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住宅公社分譲地で土地ころがし容認 背景に「県営住宅増設」
伊藤県政と建設業界の癒着(下)

2015年6月16日 07:00

鹿児島県庁舎 鹿児島市松陽台町で「ガーデンヒルズ松陽台」の戸建用地分譲を行っている県の外郭団体「鹿児島県住宅供給公社」が、一般顧客には認めていない「転売」を容認する形で販売実績を上げていた問題で、公社側の説明を否定する事実が判明した。
 同公社によれば、一般客以外に土地を売却したのは「住宅メーカー」で、なおかつ「モデルハウス」建築後にエンドユーザーに転売させているとしていた。しかし、昨年後半、売れ残っていた戸建て分譲用地を地場建設業者らが購入したケースでは、モデルハウスを造らぬまま放置。一部業者が、別の業者を通じて売りに出している実情も明らかになった。明らかな「土地ころがし」。背景にあるのは、伊藤県政と建設業者の癒着構造だ。
(写真は鹿児島県庁)

地場業者6社が戸建用地購入
 昨年8月から10月にかけて、ガーデンヒルズ松陽台の分譲地6区画の所有権が、地場建設業者6社の名義に変更された。(下は登記簿の一部。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

所有権が地場建設業者6社の名義に変更

 分譲地を買ったのは、南生建設(鹿児島市)、町田建設(奄美市)、竹山建設(奄美市)、藤田建設興業(鹿児島市)、こうかき建設(鹿児島市)、丸久建設(鹿児島市)の6社。いずれも県発注工事を数多く請負っている建設業者である。業者名義となったうちの2区画には「売約済」の看板。しかし、何カ月経っても住宅建設は始まらず、雑草が生い茂る状態になっている。(下の写真参照)

雑草が生い茂る「売約済」

 一方、業者が買った他の4区画の土地には「売約済」の看板もたてられておらず、そのうちの1区画には下の写真にある看板が掲げられている。

「売土地」

 奄美市の業者(町田建設)の名義になっている区画だが、「売土地」の看板を設置したのは薩摩川内市の建築業者。このケースになると、モデルハウスどころか、ただの転売。建築条件を付けているとしても、公共事業を利用して、自社の利益を上げる手法であることには変わりがない。

 そもそも、県住宅供給公社は、地方住宅供給公社法に基づき鹿児島県が設立した公的住宅供給機関。県民に良質で快適な環境に恵まれた住宅の供給を行うための組織で、建設業者に便宜を図るなど言語道断。分譲地売却が進まないからといって、ルールを逸脱した販売が容認されるわけがない。

見返りに建設工事発注の疑い
 業者側が分譲地を取得した目的として挙げられるのは、まず転売益。前述のケースはその典型例だが、ほかに理由があるとすれば、それは何か――?考えられるのは一つ。県と建設業界の“持ちつ持たれつ”で、業者が売れない土地を抱かされたということ。その場合、業者側にとって別の「利」が存在する可能性がある。その見立てを証明するのが次の写真である。

法定看板の施工業者の欄に「丸久建設」

 画像は、ガーデンヒルズ松陽台の事業計画を変更した鹿児島県が、公社から取得した土地に整備を強行している「県営住宅」の建設現場。つまり、戸建分譲地の目と鼻の先で工事が行われている。その現場にある法定看板の施工業者の欄には「丸久建設」――公社から戸建用地を買った前記6社のうちの1社なのである。工事の入札が行われたのは今年に入ってからで、戸建用地の購入契約が結ばれた後。県と建設業界との間で、見返りの話がついていた可能性を疑わせる事実ともとれる。

マリコン談合と建設業協会
 前記6社のうち4社は、2009年に発覚したマリコン談合の当事者企業。事件を受けた県は、関わった31社に違約金を請求していたが、その後、県議会が2度にわたって「減額」を決議。結局、県は業者側が負担すべき32億円の違約金を半分にする決定を行い、伊藤県政と建設業界の癒着を象徴する出来事として、県民から批判を浴びていた。

 前記6社のガーデンヒルズ松陽台の戸建用地購入について公社の担当者に『鹿児島県建設業協会』への購入依頼を行った事実はないかと聞いたところ、「業界、団体にお願いしなければ、分譲地の売却は進まなかった」と回答。事実上、建設業協会に依頼した結果であることを認めた形となっている。ちなみに、県建設業協会の会長は、前記6社のうちの1社・南生建設の代表者である。

影落とす県営住宅増設問題
 県側がなりふり構わぬ分譲地売却を余儀なくされた背景には、松陽台町の県営住宅建設計画がある。ガーデンヒルズ松陽台の土地を鹿児島県が約30億円で取得し、新たに県営住宅328戸を建設すると発表したのが平成23年。もともと、約11haの予定地に戸建用地470区画を販売する計画だったが、同年になって伊藤祐一郎知事が一方的に方針転換。ガーデンヒルズ松陽台で最大の面積を占める戸建用区画約5.6 haが、すべて「県営住宅」で埋められることになった。(下が全体の図面。赤い囲みの中が県営住宅建設整備地。図面下の一角が戸建用地)

全体図

 周辺環境が激変することなどを憂慮した松陽台町の住民は、県営住宅増設を白紙に戻すよう運動を続けてきたが、伊藤知事はこうした声を無視して強引に計画を進め、昨年春から建設工事を強行していた。

 子育て支援住宅などと謳っているが、同地に小学校はなく、松陽台町に住む大半の小学生は、一駅離れた「鹿児島市立松元小学校」まで、JRでの“電車通学”を余儀なくされているのが現状。小学校だけでなく、保育園も中学もない。

 問題は教育環境にとどまらない。ガーデンヒルズ松陽台には、商業施設はもとより、公共機関や金融機関などが一切なく、社会環境自体が整っていないのだ。公社は、いずれの施設も「出来ます。誘致します」と宣伝して分譲を進めていたのだが、約束が守られなかったことで、分譲地売却にブレーキがかかったという経緯がある。同地は鹿児島市の中心地からJRで二駅。車がなければ、不便極まりない環境となっている。売れない分譲地の隣りに低所得者向けの「県営住宅」。計画に無理があったことは言うまでもないが、止まらないのが公共事業。県営住宅増設を進めるためには、戸建用地を埋める必要があったともとれる。

 無謀な県営住宅増設の裏に、伊藤県政と建設業界の癒着。ツケを回されるのは県民なのだが……。



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