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「自民一強」 ― じつは虚像

2015年1月30日 10:05

自民党 イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」の蛮行に国内外が揺れるなか、第189通常国会が始まった。補正予算案、さらには新年度予算案の審議が行われるほか、経済、安全保障、農協改革などの重要課題が論戦の対象となる予定だ。
 政治不信の加速が懸念される昨今、国会での活発な論戦を期待したいところだが、現実はかなり厳しい。数の力にモノを言わせる安倍政権の前に、野党の迫力不足が際立つ状況で、はやくも消化不良の国会となっている。
 たしかに与党の議席数は圧倒的だが、実態はどうなのか――改めてここ10年間の各党の「得票」を確認してみると、さほどでもない自民党の姿が見えてくる。

自民圧勝だが得票は減
 自民一強といわれるなか、野党第一党の民主党は岡田克也氏を新代表に選んだが、影の薄さは相変わらず。支持率が上向く気配さえない。他の野党も存在感を示しきれておらず、相対的に安倍首相のパフォーマンスが目立つ格好となっている。いびつな政治状況が、偏狭なナショナリズムを増長させる一方だ。

 調子に乗った安倍首相の政権運営手法は、まさに独裁。特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の行使容認では、国民の過半数とみられる反対意見を黙殺。沖縄では、知事選はじめ4度の選挙で示された「辺野古移設反対」の結果が一顧だにされず、政権はこれみよがしに移設作業を進めている。この国に、民主主義など存在していない。

 首相は、衆院選で勝ったことで「白紙委任」を受けたとでも思えっているのだろうが、盤石にみえる自民党政権も、数字の上では脆弱な支持しか得ていないことが分かる。過去5回の衆院選における政党別得票数をみると、必ずしも自民党への支持が固まっているわけではない。平成15年、17年、21年、24年、26年に行われた衆議院議員総選挙。毎回800~900万票を得て数字に変動が少ない公明党や離合集散を繰り返す他の野党を除き、自民、民主、共産の小選挙区と比例区の政党別得票数をまとめた。

小選挙区、比例区 得票数

 まず共産党。小選挙区では、政権交代が実現した平成21年の選挙で民主党に食われた形となって得票を減らしたものの、比例区では安定した戦い。自民が政権を奪い返した平成24年の選挙では、小選挙区で反自民の受け皿となって盛り返し、昨年暮れの総選挙では小選挙区700万票、比例区600万票を獲得して躍進した。軸がぶれないことが強みとなっているのは確かだ。

 民主党の得票数は同党の不安定な状況を如実に表している。平成15年、17年と小選挙区での得票を伸ばしたが、17年は小泉郵政選挙。上がった投票率の分だけ自民党に流れ、113議席しかとれなかった。次いで24年、政権交代への期待感に乗って小選挙区で圧勝。3,347万票という、結党以来の最多得票でピークを迎えた。この時の比例票は2,984万票だ。

 ところが、幼稚な政権運営に愛想を尽かされた平成24年の選挙では、小選挙区で前回の約三分の一となる1,359万票。比例区も2,000万票減らして960万票へと激減し、少数野党へと転げ落ちた。昨年の総選挙ではわずかに議席を増やしたものの、候補者不足から小選挙区でさらに票を減らし(1,191万票)、低落傾向に歯止めがかからない状況だ。出直しに向けて最大のチャンスとなるはずだった今回の代表選では、安定路線ともいえる岡田氏を選出。昔の顔の再登場に、期待感は一気にしぼんでしまった。

 一方、「一強」といわれる自民党。平成21年の選挙で民主に政権を奪われた時の小選挙区の得票は2,730万票。比例区は1,881万票だった。そして平成24年、意外なことに、小選挙区で200万票減らして2,564万票、比例区でもやはり200万票減の1,662万票にとどまりながら、294議席を獲得して政権を奪い返したのである。

 票を減らしながら議席が急増するという不可解な現象が起きた最大の要因は、投票率が69%台から59%台へと下がったこと。じつは自民への支持が増えているわけではない。昨年の師走選挙でも圧勝してはいるが、自民への小選挙区の票は2,546万票。24年から20万票あまり減らしている。比例は何とか100万票増やしたが、1,765万票。これとて政権を失った時の1,881万票にさえ届いていない。自民党は、民主党に政権を奪われた平成21年の選挙の得票を、小選挙区、比例区ともに上回る結果を出せておらず、民主同様、長期低落傾向にある。議席数では「一強」だが、俯瞰してみると弱体化しているのが現実なのだ。

「自民一強」は虚像
 大手メディアが喧伝したため、「自民一強」の刷り込みが進んだ。その結果が、安倍の強権政治であり「民意無視」だ。しかし、得票の推移を見れば、国民が安倍政権に絶対的な支持を与えていないのは明白。むしろ、固定票も減りつつあるというのが実情である。こと「得票数」に限っては、虚像がひとり歩きしていると言っても過言ではあるまい。

 安倍政権が進めてきた経済政策アベノミクスは、地方に何の恩恵ももたらせないまま賞味期限を迎えつつある。持てる者と持たざる者の格差は、自民党が選挙に勝っても拡大するばかりだ。さらに政権は、原発推進、農協改革、法人税減税といった大企業が喜ぶ政策メニューの実現に力を入れており、集団的自衛権の行使、憲法改正といった亡国への歩みも速度を増している。まさに「暴走」。しかし、止めるための方策は、各党の得票推移をみれば瞭然だろう。

 信頼できる受け皿さえあれば、有権者は動く。政策的には、安全保障や原発で明確な対立軸を打ち立てることが絶対条件だ。自民党の暴走を止める手立ては、ある。それが既成政党によって可能なのかどうかは分からないが……。



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