県立高校でのタブレットPCを使った授業に50億円超――佐賀県教育委員会が平成23年から続けてきた「先進的ICT利活用教育推進事業」は、無計画に調達を繰り返した結果、一部業者が巨利を得るための装置と化していた。
事業を牛耳ってきたのは、県教委幹部と県内に本社を置く電子教育機器卸、・販売の「学映システム」。同社と県教委の癒着ぶりを検証していく。
調達の大半、学映システムへ
平成23年から26年度までの4年間で、事業に関する支出は250件以上。その半数近くが学映システムに発注されたものだ。同社が受注した仕事だけを抜き出してみるとこうなる。
「先進的ICT利活用教育推進事業」における同社の受注実績は、契約件数のおよそ4割、金額では支出全体の4分の1以上となる。主要な業務の大半を同社が得ていた形だが、同社の利益はこれだけにとどまらない。公費支出分以上の売上を得る仕組みが、事業の本格始動前に作り上げられていたのである。
疑惑の文書
パソコン納入をめぐって、「疑惑」を想起させる文書が存在する。平成25年12月、県教委は、実証研究を拡大させるためウィンドウズの端末1,856台を導入する(指導者用パソコン1,230台=賃貸借(リース):県内32校に配備。生徒用パソコン620台=購入:県内3校に配備)
この時の業者選定は入札。なぜか「一者応札」で学映システムが落札したが、この時の「仕様書」には、信じられない一文が加えられていた。(赤い囲みはHUNTER編集部)
≪平成27年度以降も、毎年4月に新入生が新たに学習用PCを購入する予定であるが、新たに購入するにあたって、特に支障がない場合は、数年間、今回の納入業者と販売に係る協定を結ぶこととする≫
実証研究用パソコン1,856台の契約を受注した学映システムに、今後数年間、無条件で新入生全員にパソコンを売る仕事を保証していたのである。競争の原則を無視した学映システムへの便宜供与に他ならないが、県教委は、この仕様書の記述に基き、同年12月27日に同社と「佐賀県学習用PC販売に係る協定書」を締結している。
「先進的ICT利活用教育推進事業」における公費支出の多くを吸い上げる一方、毎年県立高校に入学してくる生徒に対するパソコン販売権をも獲得していたというわけだ。佐賀県立高校の新入生の定員は6,800名、タブレットPCは約8万4,000円で、毎年約5億~6億円の売上げが同社に転がり込む計算だ。
突出する受注実績、一者応札、利権を保証する協定書―いずれも県教委と学映システムの癒着を疑わせる事実ばかりだが、官製談合や入札妨害を想起させる事実が、ほかにもあった。