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議事記録なし 佐賀県タブレットPC教育事業「改善検討委員会」の欺瞞

2015年6月22日 08:40

佐賀県教育委員会 県内すべての県立高校で、タブレット型パソコンを使った教育事業を実施している佐賀県教育委員会が、これまでの事業を総括するために立ち上げた「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会」の“議事録”を作成していないことが明らかとなった。 
 HUNTERが行った情報公開請求への回答によれば、“録音データ”も不存在。意図的に記録保存を避けたとみられ、どのような検証作業が行われているのか確認不能の状況だ。
 どうやら「改善検討」は名ばかり。事業を検証した形だけ残して、一連の騒ぎに幕引きを図りたい県教委側の思惑が浮き彫りとなった。

検証の必要性、新知事が明言
 県立高校の新入生家庭に5万円も負担させて購入を強制したタブレット型パソコンは不良品の山、教材インストール・アンインストールで授業を停滞させた上に、不透明な機種選定過程が明らかになるなど様々な問題を引き起こした佐賀県教育委員会の「先進的ICT利活用教育推進事業」。トラブル続出となったこの事業に対し、今年1月の佐賀県知事選挙で初当選した山口祥義知事は、就任会見で次のように明言していた。

 選挙期間中に多くの方から聞かれた内容です。もう現場主義の最たることで、教員の皆さん方から、しっかり消化されないままでやられている面があるとか ── ICTですね、タブレットの話とか、そういったお話も承りましたので、この問題はぜひ現場からの声をしっかり踏まえた形での検証が必要だと思います。少なくとも今のままで走るつもりはありません。何らかの形で再検証させていただいて、もし必要な見直しがあるとするならば、ICT化ということについては導入しつつも、そのやり方についてはきっちりと見直させていただきたいと思います

お手盛り検証で懸念された「隠ぺい」
 知事の意向を受けた形で県教委は先月、タブレットPCを使った教育事業の総括を行うことを決め、検証組織の立ち上げを発表。その目的について、次のように記していた。

≪平成23年度から全県規模で実施している「ICT利活用教育推進事業」について、これまでの取組を振り返るとともに、将来展望についての総合的な改善検討を行うことにより、佐賀県ならではの教育の特色を活かした、より効果的なICT利活用教育の実施につなげることを目的として「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会(以下「改善検討委員会」という。)」を立ち上げ、事業推進に向けた協議や情報交換等を行っていきます。≫

 委員会の構成メンバーは15名。佐賀新聞編集主幹とICT教育専門企業代表者の他は、県教委と関係の深い教育関係者やPTAの役員ばかり。いわば身内の集まりだ。目的についても「取組を振り返る」「総合的な改善検討」と述べながら、「事業推進に向けた協議や情報交換」としており、“事業推進”が前提。事業を追認させるためのアリバイ作りと「隠ぺい」が懸念される状況だったことから、県教委に対し、各委員の選定理由や同委員会の第一回会議の議事録及び録音データの情報公開請求を行っていた。このうち、委員会議事録の開示請求について、県教委が出した答えが下の「公文書不存在決定通知」である。

武雄市 公文書不存在決定通知書

意図的な議事記録不存在
 「改善検討」と称しながら、何を検討したのかを示す会議の記録や基となる録音データを残していないという。公的な検証で、記録を残さないという異例の事態だ。

 何かの間違いではないか――県教委の担当課に確認したところ「議事録も録音データもない」としたうえで、今後も議事録を残す予定はないと断言。(それでは検証にならないのでは)と重ねて尋ねたところ、「検証ではなく、意見を聞く場ですから」という驚くべき回答が返ってきた。

 「意見を聞く場」……。やるだけやって、結論は県教委が都合よく「総括」する形で幕、というシナリオだ。議事記録の不存在は、やはり意図的なもの。愚行を追認させる目的で、委員会を設置したとみるべきだろう。県教委内部に官業癒着の主役が残っていることで「隠ぺい」を懸念していたが、まさにそれが顕在化した格好だ。県教委の行為は、事業の検証を公言した知事にだけでなく、県民に対する背信行為。知事部局主導の検証がなされない限り、実態解明は難しいと言わざるを得ない。



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