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九電工の影 ― 福岡市人工島 疑惑の総合体育館整備事業(下)

2015年3月 5日 08:30

福岡市役所 福岡市(高島宗一郎市長)が市内東区の人工島(アイランドシティ)に整備を計画している総合体育館。土地代(約47億9,000万円)を含めて約180億円の公費が投じられる大型公共事業だが、今月から公募が開始される「PFI事業者」の選定をめぐって、市役所周辺で疑惑が囁かれる事態となっている。秋に選定される予定の事業者が、事実上決まっているというのだ。
 取材を進めたところ、複数の市関係者や建設業界の一部から、「PFI事事業者の選定は出来レース」「総合体育館整備事業を主導しているのは業者」といった証言が次々に飛び出す状況となった。事の真相は……。(写真は福岡市役所)

「事業は出来レース」の声
 総合体育館の整備地を人工島に定めた市は、平成25年に事業手法の検討を行い、PFI(BTO)方式の採用を決定。26年1月からPFI事業の実施方針を煮詰める作業を進めていた。そして先月、26年度補正予算案の成立で約47億9,000万円の用地取得にめどをつけ、今月にはPFI事業者の公募を開始する予定だ。

 そうしたなか、市関係者や建設業界から聞こえてきたのが、総合体育館に絡む“官製談合”の噂。今月開始のPFI事業者選定が「出来レース」(業界関係者)で、秋に決定されるはずの事業者が、事実上決まっているというのである。取材してみたところ、体育館整備事業の計画段階に関わった複数の企業が構成員となるPFI事業者が、最終的な落札者になる可能性があることが分かってきた。

 下は、平成24年以降に市が総合体育館整備事業を進めるために発注した業務委託契約の件名と、委託業者の一覧表だ。

委託業者一覧表

 整備予定地を人工島に決めたのが、市長も参加した平成24年1月27日の「市政運営会議」。市はこの年7月に、『拠点体育館の基本計画策定支援等業務』を「日本設計 九州支社」に発注し、同社の報告を受けて整備計画の概要を取りまとめ。翌年5月には別のコンサル業者に発注した『新たな拠点体育館整備に係る事業手法検討業務委託』の報告を参考に、同事業の整備運営をPFI(BTO)方式にすることを決定していた。

 次いで市は、平成26年1月から次年度にかけて『福岡市拠点体育館整備事業PFI導入可能性調査』(平成25年度分・26年度分)を「みずほ総合研究所」に発注。事業手法の検討や業者選定の実施方法について検討を行った。

 問題は、一連の業務委託と市内部での検討が行われる過程で、福岡市内のある企業と市が、非公式の「勉強会」(市関係者の話)を実施していた疑いがあることだ。

 その企業とは「株式会社九電工」。福岡を代表する電気設備業者だが、近年、PFI事業に注力しており、同社のホームページには次のように記されている。

≪長年にわたり、地域に密着した総合設備業として築き上げて来た経営ノウハウや技術力を活かし、公共事業の新しい社会資本整備手法であるPFI事業を提案し実績を積んでいます。≫

 九電工は、人工島に整備された「福岡市こども病院」のPFI事業者構成員になっているほか、以下のPFI事業で代表企業となっている。

・「大分市鶴崎総合市民行政センター整備事業」
・「大分市稙田総合市民センター整備事業」
・「九州大学(伊都)実験施設等整備事業」
・「熊本市総合保健福祉センター整備・運営PFI事業」
・「北九州市思永中学校整備PFI事業」
・「鹿児島市新鴨池公園水泳プール整備・運営事業」(同社HPより)

 PFI事業について、九電工が豊富な経験とノウハウを有しているのは事実。福岡市側が頼ったのか、あるいは九電工側が売り込んだのか――真偽のほどは定かではないが、「勉強会」が事実なら、PFI事業そのものに大きな疑念が生じる。なぜなら九電工は、総合体育館のPFI事業者に構成員として名乗りを上げる予定とされているからだ。そうなると「勉強会」とは名ばかり。官製談合の相談会だったとみられてもおかしくない格好だ。

 「勉強会」は事実なのか――確認のため、福岡市に情報公開請求を行ったのが先月29日。請求したのは「計画中の総合体育館に関し、九電工等と行われた勉強会や会議、打ち合わせ等の記録」である。そして今月2日、出てきた答えが下の「公文書非公開決定通知」である(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

公文書非公開決定通知

 「勉強会」が存在していなければ、“公文書不存在”で一件落着のケース。しかし福岡市は、『公文書の存否を回答するだけで、当該法人が関与している事実が明らかになる』から、非開示にするのだという。語るに落ちるとはこういうことで、市は、九電工の関与があったと認めたようなものだ。

 じつは、「勉強会」があったことを複数の市関係者が認めており、表面化すれば九電工が総合体育館のPFI事業者構成員になることは難しくなる。市としてはなんとしても真相を隠す必要があるが、嘘をついた後で勉強会の証拠を提示された場合はアウト。総合体育館の計画自体を見直す必要に迫られる。苦肉の策が前述の「非公開決定」なのであろう。

 市や建設業界の一部では、総合体育館整備事業のPFI事業者構成員として、九電工と組む大手ゼネコンや設計会社の社名が公然と囁かれる状況。設計には同事業絡みの業務委託を受注した会社が入るとも言われている。今年の秋、噂通りの組み合わせが出てくるようなら、計画から業者選定までが、すべて「出来レース」だったことになる。「人工島ありき」でスタートした巨大公共事業だが、これまでの動きを再検証する必要がある。

 ちなみに九電工からは、市長の資金管理団体が主催する政治資金パーティー「九州・アジア未来塾」に、幹部社員3人が参加していたことが分かっている。“李下に冠”のたとえもあるが……。



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