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裁判所「所持品検査」フリーパス 司法記者クラブに資格はあるか?

2015年1月15日 09:20

裁判所 今月5日、福岡市中央区にある福岡高裁・地裁・簡裁が入る合同庁舎で、来庁者への所持品検査が始まった。
 裁判所の所持品検査自体は、東京、札幌などの先行例があるが、福岡では特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)幹部の刑事裁判が始まることから、不測の事態に備えるためともみられている。
 高齢者や簡裁利用者にとっては随分と不便な話なのだが、問題は他にもありそうだ……。

入庁前に厳しい検査
 福岡の裁判所で行われている金属探知機等を使用した検査は、空港で実施されている方法とほぼ同じ形で持込み品のチェックを受ける仕組みだ。取材のため裁判所を訪れた記者が、実体験した。

 まずゲート型の探知装置をくぐり、ブザーが鳴ると身体全体を小型の探知機でくまなく調べられる。所持品はゲート前ですべて体から離して預け、それを警備担当者が別の探知装置に通す。危険物の存在が疑われれば、バッグの中まで調べられ、はさみ、カッター、カミソリなどの刃物を所持していた場合は、退庁まで裁判所が預かるのだという。

手荷物検査実施中

 暴力団絡みの事件が審理される予定のである以上、やむを得ない措置だと思うが、まじめな利用者にとっては不便なことこの上ない。裁判所のホームページ上にあるお知らせにも出ているが、時間帯によっては入庁までにかなりの時間を要することになるのだ。とくに、様々な裁判の開廷が集中する午前9時半から同10時半、午後零時半から同1時半までの時間帯は混雑が予想されるといい、善良な市民とりわけ高齢者には厳しい待遇となる。

記者クラブの特別待遇に疑問
 司法関係者や市民の安全を守るためには致し方ないと諦めるしかあるまいが、どうにも納得できない「例外」がある。裁判所側に尋ねたところ、所持品検査をパスして入庁できるのは、まず裁判官、次に検察官、弁護士、裁判所職員だという。こちらから言い出すまで出てこなかったが、じつは「司法記者クラブ」所属の記者もフリーパス。民間人では唯一といっていい「例外」なのである。記者クラブ側は、“大手メディアの記者なら当たり前”と思っているのだろうが……。

 記者クラブは、国や地方自治体、業界団体ごとに「一般社団法人 日本新聞協会」加盟社(新聞104社、通信4社、放送23社が加盟)及びこれに準ずる報道機関から派遣された記者によって構成される組織だ。同協会は、「日本新聞協会編集委員会の見解」(2002年1月17日、2006年3月9日一部改定)の中で、こう述べている。

《記者クラブは、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される「取材・報道のための自主的な組織」です》

 記者クラブにいるすべての記者がジャーナリスト――?冗談にもほどがある。リークもの、発表ものが幅を利かす大手メディアの報道内容を見る限り、「ジャーナリスト」が書いたと思える記事は数えるくらいしかない。記者クラブが存在感を示した事例は皆無。裁判所でフリーパスを許されるだけの報道を、司法記者クラブが担ってきたとも思えない。

 記者クラブを特別扱いするのは、霞が関から地方自治体まで同じだ。霞が関は特にひどく、クラブ加盟社以外の取材であれば電話対応しか受け付けず、中に入れようともしない役所ばかり。地方地自体の記者クラブは、首長会見において他のメディアに発言を許さないケースが多く、事実上締め出しているのが実態だ。日本で一番閉鎖的なのが「記者クラブ」なのである。

 その結果、取材する側とされる側の間に緊張感が失せ、違う新聞の紙面を同一のネタが飾るという滑稽な状況を招いている。権力の監視を使命とする報道機関が、権力側に取り込まれた格好だ。出てくる記事に独自性はなく、権力側への厳しい追及は影を潜める。司法記者クラブも同じなのだ。

 福岡の司法記者クラブに対しては、ある思い出がある。2012年7月、読売新聞の記者が、福岡県警の警察官から得た捜査情報を、メールで他社の記者たちに誤送信するという「事件」があった。取材源の秘匿という大原則を大きく踏み外した結果、読売は記者を退職させ、幹部社員にも重い処分を下している。取材メモの誤送信を受けたのは司法記者クラブ所属の記者たちだったが、彼らは、なぜかその事実を記事にしなかった。仲間内のこととして、不問に付したのである。この時点で報道失格。そういう彼らがジャーナリストであるはずがない。

 特別待遇に応えるだけの記事を書け!僭越ながら、そう申し上げておきたい。もちろん、他の記者クラブの記者たちにも。



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