政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

武雄市タブレット端末教育事業 疑惑の機種選定(1)

2015年5月19日 09:45

武雄市役所 佐賀県武雄市が、市内の小中学校で実施しているタブレット型端末を使った教育事業。樋渡啓祐前市長による「改革市政」の目玉の一つだったが、実態はお粗末。情報公開請求に対する関連文書の隠ぺい、不良品続出の端末、業者選定への疑惑と問題点が次々に飛び出す有り様だ。
 事業の前段であるiPad関係の事業については、これまで報じてきた通り。次に、現在進行中の全小中学校向けタブレット型端末利活用事業について、その機種選定過程を検証する。
(写真は武雄市役所)

機種選定の流れ
 教育現場でのiPadを使った実証研究を進めていた武雄市は、平成25年になって事業の拡大を企図。市内11の小学校と中学5校の全児童・生徒にタブレット端末を使わせる方針を打ち出し、市長が機種選定を諮問する組織として大学教授らで構成される「武雄市ICT教育推進協議会」を設置して、東京と武雄市で複数回会議を開いていた。下が、協議会の顔ぶれだ。

武雄市 ICT教育推進協議会 委員名簿(案)

 協議会の最終答申を受けた市は、内部で最終的な入札を実施。iPad事業の中核業務を受注していたソフトバンクグループのエデュアス(旧・汐留管理)に新たな端末を発注していた。端末はiPadから恵安株式会社(東京都)の製品へと替わり、小学校向けに3,153台(KEIAN M716S-PS)、中学校向けには1,550台(KEIAN M1049S)を購入。恵安製タブレット端末の購入費用は、計2億1,869万6,236円に上っている。

 アップル社製の「iPad」から恵安株式会社(東京都)の「KEIAN M716S-PS」に替わったことで、OSは「ios」ではなく「Android(アンドロイド」に ―― 。それまでの実証研究の成果を無駄にしかねない選択の背景に何があったのか?機種選定の過程について、一覧表にまとめてみた。

武雄市 ICT教育推進協議会

 「武雄市ICT教育推進協議会」については次回以降の配信記事で詳述するが、全体の流れはどう見ても拙速。4月に第一回目の協議会を開いたあと、たった3回の会議で結論を出していた。しかも3回目は武雄市の委員だけで開催。座長を務めた大学教授を含め、在東京の委員たちは参加していない。2回目の会議で結論が出ていた格好だ。しかもこの時の協議会では、パナソニックの社員が、最終的に選ばれた恵安製タブレット端末の説明を行っていたことが分かっており、「恵安製タブレット」が規制事実化していた可能性さえある。

謎が残るiPadから恵安製タブレットへの変更
 不可解なのは、機種を具体的に提案するよう樋渡市長の諮問を受けたはずの協議会が、曖昧な形で答申を終えていたこと。OSについて「ios7以上」、「Android4,2以上」、「Windows8/RT」と定めただけで、機種の絞り込みを避け、武雄市に下駄を預ける形で最終答申を行っていた。

 最終的な機種選定の場となったのは、校長、教頭、教委職員2名、市職員、保護者代表、「ICTに関する有識者」2名の8名による「武雄市小学校タブレット端末購入に係る審査会」。プロポーザル方式の入札で、2社のうちから前述のエデュアスを選んでいた。

 武雄市ICT教育推進協議会の答申は、OSについてiosを含む三つの中から選択することを求めたもので、iosならiPad。平成22年から実施されていた小学校2校での実証研究も、iPadを使ったものだ。それがなぜiPadではなく、AndroidOSの恵安製タブレットに替わったのか ―― ?一連の流れや開示された文書からは読み取ることができない。

 下は審査会の委員名簿(黒塗りは武雄市)だが、8名の委員のうち「ICTに関した有識者」2名の職業及び氏名が黒塗り非開示となっている。保護者代表の氏名を非開示にするのは理解できるが、公費を投じた事業に関わった人物の素性まで隠すなど非常識。「ICTに関した有識者」を明らかにするよう求めたが、市側は18日現在、開示拒否の構えを崩そうとしていない。

武雄市小中学校タブレット端末導入選定委員

 「武雄市ICT教育推進協議会」のメンバーは全面開示となっており、民間人すべての職業、氏名が公表されている。一方で、肝心の「武雄市小学校タブレット端末購入に係る審査会」のうち、「ICTに関した有識者」は非開示。これでは、何か都合の悪い事実を隠しているとしか思えない。「ICTに関した有識者」とは、ソフトバンクグループとの間に利害関係を有する人物ではなかったのか ―― さらなる検証が必要となっている。

 ところで、機種選定の流れを精査するためには、どうしても必要な文書がある。計3回開かれた「武雄市ICT教育推進協議会」の議事録だ。しかし、開示された文書のなかには、7月12日に武雄市で開かれた第2回会議の議事概要と、8月7日に東京会場で開かれた会議の議事録しかない。武雄市側は「ない」と断言してきたが、他の議事録は本当に存在しないのか ―― 18日、念のため武雄市側に最終確認を入れたところ、とんでもない事態となった……。


>>広告・寄付のお願い
 



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲