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武雄市長選収支報告 陣営も選管もお粗末

2015年6月11日 10:35

選挙運動費用収支報告書 今年1月の武雄市長選挙で初当選した小松政市長の陣営が、公職選挙法で定められた記載方法を逸脱した「選挙運動費用収支報告書」を提出していた問題で、指摘を受け修正された報告書も、不十分なものであることが分かった。
 支出区分の間違いは修正されているが、電話代を推定で計上した部分はそのまま。法が求める正確な記載とはなっていない。さらに、同市選挙管理委員会が杜撰な事務取扱いを行っていたことも明らかとなり、収支報告自体の信ぴょう性に疑問符が付く状況となっている。

修正は19箇所
 選挙運動費用収支報告書の作成にあたっては、出納責任者選任前の支出を「立候補準備」、選任後は「選挙運動」と区分するよう定められているが、小松陣営が市選管に提出した報告書は複数個所で誤った記載を行っていた。HUNTERの指摘に対し、同市選管も記載の誤りを認め、陣営に修正を求めるとしていた。

 選管が新たに開示した報告書によれば、修正は19箇所。支出区分の間違いを修正したのにともない、立候補準備、選挙運動のそれぞれに費やした金額の総計が書き換えられている。

異例のマイナス計上
 一方、小松陣営の報告書にあった、実際には支出されていない30,000円の電話代については、未修正のままだ。公選法は、選挙運動費用の収支報告について、全ての収入・支出について正確な額を報告するよう求めており、概算を記載することは許されない。しかし、同陣営の収支報告書では電話代を「翌月請求」として片付け、正確な金額を記載していなかった。

 事実上の架空計上。違法ではないかとの問いに対する選管の回答は「2回目に出されたものを別に保管していたため、公開し忘れていた」――事務取扱いのミスを認め、ただちに公開するとしていた。1週間後、送られてきたのは2回目と3回目の報告書。下は、3回目提出の報告書の記載だが、異例と言うほかない。

3回目提出の報告書の記載

 支出金額として記載されているのは、これまた実際に支払った金額ではない。備考欄に支払額を記入して、1回目で計上した30,000円との差額を書き入れているのだ。公選法は、『選挙運動に関するすべての寄附及びその他の収入』を記載するよう求めており、実際の支出額ではないものの記載は不必要。本来なら、選管が1回目の「30,000円」を抹消するよう指導すべきだったが、これを怠ったため、例のない収支報告になっていた。

杜撰な選管の事務管理
 問題は同市選管の杜撰な事務管理。いずれの報告書にも受理日を確定する「受付印」が捺されていない。公選法は、『当該報告書を受理した選挙管理委員会又は中央選挙管理会において、受理した日から三年間、保存しなければならない』としたうえで、『何人も、前項の期間内においては、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については、中央選挙管理会)の定めるところにより、報告書の閲覧を請求することができる』と規定しており、受理日の確定は必須。しかし、同市選管は、提出された選挙運動収支報告書に受理印を捺すことを怠っていた。

 武雄市選管は、出納責任者の宣誓欄に記された日付を「受理日」とみなすとしているが、報告書の作成日と提出日が必ずしも一致するとは限らず、この言い訳は通用しない。さらに、小松陣営の報告書がいつ提出されたのか分からない状況では、指摘を受けて「後出し」した可能性さえ生じる。報告書の確認漏れに加え、杜撰な事務管理……。収支報告自体の信ぴょう性に疑問符が付くのは当然だろう。

 なお、昨年春の市長選で樋渡啓祐前市長陣営が提出した選挙運動費用収支報告書にも同様の間違いが判明しており、こちらも17カ所の修正が行われている。



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