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僭越ながら:論

安倍晋三と憲法99条

2015年6月10日 09:20

安倍首相 衆議院の憲法審査会に参考人として呼ばれた3人の憲法学者が、そろって集団的自衛権の行使を「違憲」と断じた。与党側推薦の大学教授まで政権の姿勢を厳しく批判する事態。安全保障関連法案が審理されるなか、政府・与党は火消しに躍起となっているが、多くの国民が感じた政権への不信は消えそうもない。
 戦争オタクの首相は、もともと平和憲法否定論者。「違憲」と言われても、せせら笑って安保関連法案の成立を強行し、最終的な目標である「憲法改正」を目指すだろう。
 だが、この首相の姿勢こそ、重大な憲法違反であることを忘れてはならない。

憲法学者が「違憲」批判―浮足立つ安倍政権
 安倍首相は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定するにあたって、これまでの憲法解釈を「変えた」と明言している。閣議決定の内容を実現するために提出されたのが、いま国会で審議されている安全保障関連法案だ。

 法案は2本。「国際平和支援法案」(正式名称:国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律)と「平和安全法制整備法」(正式名称:我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律)だ。法案の名称に無理やり「平和」と入れたうえ、集団的自衛権と集団安全保障をごた混ぜにし、理解できないように工夫されている。実態が「戦争法案」であることを隠すための姑息な手法である。前者は「外国の軍隊を守るための法律」であり、後者は「世界中で戦争をするため」の法改正と言った方が分かりやすい。

 憲法審査会で集団的自衛権を「違憲」と切って捨てた3人の憲法学者は、安全保障関連法案に対しても同様の見解。法案の前提である集団的自衛権そのものを「違憲」と断じているのだから、それを実現するための法案が違憲となるのは当然の帰結だろう。自民・公明が推薦した大学教授まで政府を批判した形で、法案審議の行方に影響を及ぼしかねない状況となっている。

 想定外の事態に、政府側は防戦一方だ。

  • 菅官房長官 ―― 「全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいる」
  • 中谷防衛相 ―― 「違憲ではない」

 たくさんいるはずの著名な学者の名前は一切出てこず、合憲の理由も示されないといういい加減な反論ばかり。安倍首相の「戦争に巻き込まれることはない」「抑止力が高まる」同様、政権特有の『根拠なき主張』を象徴する発言である。

 首相は8日、外遊先のドイツで「憲法解釈の基本的論理は全く変わっていない」と強弁し、憲法学者らへの反論を試みた。だが、その基本的論理をねじ曲げ、憲法9条が否定する集団的自衛権の行使を容認したのは首相自身。論理矛盾は明らかだ。

 政府は9日、違憲を否定する見解を発表したが、浮足立った政府側の主張に説得力はなく、安保関連法案の今国会での採決は難しい状況となっている。

首相が犯している「憲法違反」
 集団的自衛権や安保関連法案の違憲性が議論されるのは当然だが、安倍首相が犯している「憲法違反」にも注目すべきだ。日本国憲法の99条は、次のように規定している。

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ

 国会議員をはじめとする公務員、さらには天皇までもが憲法擁護の義務を負わされているのだ。条文のどこにも、「国民」という文言が入っていないのは、憲法が権力に対する抑制装置であることを示しているが、安倍首相には通じない。首相は公式サイトのなかで、憲法についてこう述べている。

 憲法改正が必要と考える理由として、次の3点を指摘します。

 まず、憲法の成立過程に大きな問題があります。日本が占領下にあった時、GHQ司令部から「憲法草案を作るように」と指示が出て、松本烝治国務大臣のもと、起草委員会が草案作りに取り組んでいました。その憲法原案が昭和21年2月1日に新聞にスクープされ、その記事、内容にマッカーサー司令官が激怒して「日本人には任すことはできない」とホイットニー民生局長にGHQが憲法草案を作るように命令したのです。

 これは歴史的な事実です。その際、ホイットニーは部下に「2月12日までに憲法草案を作るよう」に命令し、「なぜ12日までか」と尋ねた部下にホイットニーは「2月12日はリンカーンの誕生日だから」と答えています。これも、その後の関係者の証言などで明らかになっています。

 草案作りには憲法学者も入っておらず、国際法に通じた専門家も加わっていない中で、タイムリミットが設定されました。日本の憲法策定とリンカーンの誕生日は何ら関係ないにもかかわらず、2月13日にGHQから日本側に急ごしらえの草案が提示され、そして、それが日本国憲法草案となったのです。

 第二は憲法が制定されて60年が経ち、新しい価値観、課題に対応できていないことです。例えば、当時は想定できなかった環境権、個人のプライバシー保護の観点から生まれてきた権利などが盛り込まれていません。もちろん第9条では「自衛軍保持」を明記すべきです。地方分権についても道州制を踏まえて、しっかりと書き込むべきです。

 第三に憲法は国の基本法であり、日本人自らの手で書き上げていくことこそが、新しい時代を切り拓いていくのです。

 憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と記述されています。世界の国々、人々は平和を愛しているから日本の安全、国民の安全は世界の人々に任せましょうという意味にほかなりません。

 普通の国家であれば「わたし達は断固として国民の生命、財産、領土を守る」という決意が明記されるのが当然です。

 どう甘くみても、安倍首相が『憲法を尊重し擁護』しているとは思えない。むしろ、現行憲法について、素人による急ごしらえだと厳しく批判する内容だ。前文を例示したうえで、「『わたし達は断固として国民の生命、財産、領土を守る』という決意が明記されるのが当然」としたところなどは、憲法の基本理念を否定したに等しい。これは尊重でも擁護でもなく、誹謗・中傷の類いと言うべきだ。

 憲法をないがしろにする姿勢は、今年になってさらに過激さを増しており、「GHQの素人がたった8日間で作り上げた代物」と発言。野党側から厳しい追及を受けている。この場合の『代物』は、悪いものへの評価。安倍が憲法99条に違反する政治家であることは、疑う余地がない。憲法違反の政治家に、国の未来を任せるのは間違いだと思うが……。



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