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安保関連法閣議決定と「平和の党」の終焉

2015年5月15日 09:35

 安倍内閣は14日夕、与党内の合意を得て臨時閣議を開き、集団的自衛権の行使を可能とすることを明記した安全保障関連法案を閣議決定した。15日にも国会に提出される予定で、自・公両党の密室協議から国会を舞台にした論戦に移る。
 法案は、自衛隊法や武力攻撃事態法など改正が必要な現行法10本を一つにまとめた「平和安全法制整備法案」と、新たな恒久法で他国の軍隊への後方支援を随時可能にする「国際平和支援法案」の2本。両法案が成立すれば、一定条件下での集団的自衛権の行使が可能になるほか、他国軍の後方支援などで自衛隊の役割が飛躍的に拡大する。
 戦争に向けて突き進む安倍自民党政権だが、補完勢力としてこの暴挙を支えているのは、紛れもなく公明党。戦後70年をかけて築き上げた平和国家・日本の崩壊を前に、「平和の党」が終焉を迎えようとしている。

国民を愚弄する安倍と公明党
 昨年の解釈改憲による集団的自衛権の行使容認、次いで今回の安全保障法制。この国の根幹を大きく変える二つの閣議決定は、自民党と公明党による2党間協議の産物だ。戦争に向けて突っ走る安倍自民党に「歯止めをかける」と意気込んでいた公明党だが、気付いてみれば金魚のフン状態。あれこれ言い訳しているが、解釈改憲と集団的自衛権の行使を後押しした形であることにかわりはない。もはや公明党には、「平和の党」を名乗る資格などない。

 「平和の党」を標榜してきたその公明党。先月18日の「公明新聞」に、同党の主張が分かりやすい形で掲載されていた。「安保法制と公明党 Q&A」と題する記事。安全保障法制の内容を検討してきた「安全保障法制整備に関する与党協議会」の座長代理を務めた北側一雄副代表との一問一答で、その中の一節にはこうある。

Q 海外で戦争をするのか
A 全くの暴論。公明党が専守防衛の堅持を明確にさせた。海外で戦争する国になるという批判は全く根拠がない言い掛かりであり、暴論です。これは事実の歪曲であり国民の不安をあおる無責任な言動です。

 14日の会見で首相が語った「"戦争法案"などという無責任なレッテル貼りは全くの誤り 」と同じ趣旨だ。だが、「戦争」と「戦闘」――言葉は違えど人と人との殺し合いに過ぎない。現在、世界の紛争地域で起こっていることは、両者の区別がつなかいケースばかり。のこのこ日本が出ていけば、殺し合いに巻き込まれ、自衛隊員だけでなく、現地の民間人にも犠牲が出ることが必至である。「戦争」への懸念が広がるのは当然だろう。

 戦闘地域では前線、後方に関係なく敵の攻撃を受けるのが常識になっている今日、北側氏の答えや、安倍首相の「戦争に巻き込まれることは、絶対にない」(14日の首相会見)という主張こそ無責任。むしろ「虚偽」だと断ぜざるを得ない。安全保障関連法案の成立によって生まれ変わる自衛隊の姿を想像すれば、戦争への懸念が『暴論』などではなく、現実であることがはっきりする。集団的自衛権の行使が認められた場合の自衛隊は、こうなる。

  • 世界のどこにでも行ける自衛隊
  • 世界のどこででも武力行使ができる自衛隊
  • 他国間の武力衝突に、いつでも首を突っ込むことのできる自衛隊

 これは「自衛」のためではなく、「戦争」を遂行するための組織の姿。2本の法案に「平和」の二文字を加えて誤魔化してはいるが、安倍政権の安全保障関連法が目指しているのは、米・英の軍隊とともに戦うことのできる自衛隊なのである。公明党は、集団的自衛権の行使に一定の歯止めをかけたと自賛し、新3要件だの、国会での事前承認だのと言っているが、自民一強の時代にあっては、ただの言い訳。首相がゴーサインを出せば、なんでも可能になるのが現状だ。特定秘密保護法も解釈改憲も、そうやって実現してきたのではなかったのか。国会の歯止めなど、あてにできる状況ではなかろう。首相や北側氏の発言は、大多数の国民を愚弄していると言っても過言ではない。

虚しい「核廃絶」の訴え
 ところで、「平和の党」にしがみつきたい公明党が、声高に叫び始めたのが「核廃絶」。街頭演説など表面での活動で、決まって口にするようになった。支持母体である創価学会も、今年に入って主要各紙に下のような全面広告を出している。

創価学会

 安倍首相はかねがね、集団的自衛権の行使を容認することで、抑止力が高まると明言してきた。しかし、こちらが戦力を増強すれば、相手国もそれに応じて戦力を強化するのが常。そして、抑止力として最高の力を持つと見られてきたのが核兵器だ。集団的自衛権の行使容認によって、日本が戦争に巻き込まれる確率は極端に高まる。他国との紛争が相次ぎ、国家がより強い抑止力を望むようになった時、求められるのは「核」になるはずだ。安倍首相の目指す「戦争のできる国」に力を貸す公明党・創価学会は、そのことを理解していない。本気で核廃絶を訴えるなら、戦争への歩みを止めることが先だったはずだ。



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