腐っているとしか言いようのない福岡市だが、その実態を知らない市民の方が多い。新聞、テレビが何も報じていないからだ。
ここ数年、福岡市政記者クラブの「不作為」は目に余る。高島宗一郎市長の1期目の4年間、市政記者クラブに所属する記者たちが、独自の調査報道で高島市政の実情を報じたケースは皆無。HUNTERで報じたことが議会で取り上げられ、それを申し訳程度に記事にするといった状況が続いている。新聞に掲載されるのは、市役所の発表ものばかり。権力を監視するために設置されているはずの「記者クラブ」が、サロンと化している。
記者たちは、なぜ醜悪な市政と対決しないのか?
メディアの弱体化
政治家の民意無視と報道の弱体化は、表裏一体の関係だ。例えば安倍政権による集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法の制定といった暴走の裏には、無批判で安倍を応援する読売・産経の存在があった。朝日は、従軍慰安婦と吉田調書をめぐる誤報問題を受けて萎縮する一方だ。また、昨年暮れの衆院選の折には、自民党の圧力に屈したテレビ各局が政権批判を手控え、盛り上がりを欠く選挙となったことが記憶に新しい。
もともと権力志向である読売・産経は別として、メディアが力負けするのには様々な原因があろう。権力側を怒らせてリーク情報を拾えなくなることへの恐怖、サラリーマン化した記者の力量低下、記者クラブという予定調和の世界で既得権益にしがみつく姿勢……。例示しだせばきりがないが、大手メディア―とりわけ新聞には、「経営」という最大の弱点があることを忘れてはならない。そこを衝かれたらどうなるか……。
高島市政で急増した広報・宣伝費
昨年6月、市の関係者から、「広報・宣伝費の推移をみれば、新聞が高島市政の実態を報じない理由が分かる」という指摘を受けた。市政トップの不行跡や失政について、ほとんど報じることのない福岡市政記者クラブ。あり得る話だと考え、年末になって市への情報公開請求を行った。入手した文書を基に作成したのが下の一覧表。平成22年度から今年度途中までの、市が報道各社に委託した「広報・宣伝」に関する契約とその金額である。市と報道各社との距離感を測るうえで、参考になるデータとなった。
福岡市が支出した広報・宣伝費は、平成22年度の約4,300万円から23年度には約6、400万円に上昇、24年度には約9,200万円にまで伸びていた。25年度は落ち着いた形となっていたが、市長選が行われた26年度には再び急増、8月初旬までの4か月間に6,000万円を突破しており、過去最高だった24年度同時期(4~8月)の額を上回っている。
高島宗一郎市長の初当選は平成22年12月。従って予算面に高島氏の考えが反映されるようになったのは、平成23年度からということになる。同年度からの広報・宣伝費の急増、さらには選挙年の異常な支出額――。税金で報道をコントロールしようとする市長の意思が働いた可能性が高い。実際、市政記者クラブに加盟する新聞各社の紙面に厳しく市政を批判する記事は見あたらず、発表モノばかりが並ぶ状況だ。“書かない、報じない”が暗黙の了解になっているとしか思えない。次稿で、さらに詳しく分析してみたい。