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霞む原発、オスプレイ ― 佐賀県知事選における大手メディアの歪んだ報道

2015年1月 6日 08:45

激突・激戦 異例の「年またぎ」となった知事選挙を巡り、大手メディアの歪んだ報道が相次いでいる。
 任期途中で県政を放り出し、衆院議員に転身した古川康前知事の辞任を受けた佐賀県知事選挙。12月25日に告示され、正月をはさんで1月11日に投開票されるという、有権者無視の日程だ。
 県政トップの座を争っているのは、届け出順に飯盛良隆(44)、樋渡啓祐(45)、山口祥義(49)、島谷幸宏(59)の4氏。同県には、県民の将来を左右する重要な県政課題があるはずだが、大手メディアはことさら「政権VS農協」の構図を浮き立たせ、争点ぼかしに精を出している。
(右、西日本・朝日の6日朝刊より)

大手メディア主導で「政権VS農協」の構図に
 知事選の告示以来、新聞各紙がこぞって書きたてているのは、首相官邸と農協による対立の図式。古川氏が後継指名した前武雄市長の樋渡氏を官邸サイドが、元総務官僚の山口氏を、農協の政治組織「佐賀県農政協議会」(県農政協)が支援しているからだ。農協は、安倍政権が進める農協改革に反対の立場であり、自公推薦の樋渡氏を知事にするわけにはいかない。加えて樋渡氏に批判的な佐賀市をはじめとする県内自治体の首長の多くが山口氏支持でまとまっており、一騎打ちの構図が出来上がってしまった。大手メディア主導で知事選の構図が定まった形だが、こうした報道の在り方には嫌悪感を覚える。

 佐賀県政が抱える重要課題といえば、どう見ても玄海原発(佐賀県玄海町)再稼働と新型輸送機オスプレイの佐賀空港配備。古川前知事が任期途中で国政転身を図ったため積み残されてしまったが、いずれも県民の生命・財産に直結する問題だ。農協が勝つか、政権側が勝つかなどという次元の低い話とは訳が違う。しかし、告示以来の新聞報道は、どれも冒頭や下の写真にある通り、「政権VS農協」に焦点を絞って、有権者を煽り立てている。

佐賀県知事選

 11日の投開票を前に、その傾向はエスカレート。6日の朝日新聞朝刊の記事(冒頭写真)には「原発」「オスプレイ」は1回も登場せず、西日本新聞朝刊の記事(同)では立候補している島谷氏の主張として申し訳程度に「原発再稼働反対」と書いてあるだけ。オスプレイは影も形も見えない。どちらが勝っても、原発は動き、オスプレイは佐賀空港に配備されるが……。

 樋渡氏も山口氏もしょせんは元総務官僚。当然、原発再稼働やオスプレイ配備には賛成の立場で、この二つの重要課題については、多くを語っていない。原発やオスプレイに慎重な意見が多数を占めるなか、マスコミ報道が偏ったため、官邸と農協の代理戦争ばかりが目立った格好だ。有権者が望んでいるはずの論戦は、すっかり霞んでしまった。佐賀県にとっての最大の争点を葬り去ったのは、大手メディアの報道姿勢だと言っても過言ではあるまい。

報ずべきは……
 報道が県民に対して提起すべき問題は、ほかにもあったはずだ。古川、樋渡、山口――知事選に絡む人物はすべて総務省の官僚あがり。樋渡氏が任期を3年半の残して辞任したため5日に告示された武雄市長選には、これまた総務省出身の新人が、樋渡氏の後継指名を受けて立候補している。地方の時代と言われて久しいが、佐賀は明らかに逆行。県内の自治体トップを、総務省の役人がたらい回ししている現状について、疑問を呈するべきであろう。

 年またぎの知事選となったのは、6か月の任期を残していた古川氏が国政転出を図ったことが原因だ。古川後継となった樋渡氏に至っては、3年半もの任期を残して武雄市政を放り出している。官僚出身首長の無責任さについても厳しい批判を行うべきだったが、識者らの声を拾うばかりで、独自に論陣を張ったメディアは皆無。佐賀にはジャーナリストが不在ということらしい。

 報道は“面白ければいい”というものではあるまい。「政権VS農協」といった勝負の帰趨が、佐賀県民にとってそれほど重要とも思えない。原発やオスプレイについての論戦が低調になったのは、明らかに報道機関の責任。大手メディアの歪んだ報道が、佐賀の民意を踏みにじろうとしている。



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