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佐賀県立高パソコン授業 優先された業者の利益(上)

2015年2月16日 08:40

委託契約書 わずか2年の実証研究を経て、平成26年度から県内すべての県立高校で、新入生徒全員にパソコン購入を義務付けた佐賀県。拙速としか思えない「先進的ICT利活用教育推進事業」のために、新入生家庭の2割に5万円の「借金」を負わせる形となっていた。まさに「はじめにパソコンありき」。杜撰な計画の裏には、生徒より業者の利益を優先する歪んだ教育の姿があった。
 佐賀県教委は、事業を進めるため2件の業務委託を行っていたが、契約を締結するまでの過程は、出来レースとしか思えない不明朗なものだった。

管理・運用業務入札 まるで出来レース
 前稿で紹介した通り、「先進的ICT利活用教育推進事業」のため、新たに締結された業務委託契約は次の2件である。

①「佐賀県学習用PC等管理・運用業務」
  契約金額:8,726万4,000円
  契約先:株式会社 学映システム(佐賀市)

②「先進的ICT利活用教育推進事業にかかるモデル指導資料作成等サポート業務」
  規約金額:2億952万円
  契約先:株式会社 ベネッセコーポレーション(東京都)

 まず①の「佐賀県学習用PC等管理・運用業務」。授業用パソコンを使用するにあたって発生するトラブルへの対応及びセキュリティ管理などを行う仕事だが、受託したのは、授業用パソコンの納入を一手に引き受けた佐賀市の「学映システム」という会社だ。その契約までの過程を、県教委が開示した資料に沿ってまとめた。総合評価方式による一般競争入札だったが、WTO政府調達の適用案件であったため、公告から入札までの期間設定などは守られていた。


 ・平成26年1月28日:入札審査委員会設置の決済

 ・2月6日:第1回審査委員会

 ・2月10日:予定公告(予算額 「88,344千円」と明示)

 ・2月17日:(株)学映システム、ニシム電子工業(株)佐賀支店、(株)佐賀電算センター、凸版印刷(株)の4社に参考見積り依頼

 ・2月21日:見積書提出〆切日。学映システム、ニシム電子の2社が見積書提出(学映システム88,009,200円、ニシム電子88,290,000円)。佐賀電算センターと凸版印刷は見積書提出を辞退。

 ・2月25日:入札公告(詳細)

 ・3月10日:参加確認申請及び質問受付〆切

 ・3月17日:入札参加通知及び質問回答

 ・3月18日:提案書提出期限。学映システムが1者応札

 ・3月24日:第2回審査委員会(予定価格88,149,600円)。業者決定⇒「学映システム」(契約金額87,264,000円)

 県教委が予定価格を算定するため、事前の参考見積りを依頼したのが学映システム。結局、同社が一者応札によって業務を受託していた。落札率は約99%。予算額が前触れされていたとに加え、事前見積りを行った業者が落札したのだから話は早い。厳しい入札競争があったとは言い難い実態だ。案の定、県関係者の間からは「はじめから学映さんに決まっていた」という声も――。

 問題は、学映システムが、この業務委託契約を結ぶ前に、平成26年度から実施される県立高校新入学生徒へのパソコン納入を一括して請け負う業者に決まっていたことだ。パソコンの保守管理は、機材の販売業者が責任を持つのが普通。学映システムが新入生6,579人(中途編入を含む)全員のパソコン納入業者に決まった時点で、「佐賀県学習用PC等管理・運用業務」の受託も同社になることが予定されていたと見るのが自然だろう。競争入札の格好だけ整ってはいるものの、出来レースだった疑いは否定できない。

疑惑の業者選定
 そもそも、パソコン納入をめぐる業者選定自体が胡散臭い。ここでもう一度、その経過を確認しておく。 
 佐賀県がICTを活用した教育に力を入れ出しのは平成23年度。この時は、選ばれた1校の中学校生徒全員に行き渡るようにタブレット端末(ウィンドウズ)を整備し、実証研究を始めていた。平成24年度には県立高校5校で実証研究。3校にiPad 、2校にウィンドウズを導入し、どちらの使い勝手がよいかを検証するというものだった。この時採用されたウィンドウズの価格(約8万円)が、後の参考になったという。ウィンドウズを使った2校は、それぞれの学校で入札を実施してパソコンの納入業者を決定していたが、260台を1,992万9,000円(1台あたり7万6,650円。4者による入札)で落札したのが他ならぬ「学映システム」だった。

 次いで平成25年12月、実証研究の結果、導入を決めたウィンドウズの端末1,856台を県内の高校向けに整備する。その内訳は次の通りだ。

 ・指導者用パソコン1,230台=賃貸借(リース):県内32校に配備
 ・生徒用パソコン626台=購入:県内3校に配備

 おかしくなるのはこの辺りから。業者選定は入札によるものだったが、なぜか学映システムによる「一者応札」。その結果、リース契約となる指導者用(教員用)パソコンは、1台あたりの価格が約9万5,000円、「購入」分である生徒用パソコンが、1台あたり7万5,400円で契約されていた。(下がその入札結果表)

入札結果表

 「一者応札」について、佐賀県教委側は昨年「パソコンのスペックが高すぎたため、他の業者が応札に消極的になったのではないか」と話していた。しかし、HUNTERの取材に応じた県外の業者からは、「あり得ない。億単位の取り引きなら、喜んで応札する。佐賀県が示した仕様書を見る限り、入札を見送るほどの条件はない」といった声も。「一者応札」になった背景に不透明感が漂う状況となっていた。

売上保証の「協定書」
 パソコン納入をめぐっては、「疑惑」を想起させる文書の存在も明らかとなっている。前述の「一者応札」が行われた折の「仕様書」には、次のように明記されていたのである。

≪平成27年度以降も、毎年4月に新入生が新たに学習用PCを購入する予定であるが、新たに購入するにあたって、特に支障がない場合は、数年間、今回の納入業者と販売に係る協定を結ぶこととする≫(下がその仕様書。赤い囲みはHUNTER編集部)

学習用PC購入契約に係る仕様書

 驚いたことに、実証研究用パソコンの契約を受注した学映システムに、今後数年間、無条件で新入生にパソコンを売る仕事を保証する内容となっていた。競争の原則を役所が放棄した形で、業者への便宜供与ととられかねない格好だ。

 一昨年12月に実施された入札は、単に実証研究用パソコンの納入業者を決めるというだけではなく、その後数年間の「利権」を独占する業者を選定するためのものだったことになる。県教委は、この仕様書の記述に基き、同年12月27日に業者と「佐賀県学習用PC販売に係る協定書」を締結している。

 「先進的ICT利活用教育推進事業」によって学映システムにもたらされた売り上げは、次のようになる。

・平成24年度:実証研究用パソコン260台 1,992万9,000円
・平成25年度:実証研究用パソコン1,856台 約1億7,600万円
・平成26年度:新入生用学習用パソコン6,579台 約5億6,000万円
・   同    :「佐賀県学習用PC等管理・運用業務」 8,726万4,000円

 約8億4,000万円。さらに今後数年間、パソコン販売と業務委託で毎年6億円以上の売り上げが保証されたも同然だ。年間売上げが、約15億円から19億円台だった同社にとっては、まさに宝の山だろう。だが、「一者応札」、「利権を保障する協定書」……不明朗というより、疑惑と呼ぶべき事態かもしれない。

 それでは、ベネッセコーポレーションが受託した「先進的ICT利活用教育推進事業にかかるモデル指導資料作成等サポート業務」の入札過程はどうだったのか――。調べてみると、ここでも生徒を置き去りにした歪んだ教育行政の姿が浮かび上がった。

(つづく)



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