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辺野古が教える安倍政権の実相 ― 沖縄の現状(3)

2015年6月25日 10:00

対岸から見たキャンプシュワブと辺野古沖 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先として注目を集めてきた名護市辺野古。沖縄戦の後、米軍と共存せざるを得なかった海辺の小さな集落は、朝鮮、ベトナムといった他国の戦争に翻弄され、今また軍用施設建設の是非を巡る争いの渦中にある。
 普天間飛行場の移設予定地は、辺野古の沖合。珊瑚やジュゴンの生息域として知られる海を埋め立て、V字型の滑走路を造る計画だ。
 沖縄では保革を超えた移設反対運動が続いており、名護市長選や知事選さらには衆院選で「移設反対」の民意が示された。だが、安倍政権はこれを無視。“力づく”で移設に向けた動きを進めている。
 新滑走路建設の前段階となるボーリング調査が行われている「キャンプシュワブ」周辺の現状を取材したが、そこで見えてきたのは……。(写真は対岸から見たキャンプシュワブとボーリング調査が強行されている辺野古沖)

緊張つづく辺野古の海
 辺野古の海岸にある米軍キャンプシュワブのフェンス。昨年、沖縄県知事選挙が行われた頃までは、基地移設反対を訴える布が数多く括りつけられていた(写真左)。それが現在は右のような状況。この場所を象徴的に扱った報道が相次いだため、政府にとっては、よほど目障りな存在になっていたのだろう。ほとんどが取り払われている。他人の構造物に手を加えるのは確かに違法だが、相手は自由の国アメリカ。大目に見ていたところ、移設反対の声が盛り上がりみせたことで、日本政府側が慌てて動いたというのが実情ではなかろうか。大人げなさは、安倍政権の専売特許である。

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 下は、米軍によってフェンスに掲げられた警告看板の一部。埋め立て予定地を含む侵入制限海域が示してある。“ここに入るな”というわけだ。

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 実際の斜線の海域はオイルフェンスで囲われており、その内外を沖縄防衛局お雇いの船舶や海上保安庁のボートが走り回っている。海保のボート以外の船舶が掲げている旗には「ODB」。「Okinawa Defense Bureau」=沖縄防衛局のこと。相手にしているのは外国の武装集団ではなく、日本国民である。

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 防衛局や海保といった権力側と対峙し、移設反対を訴えている人たちが調査作業の監視や抗議で使用しているのが下のようなカヌーや小型船。移設反対派は、まさに身一つで活動しているのである。

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「海猿」の行状
 下の写真は、今にも飛び出しそうな態勢で構える海保のボート。テレビドラマや映画で人気となった「海猿」たちが完全装備で見据えるのは、カヌーなど移設反対派の船だ。

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 度々報じられてきたが、辺野古の海で海猿の皆さんがやっているのは、「救助」ではなく「排除」。相手は、本来彼らが助けるはずの日本国民である。オイルフェンスに近付いたカヌーや小型船に体当たりしたり、海中からカヌーを転覆させるなどして、反対派市民を拘束。いったんゴムボートに乗せておいて、近くの浜で放り出すのだという。まさに、やりたい放題。ドラマや映画の海猿が、こんなことをやっているとは驚きである。数と力で国民を黙らせる、安倍政権の手法そのままだ。

「大手ゼネコン」と「右翼の街宣車」
 権力側の愚行は、海上だけにとどまらない。キャンプシュワブのゲート前では、移設工事に向けたボーリング調査を阻止しようとする人たちと防衛局側との攻防が続いてきた。基地沿いを走る国道の反対側に移設反対派が仮設テントを設置して抗議活動を続けているが、工事車両の入口には、何十人もの警備員が固まっている。

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 警備員を雇っているのは、防衛局ではなく大手ゼネコン「大成建設」。同社は辺野古沖のボーリング調査(下の写真)を請負っており、政官業癒着の代表企業が、防衛省にかわって米軍基地を守っている形だ。ある意味、産軍共同体。安倍自民党の実相が見えてくる。

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 キャンプシュワブのゲート前では、別の意味で象徴的な光景に出合った。移設反対派の仮設テント前に、スピーカーの音量を最大にした右翼団体の街宣車。移設反対派を威圧する行動だが、安倍政権の後押しであることは言うまでもない。安倍晋三という幼稚で姑息な政治家を支えているのは、金の亡者と歴史を顧みない右寄り学者に右翼――ある自民党の長老から聞かされた話が頭に浮かんだ。

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本土側に求められているのは……
 辺野古を巡る動きを取材していて、感じることがある。沖縄の民意が固まっている以上、辺野古移設は断念すべき。それが民主主義というものだ。政府がこれを無視するなら、抗議の声を上げるのもまた当然。キャンプシュワブのゲート前で移設反対の運動を続けることは、やむを得ぬ一つの手段として容認できないこともない。しかし、いわゆるセクトと称される左翼組織や暴力団まがいの政治団体が、事の本質を歪める現状には同意できない。安倍政権の味方をする右翼の街宣車はもちろん、移設反対派についた“プロの活動家”も退場すべきだろう。

 基地移設の問題については、それぞれの立場でものを考え、行動することが必要だ。本土から行った人が沖縄の人たちの移設反対運動に賛同し、現地で実情を確かめたり、裏方として支えることは大切。これは尊重されて然るべきである。しかし、本土で暮らす私たちに求められているのは、太平洋戦争以降、多大な犠牲を払い続けてきた沖縄の実情を知り、本土の中から沖縄のために声を上げることではないだろうか。一部の偏った勢力が支える極右政権に対し「NO」を突き付けることこそ、国の未来を確かなものにする唯一の道。集団的自衛権も辺野古移設も反対――辺野古の現状を見るにつけ、そうした思いが募るのはたしかだ。



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