福岡市の高島宗一郎市長が、広報・宣伝費を使って報道をコントロールする意向を示していたことが、複数の市関係者の話から明らかとなった。
市長は、広報・宣伝費を増額させる過程で、「広告を出しておけば、(報道を)抑えることができる。民間だってやってるでしょう」などと発言。その後も同様の発言を繰り返し、「報道はコントロールできる」と自信を示していたという。
証言を裏付けるように、福岡市が記者クラブ加盟社に支出する広報・宣伝費は、高島氏の就任後に急増。毎年4,000万円台だった契約金額が最高で9,000万円台にまで伸びていたことがHUNTERの調べでわかっている。
高島氏に批判的な報道は影を潜めており、税金による報道支配で歪んだ市政の実態を隠ぺいしている状況だ。
広報戦略室
複数の市関係者が明かしたところによると、高島市は就任から間もなく、市の広報体制を大きく変えることを指示したという。具体的には、新組織創設と「広報戦略アドバイザー」の就任。市長室直轄で新たに「広報戦略室」を設け、その中に情報発信に関係する総合的な企画及び調整を行う「広報戦略課」、市政だより、市ホームページ等による広報、公衆無線LANの環境整備にあたる「広報課」、記者発表、報道機関との連絡調整を担当する「報道課」を置いた。
広報戦略室のトップは室長だったが、高島市長が就任した直後の平成22年12月に市長の友人で広告代理店を経営していた会社社長を市顧問に任命、広報戦略アドバイザーのポジションにつけた。広報戦略室は、実質的にこの市顧問が決済の最終決定権を握っていたとされる。
また、同顧問は10件にのぼる市発注業務委託の業者選定に、選定委員もしくは選考委員として関与。その大半が、顧問が経営する会社の同業者を対象とした業者選定だったことや、懇意にしている企業が数回にわたって業務を受注していたことが分かっている。
税金使った自己保身
広報戦略室を設置した市長が次にやったのが広報・宣伝費の増額。予算化にあたっては、「広告を出しておけば、(報道を)抑えることができる。民間だってやってるでしょう」と発言。ことあるごとに同趣旨の発言を行い、「報道はコントロールできる」として、自信満々の様子だったという。市長の発言内容について、複数の市関係者が認めており、傲慢な態度に違和感を覚えたと話す職員もいる。
市関係者の話が事実なら、市長が税金で報道をコントロールするという意思を持っていたことは明白。実際に市の広報・宣伝費が急増していることや、高島市政に批判的な報道が影を潜めていることを考えると、市長の思惑通りの展開。税金を使って自らの保身を図った形で、公益とは無縁の予算消化が続くという異常な事態だ。
福岡市は月2回(年23回。1月15日号は休刊)、市政の重要施策や関連施設の行事予定を掲載した広報紙「市政だより」を発行、市内全世帯と希望事業所に配布している。情報入手が購読者に限られる新聞と違って、だれもが無料で市政情報を入手できる仕組みだ。毎年この事業に億単位の予算が計上されており、新聞を使った広報・宣伝は「市政だより」の存在感を薄めるだけの無駄。特定のメディアだけを優遇するのも、税金の使い道としては不適切だろう。
歪む市政と記者クラブ――政令市福岡の病状は重い。