
3、首相公選制を主張していることの実践。文書通信交通滞在費の公開や企業団体の献金禁止など口だけでなく実行する政党の象徴。
4、他党とは異なる代表選プロセス。強烈なメッセージ=大統領選挙型代表選挙。そうすることで形式的な地方遊説にならない。
各ブロックごとに公開討論会をやり、その都度開票をする。票の状況が公開討論会毎に見え、最終決戦へ。公開討論会が真剣勝負になる。
5、このようなプロセスにすることによって、候補者や候補者派閥は、地方議員、党員獲得に必死になる。

 今は地方議員も党員も極端に少ない新興政党。普通のことをやっていても仕方がありません。全国の多くの人に代表選に参加してもらい、そして真剣な公開討論を通じて、直接代表を選んでいく。
何よりも国会議員だけに好かれるリーダーを選んでも国のためにはならないと思いますし、リーダーもその付き合いの活動にエネルギーを割くことから解放されます。
首相公選制を主張している以上、まずは党で実践することが肝要かと思います。
他党とは決定的に異なる強烈なメッセージになります。

橋下

 次が2通目。

 橋下最高顧問より、下記①~③のご意見がございましたので皆様へお送りいたします。添付ファイルを含め、ご覧いただきますようお願いいたします。

以下-------

① 柿沢幹事長
 早速ありがとうございます。

 一点、都道府県総支部への意見募集には異議ありです。というのも、維新の党は新興政党。都道府県総支部も形だけのところが多いです。都道府県支部ごとの党員数を確認しました。ある都道府県では党員数4名というところもあります。こんな総支部部長に意見を聞いても意味がありません。形だけの総支部です。こういう総支部に政党交付金を形式上配布していることすら僕は腹立たしいです。大阪府政、大阪市政ではバッサリ切ります。要するにPDCAサイクルが回っていません。総支部長も既得権となっています。

 選挙での獲得議席数、獲得党員数、を目標(P)に設定して、DCAを回させる。目標を達成できない総支部長は交代。これくらいをやらないと新興政党が伸びるわけありません。既得権打破と言うのは簡単ですが、結局維新の党が既得権化しているのではないでしょうか?

 執行部で総支部長の資格要件を定めるべきです。結果を出さない総支部長はどんどん交代させるべきです。結果を出さない総支部長が居座ることで、その都道府県は支持が広がりません。

 これまでの経験からすると、一定その地域で政治活動をやっている人は、既に評判が定着しており、維新の影響に左右されない人もいます。端的に言うと、評判の悪い人は、いくら維新が頑張ってもその地域で支持は広がりません。維新の場合は、むしろフレッシュな総支部長の方が支持を得ているのではないでしょうか?

 総選挙や参議院選挙、統一地方選挙、その他地方選挙、党員獲得数の分析で、結果を出している総支部長、そうでない総支部長を公開すべきです。切磋琢磨が維新の党の哲学です。

元へ。
 党員数4名や十数名の総支部長の意見など無視すべきです。むしろそのような総支部長は交代です。このような総支部にいったいいくらの税金(政党交付金)が流れているのでしょうか?

 既得権打破が維新の党の哲学なのでは?さらに党員に代表選挙の一票を与えるインセンティブは最大限に活用可能です。献金額に応じて。党員を一定数集めてくれたことに応じて。選挙活動等、党への貢献度に応じて。一票与えるインセンティブは工夫次第で最大限活用できます。ここが党勢拡大のための知恵の絞りどころかと。

 何よりも総支部長が既得権益化していないか、徹底チェックが必要です。現在の獲得党員数、地方議員数などのチェックは簡単にできます。政治活動費が支給されているはずですから、獲得党員、獲得地方議員一人当たりのコストは簡単にはじけます。行政の費用対コストを徹底的に追及するのが維新の党のはずです。そうであればまずは自分たちの費用対コストを徹底的に追及すべきではないでしょうか?とにかく言っていることとやっていることを一致させることが支持拡大の最大のポイントだと思います。
橋下

② (添付ファイルに関し)
 基礎金額なんて既得権そのものです。国会議員一人当たりというのも既得権では?大阪府政、大阪市政で徹底したのは団体運営補助の廃止です。各業界団体に多いものでは年10億円、成果とは関係なく税金が配られていました。このあたりを徹底的に見直し、将来世代への投資に回したのが大阪維新の会の政治でした。税金による団体運営補助なんて百害あって一利なし。ここを見直すのが既得権の打破。維新の党が、完全に既得権益化しているのではないでしょうか?

 成果目標を設定して、それを達成しなければ交付。当たり前のことだと思います。このようなことが成長の源。補助金漬けにしたら成長はないというのが維新の哲学では?もちろんセーフティネットは別です。総支部、国会議員、地方議員の政治活動資金はセーフティネットですか?維新の党が補助金漬けになっている感じがします。補助金漬けの政党に成長はないでしょう。維新がいつも言っていることではないのでしょうか?地方議員拡大、党員拡大のための経費。成果が出なければ経費はなし。当たり前のことをやらなければ、有権者にメッセージは伝わりません。特定団体の支持もなく、伝統もない政党が、有権者からの支持を得るためには、有言実行の強烈なメッセージしかありません。
橋下

③小熊議員がツイッターで書かれていたように、大統領型代表選挙をする場合には国会議員20名の推薦が必要との考えには賛成です。推薦がなければ単なる人気投票になってしまいますので。ただその際、国会議員20名の推薦であれば、くわえて地方議員20名の推薦も課すべきです。つまり国会議員20名、地方議員20名の推薦を要件とすべきです。推薦人の人数は色々考えがあると思いますが、ポイントは国会議員、地方議員同数の推薦人とすることだと思います。
橋下

 いずれも今後の維新の党運営について、詳しく述べたもの。1通目は同党の代表選における持ち分を、地方議員も国会議員と同じ「1票」とすることのメリットについて。2通目は総支部長の人選を含む、地方組織の在り方について述べたうえで、代表選立候補者の要件にも触れている。

 こまごまと自分の考え方を示しているが、要は「西」の発言力強化。代表戦における「一人一票」を実現することで、地方議員に国会議員と同じ力を持たせようとするものだ。同党の地方議員は、橋下信奉者ばかり。つまり「西」に軸足を置く議員が多い。代表選で地方議員と国会議員の持ち分を同じ一票にすると、西が推す候補者が圧勝することになる。総支部長候補にフレッシュな人材の発掘を求めているのも、代表戦への立候補要件強化も、同じく「西」を有利にするための布石。他党から流れてきた議員を中心とする「東」の息の根を止めようという、橋下氏の思惑がミエミエである。

 こうした動きを冷ややかな目でみている議員は、およそ20人ほどだといい、あとは橋下氏を中心とする「西」の言いなり。橋下氏への反発を強めていた議員たちの多くは、20日に大阪で開かれた勉強会ですっかり洗脳されてしまったのだという。

進む安倍との出来レース
 都構想の失敗で国政への関与を控えると見られていた橋下氏が、がぜん元気を取り戻したのは、安倍首相との会談後。安全保障法案の成立に向けて維新の協力体制を整える狙いがあるとみられる。つまりは、国民を欺くための「出来レース」。維新は、政府案に対して同党独自の対案を出すというが、これは基本的に集団的自衛権の行使に賛成であることを意味している。行使の要件などを厳格化してごまかすつもりだろうが、前提は同じ。違憲であることに変わりはない。案の定、自民党側は維新の対案提出を歓迎しており、出来レースは明らか。噂される安倍―橋下の密約説に信ぴょう性が出てきたと見るべきだろう。かつて2000%無いと断言した大阪知事選に、平然と出馬した橋下氏のこと。なんやかやと理屈をつけて、安倍政権を助ける側に回るはずだ。



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