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維新迷走 分裂の危機

2015年6月18日 09:15

維新の党 今月14日、東京都内で安倍晋三首相と「維新の党」最高顧問の橋下徹大阪市長が会談。菅義偉官房長官、松井一郎大阪府知事も交えて、食事を共にしながら3時間話し込んだという。「大阪都構想」の頓挫を受け政界引退を表明した橋下氏が挨拶に訪れた、という触れ込みだったが、政治家の動きを額面通りに受け止めることができないのが永田町。安全保障関連法案の成立に向けて維新の取り込みを図りたい首相が、橋下氏に協力を求めたとの観測が広がった。
 その数日前から維新の国会対応は政府寄りに急旋回。派遣法改正案をめぐり厚生労働委員会での法案採決を認める方針に転換するなど、不可解な動きが……。「やっぱり」との見方が大勢だったが、肝心の党内は分裂に向けてまっしぐらといった状況に陥っている。

内紛が顕在化
 ゴタゴタの始まりは先週の維新の党政調役員会。安保関係の勉強会について聞かれた今井雅人政調会長(民主党→維新)が、「橋下さんの意見はもういいでしょう。代表を退く時に、国会には口を出さないと言ったんだから」と発言。橋下氏が“過去の人”だという見方を示した。

 17日、今度は「結いの党」出身の寺田典城参議院議員(結い→維新)が、参議院の議員総会で「馬場(伸幸・国対委員長。大阪維新→維新)さんの話は受け入れられない。俺は切れた」として地域再生法改正案への党の態度に不満をぶちまけた。

 同調したのが小野次郎参議院議員(自→結い→維新)。「大阪都構想には賛成だが、住民投票活動に7億も使って、終わった後に我々に対して橋下代表からのお礼の言葉もない。それなのに終末には安倍総理と3時間も話をしている」と橋下批判。厳しい発言は止まらず、「安保関係の勉強会を20日に大阪で行うので来いという連絡が来たが、おかしいのではないか。橋下さんが東京に出向いてくるべきだろう。20日の土曜日には山梨で数十人集めた会合が予定されていたんだ。こっちはみんなに電話で謝っているところなんだ」と橋下最高顧問の側近中の側近、東徹参議院議員(大阪維新→維新)に怒りの矛先を向けた。

住民投票の活動めぐり「公選法違反」の声も
 維新関係者によると、小野氏が言う「7億円」には二つの意味があるという。一つは大阪市選管が住民投票にかけた公費の額。そしてもうひとつは、維新の党が都構想への賛成票をかき集めるために使った資金の額なのだという。広報宣伝に数億円かけたことが知られているが、運動員に関する支出も、数億円単位になるというのだ。

 橋下維新にとって都構想は「一丁目一番地」。住民投票での勝利に向けて活動を展開するため、大量の運動員を大阪市内に投入した。そのため国会議員の各事務所に運動員10人の動員を強要したが、問題は経費。宿泊費と交通費は党が出すという約束だったが、日当支払いは不可。住民投票には公職選挙法の規定が適用されるため、「運動員報酬」が認められていなかったのだ。賛否の呼びかけには公職選挙法が準用されたが、ビラ・ポスターの種類や枚数などには制限がなかったのに対し、戸別訪問や運動員報酬は禁止。人員確保に頭を悩ます事務所が続出した。結局、自腹で運動員を確保した事務所も少なくなかったらしく、公選法違反を危ぶむ声さえ上がっていた。小野氏の怒りは、大阪系以外の議員たちの声を代弁したものとも言えそうだ。

まとまり欠く党内
 ある維新関係者はこう話す。
「今井さんや寺田さん、そして小野さんの発言は、『これ以上、西に振り回されるのはごめんだ』という意思表示だよ。党を総動員して戦った住民投票で敗れ、都構想の実現に失敗した。都構想そのものも分かりにくかったが、本当の敗因は橋下氏の政治手法や人格。それが、安保法案や派遣法を審議している真っ最中に、首相や官房長官と長時間の密談というんじゃ、お話にならない。加えて、有権者から白い目で見られるのは必定。やっぱり維新は自民党の補完勢力だと受け取られかねない。引退表明したのなら、引っ込んでいるべき。後方支援に徹していればいいのに、のこのこ前線に出てきて作戦会議じゃ、党内は収まりがつかない。引退の話も今だけ。どうせ前言撤回で、国政に転じるんだろうと見る関係者の方が多いんじゃないか。いい加減にしろと言いたくもなる」

 荒れた参議議員総会の場は片山虎之助参議院議員(自民→太陽→維新)が「松野(頼久)代表に伝えておくから」と収めたものの、党内では、その松野氏の指導力に疑問を呈する声も少なくない。橋下氏の引退表明と江田憲二氏の代表辞任を受けて新代表になった松野氏だったが、民主を含む野党再編に舵を切ったかと思いきや、前述のような政府寄りの国会運営を容認するといった迷走ぶり。腰の定まらぬ党運営に、党内外から批判が出る有り様となっている。

 もともと大阪維新に軸足を置く議員たちとそれ以外には、かなりの温度差がある。同党を構成しているのは、維新の生え抜きに加え、民主、太陽、結いなどから合流した議員たち。安倍晋三と懇意な橋下・松井両氏を慕う集まりである“西”が政権寄りであるのに対し、“東”と呼ばれる他党出身者たちの多くは野党再編を志向する。西と東で国会運営の方向性が違ってくるのは当然だが、そこに引退を表明した橋下氏が口を出した形になったことで、党内の不満は爆発寸前。西と東で一触即発の状態だ。

 複雑なのは、同党が単に「西と東」で固まっているのではなく、4グループに分かれていること。大阪維新系、旧民主系、旧太陽系、そして旧結いの括りで集まることが多く、いずれ分裂となれば、バラバラになることが予想されるという。しょせんは、選挙目当ての寄り合い所帯。有権者にとっては、すっきりさせた方が判りやすい。



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