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戦後70年「首相談話」の行方

2015年2月20日 09:50

官邸 “また北岡伸一”か、というのが第一印象である。19日、菅義偉官房長官が記者会見で、戦後70年を迎え安倍首相が出す予定の首相談話について、検討を行うための有識者懇談会のメンバー16人を発表した。
 集団的自衛権の行使容認あたって設置された、首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)ほど極端な右寄りメンバーばかりではなさそうだが、座長代理は安保法制懇の時と同じ北岡伸一国際大学学長。集団的自衛権の行使容認に道を拓いた最大の功労者といわれる人物の再登場で、首相談話の行方が決まったも同然の形となった。(写真は首相官邸)

侵略の歴史、認めぬ首相
 安倍首相は先月25日、NHKの「日曜討論」に出演。戦後70年にあたって発表する予定の首相談話について、「歴代政権の談話を全体として引き継ぐ」としながら「今まで重ねてきた文言を使うかどうかではなく、『今まで使ったことばを使わなかった』、あるいは『新しいことばが入った』というこまごまとした議論にならないよう、70年の談話は70年の談話として新たに出したい」と明言した。“これまで使った言葉”とは、「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」といった過去の談話のキーワードを指している。

 「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」といったキーワードは、平成7年8月15日に当時の村山富一首相によって出された村山談話(「戦後50周年の終戦記念日にあたって」)、さらに平成17年8月15日の小泉純一郎首相(当時)による総理大臣談話でも使われており、いわば歴代政権が真摯に歴史と向き合ってきたことの証し。国際社会からも一定の評価を得てきた言葉を、安倍首相は否定的にとらえているのである。これらの重要なキーワードを入れるか入れないかの話を『こまごまとした議論』と切って捨てた首相に対し、中・韓はもとより、欧米諸国からも懸念の声があがったのは言うまでもない。

またしても「北岡座長代理」
 そうしたなか、19日に発表されたのが首相談話を検討する有識者会議のメンバーである(下が公表された名簿。官邸HPより)。

21世紀懇

 菅官房長官によれば、“20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会”として、『21世紀構想懇談会』を設置したのだという。座長には、西室泰三・日本郵政社長をあてるというが、実質的に議論をリードしていくのは座長代理になる北岡伸一・国際大学学長とみられている。

 北岡氏は、集団的自衛権の行使容認あたって設置された首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)でも座長代理として議論のとりまとめを行っており、昨年5月に出された報告書は、集団的自衛権の行使容認に踏み切った安倍首相の拠りどころとなっていた。議論不足を指摘された首相は、「国会や法制懇で議論した」と答えている。

鮮明になる「美しい国」
 お友達を集めて会議をやらせ、国民的議論と同等に扱う安倍のあつかましさ……。首相談話について検討する今回の「21世紀構想懇談会」も、右派を代表する北岡氏の再登場で、安倍カラー満載の結論を出すことが確実。おそらく、「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」といった歴代政権が大切にしてきたキーワードをばっさりと切って捨てるだろう。

 21世紀構想懇談会のメンバーを発表した19日、政府は、日本周辺有事における米軍への後方支援を定めた周辺事態法を改正し、「周辺」という地理的な制約をなくしたうえで、新たに恒久法を制定し、米軍以外の軍隊にも支援展開できるようにする方針を固めた。自衛隊の活動範囲が広がることで、戦争に巻き込まれる危険性が増大するのは言うまでもない。

 侵略戦争の歴史を否定し、武力行使の拡大を狙う安倍政権……。「美しい国」の正体が、ますます鮮明になってきた。



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