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福岡市人工島 疑惑の総合体育館整備事業(上)

2015年3月 4日 09:25

総合体育館 先月開催された福岡市議会で、市が人工島(アイランドシティ)に整備を計画している総合体育館の用地取得費約47億9,000万円を盛り込んだ平成26年度補正予算案が可決された。総合体育館の整備運営にはPFI(BTO)方式を採用し、今月中に事業者を公募する方針だ。土地代込みの事業費は約180億円。建設業界にとっては久々の大型案件である。
 そうしたなか、これまで人工島に整備された「こども病院」や、今年度開場予定の「新青果市場」といった大型施設同様、体育館整備事業に黒い疑惑が浮上している。(左はアイランドシティ完成イメージ。福岡市のHPより)

不透明な候補地選定経過
 そもそも、総合体育館の立地がなぜ人工島なのか、いまだに市民が納得する説明は得られていない。福岡市は、長年使用されてきた市民体育館が建設から40年を越え老朽化したことに加え、九州電力から無償貸与されていた九電記念体育館の借用期限が平成25年3月末で切れることなどを理由に、新たな拠点体育館の建設が必要と判断。平成22年から具体的な整備方針を検討してきた。

 HUNTERが市に情報公開請求して入手した文書によれば、同年7月に、拠点体育館のあり方を検討するアドバイザー会議(構成員4名)を設置。11月には民間の設計業者に「拠点体育館のあり方検討資料図作成業務」を委託し、概算事業費を報告書にまとめさせていた。アドバイザー会議はアリバイ作りの一環だったとみられ、平成22年7月28日に開かれたの第一回会議で、「新たな体育館を整備する必要がある」と結論付けていた。ただし、この時点では体育館の整備地が人工島に決まっていたわけではない。

 福岡市は、さまざまな候補地の中から人工島市5工区、九大箱崎キャンパス跡地、青果市場跡地、西部市場跡地の4か所に絞って検討したとしているが、なぜこの4か所になったかは判然としない。その後の経過を見れば、九大箱崎キャンパス跡地、青果市場跡地、西部市場跡地は“当て馬”だった可能性が高い。

 市として総合体育館の整備地を人工島に決めたのは、平成24年1月27日の「市政運営会議」。市民局が市長らに提示し、承認された「新たな拠点体育館の整備基本方針(案)」には、他の3か所への言及は一切なく、唐突な形で「アイランドシティの市5工区地区を整備候補地とする」と明記していた(下の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。市民局内部で、4か所の比較検討を行った記録はない。

総合体育館 整備候補地

 それでは、市が体育館整備地として人工島を最適と判断した理由は何だったのか――残された文書や市側の説明によれば、以下の理由が挙げられている。

1、4~5万m2の土地が確保できる
2、市の保有地であり平成27年度には着工が可能
3、人が集まるための交通利便性が優れている
4、中央公園やグリーンベルト(今後形成予定)といった周辺環境の良さ

 いずれもこじつけ。とくに「交通利便性」については酷いというしかない。市内の中心部から離れた場所でありながら、人工島には鉄軌道が通っておらず、公共交通機関といえばバスだけだ。一体どこから交通利便性が良いなどという考え方が生まれてくるのだろう。周辺環境にしても、近くにはコンテナターミナルがあり、行き交うのは大型トラックばかり。周辺環境が良いとは思えない。つまりは「人工島ありき」。こども病院、青果市場と同様の、不明朗な用地選定であったことは疑う余地がない。

 総合体育館の整備地を人工島に定めた市は、平成25年に事業手法の検討を行い、PFI(BTO)方式の採用を決定。26年1月からPFI事業の実施方針を煮詰める作業を進めていた。そして先月、26年度補正予算案の成立で約47億9,000万円の用地取得にめどをつけ、今月には事業者の公募を開始する。ここまでが総合体育館を巡るこれまでの経緯。順調に進んできたかに見えるが、裏には市と一部業者による癒着の実態があったとされる。キーワードは「PFI」である。

(以下次稿)



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