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僭越ながら:論

安倍晋三とは何者か

2015年5月 1日 10:20

 米国を訪問した安倍晋三首相が、対米追従の姿勢を露わにした。日米首脳会談終了後の会見では、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設推進を表明。米議会上下両院の合同会議では、集団的自衛権の行使を含む安全保障法制の関連法案を、夏までに成立させると宣言した。沖縄の民意は無視。国会での議論も無視。これでは、米国が雇った行政官の帰国報告である。
 「戦後レジームからの脱却」を掲げ憲法改正に向けて突き進む安倍を、国士であるかのようにもてはやす向きもある。本当にそうなのだろうか……。

民意無視どこまで
 辺野古移設の推進も集団的自衛権の行使容認も、米国との関係を重視する安倍の政治姿勢に由来するものだ。実現のためには民意など無視。戦後70年かかって築き上げられた「平和国家」を、跡形もなく破壊しようというのだから、開いた口が塞がらない。

 米国まで行って改めて移設推進を宣言したことは、移設反対を訴える沖縄の民意を踏みにじる愚行だ。訪米前に行われた翁長雄志沖縄県知事との初会談では、知事から重ねて移設反対の意向を聞いていたはず。しかし、オバマ大統領に沖縄の声を伝えた形跡はない。沖縄の声を黙殺して他国に媚を売る政治家に、国を代表する資格などあるまい。

 安倍の民意無視は、もはや許容限度を超えたとも言える。安倍は行政府の長であって立法府の長ではない。安全保障関連法案の成立時期を米国の議会で明言したことは、単に我が国の国会を軽視しただけでなく、三権分立の原則を踏みにじったことを意味している。国会議員を選んだのは国民。「世論」も「国会」も軽んじる安倍の行為は、民主主義を否定する暴挙なのである。

見直すべきは日米安保条約の第6条
 米国にへつらう安倍の狙いは一つ。憲法改正に慎重な国内世論を黙らせるため、米国を後ろ盾にしようという魂胆だ。そのためには辺野古移設も解釈改憲も厭わない。主権者たる国民の声が安倍独裁でかき消される現状は、異常と言うべきだろう。そもそも、安倍を国士であるかのように持ち上げることこそ間違いだ。

 下は日米安全保障条約の条文。正式名称「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」には、前文とわずか10条の規定しか存在しない。

20120829_h01-01.jpg

 注目すべきは第6条。とりわけ次の一文だ。

日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 沖縄に12箇所、本土に9箇所の米軍主要施設・区域が設けられているのは、この一文に依拠している。ただし、国土の0.6%にしか過ぎない沖縄に、75%の米軍基地が集中しているのが現状だ。

 安倍は自身のホームページで、憲法についてこう述べている。「普通の国家であれば『わたし達は断固として国民の生命、財産、領土を守る』という決意が明記されるのが当然です」――それでは、他国の軍隊が好き勝手に基地を造ることを許す日本が、「普通の国家」と言えるのか?

 安倍はまた、現行憲法をGHQによる押し付け憲法だと決めつけ、だからこそ自主憲法制定が必要なのだと主張してきた。これはある意味“米国の否定”である。だが安倍は、米国主導で出来上がった憲法を、米国の後押しで改正しようとしている。明らかな自己矛盾。「恥知らず」と言っても過言ではあるまい。独立国家としての体裁を整えたいのであれば、先ずなすべきは日米安保条約第6条に異議を唱えること。憲法改正など、その次の相談だろう。

 「国士」とは、国家のために身命をなげうって尽くす人物のことだ。ならば「憲法改正」という私欲のために米国に追随する安倍が、国士であろうはずがない。ちなみに、私利・私欲から他国を利し、自国に害をもたらす人物のことを「売国奴」と呼ぶらしいが……。



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