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沖縄の現実と日本の未来

2015年6月19日 10:30

沖縄県庁 毎年6月23日、沖縄県では県庁(右の写真)をはじめとする各行政機関や公立学校のすべてが休みとなる。この日は、県民の4人に1人が犠牲になったと言われる「沖縄戦」で、日本軍の組織的な戦闘が終結したとされる節目。これにちなんで、沖縄県が独自に休日として制定した「慰霊の日」なのである。
 今年も慰霊の日に糸満市摩文仁の平和祈念公園で「沖縄全戦没者追悼式」が開かれ、戦没者の冥福と世界の恒久平和を祈るという。
 安全保障関連法案をめぐり国が揺れるなか、本土に暮らす私たちも、沖縄の特別な日に思いを至らす必要がありそうだ。

沖縄の現実
 沖縄と聞いて思い浮かぶのは、南国のリゾート地、同県出身の芸能人、そして普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題といったところだろう。しかし、太平洋戦争の末期には、エメラルドグリーンの美しい海とは対照的な光景―沖縄戦―が繰り広げられ、1972年の本土復帰後は、米軍基地が県土の2割近くを占めるという現状が続いている。

”沖縄 キャンプシュワブ

 「沖縄戦」については、ひめゆり部隊の悲劇に代表される当時の惨状が何度もテレビドラマや映画で取り上げられてきた。そのため広く知られてはいるが、前述の「慰霊の日」を意識する本土の人間は、決して多いとは言えまい。本土と沖縄に、温度差があるのは事実。人事交流で本土のマスコミに赴任した沖縄の記者の多くが、意識の違いに落胆するのだという。たしかに、本土に暮らす私たちは、沖縄の実情をつかんでいるとは言い難い。

 沖縄についてマイナス面が語られる時、必ずと言ってよいほど出てくるのが、県民所得の話。基地負担の代償として巨額な公費を投じて沖縄振興が図られてきたというが、県民一人あたりの所得は全国一低い水準のまま。失業率も全国一だ。基地依存の経済では、豊かさの保証などできはしない。

 一方、プラス面をみると、意外なことに沖縄県の出生率は全国一。年少人口の割合もまた全国一である。人口増加率は東京に次ぐ高さとされ、沖縄の未来が決して暗くないことを物語っている。

 だが、忘れてはならないのが“国土の 0.6%に過ぎない沖縄に、国内米軍基地の75%が集中”という現実だ。沖縄本島を車で走ると、どこに行っても米軍基地だらけ。わずかな平地の大半を、他国の軍隊が占領している状況だ。取材の度に胸がいたむが、この国の為政者たちは、何の痛痒も感じていない。

沖縄に重なる日本の未来
 米軍普天間飛行の辺野古移設をめぐっては、名護市長選、同市議選、県知事選、衆院選と4度の選挙で「移設反対」の民意が示されながら、安倍政権は移設への動きを止めようとしない。この国の安全保障のため、沖縄県だけに負担を押し付けた形はどう見てもいびつだが、極右の宰相は、基地反対を訴える同県の声を黙殺する構えだ。「国民の安全を守る」という安倍の言葉が、沖縄では余計に虚しく聞こえる。

 国民の反対意見を無視し、集団的自衛権の行使を実現することで、「戦争のできる国」を目指す安倍晋三。その暴走が容認された場合、沖縄の現実が、この国の明日になる可能性は高い。

 沖縄のこと、普天間のこと、そして辺野古のことをもっと知るべきではないか――次週から、戦後70年目の「慰霊の日」を迎えた沖縄の現状について報じていく。



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