佐賀県武雄市が市内の全小中学校で実施しているタブレット端末を使った事業について検証を進めるなか、市側が“不存在”と明言していた重要文書を、じつは保有していたことが判明。情報公開の際、意図的に抜き取られていた可能性が高く、同市の隠ぺい姿勢が末期的であることを証明する事態となった。
隠されていたのは、樋渡啓祐前市長がタブレット端末の機種などについて諮問する目的で設置された「武雄市ICT教育推進協議会」の議事録。選定過程を知るうえで不可欠の資料だったが、これまで武雄市が開示した公文書には一部の記録しか残されていなかった。(写真は武雄市役所)
不存在、一転
iPadを使った授業の実証研究を進めていた同市が、事業拡大にあたって採用したのが恵安社製のタブレット端末。市は計4,700台を購入しているが、機種選定過程は不透明。なぜ「ios」OSのiPadではなく「Android」OSの恵安社製に替わったのかが、最大の疑問だった。
機種選定過程を確認するため、選定にあたった「武雄市ICT教育推進協議会」についての記録文書を精査してきたが、東京と武雄で開かれた計5回の会議で議事録もしくは議事要旨が残っているのは3回分だけ。東京、武雄の第1回会議分についての議事録はなく、どのような議論が行われたのか、分からない状態となっていた。
議事録なしで、役所が説明責任を果たせるとは思えない ―― 最終確認のため厳しくその存在を問い詰めたところ、これまで「ない」と断言していた同市が、18日になって一部の議事録の存在を認めるという事態に……。HUNTERの抗議を受けた市教委は同日、平成25年4月15日に東京都内で開かれた第1回武雄市ICT教育推進協議会(東京会場)と、同月18日に武雄市役所で開かれた同協議会(地元開催分)の議事録2部を開示した。それぞれ2時間にわたった議論の内容が、詳細に記されている。
相次ぐ隠ぺい 信頼性ゼロの武雄市役所
なぜ隠したのか ―― ?武雄市側は「(当該議事録だけを)別にしていたため、気付かなかった」「単なるミス」と主張するが、行政機関の公文書は、事業についての一連の流れを時系列順にそろえ、ひとまとめにして管理するのが普通。一部分だけを別にすることなど、まずあり得ない。情報公開にあたって、意図的に抜き取ったと見られてもおかしくない状況だ。隠ぺいに関し、武雄市には前科もある。
タブレット型端末を使った教育事業の実態を検証するためHUNTERが行った情報公開請求に対し、同市側は当初「タブレット型端末のトラブル(故障・不具合)に関する記録」、「タブレット型端末導入までの過程がわかる文書」などの存在を否定。その後一転して存在を認め、開示。存在を否定した理由について市側は、『(トラブル報告は)市教委が保有していたが、請求の趣旨を間違えていた』、『(導入までの過程を示す文書は)市長部局にあったが、確認漏れだった』という子どもじみた言い訳を行っていた。
今回明らかになった議事録は、本来、市側が“全てを開示した”としていた「機種選定の過程がわかる文書」に含まれているはずのもの。頻発していたタブレット端末の故障・不具合、官業癒着が疑われるiPad教育事業の業者選定過程 ―― いずれも隠されていた「タブレット型端末のトラブル(故障・不具合)に関する記録」、「タブレット型端末導入までの過程がわかる文書」によって明らかになっていることから、隠ぺいの意図が失政隠しにあったことは明白だ。今回存在が確認された機種選定会議の議事録にも、これまで公表されてこなかった事実が記録されている可能性が高い。新たに開示された分を含む「議事録」が何を語るか――次稿で詳しく検証を行う。