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伊藤鹿児島県知事の二枚舌

2015年1月26日 09:30

鹿児島県知事会見 九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働をめぐり、多くの反対意見を無視して「合意」の判断を下した伊藤祐一郎鹿児島県知事。民意を無視する独裁的手法には批判が多く、一昨年には50年間で2例目となる知事へのリコール運動を起こされた。それでも、傲岸不遜な態度は変わらない。今月5日、定例会見に臨んだ知事は、県民の生命・財産に直結する「原発」についての記者団の質問に対し、『正月早々そういうのにお答えする気持ちはほとんどない』と発言。最後は、原発に関する質疑を一方的に打ち切るという暴挙に及んでいる。
 その伊藤知事、同日の会見で、かつて自らが話した内容をすっかり忘れたかのような答弁を行い、独裁者にありがちな姑息な姿勢を露わにした。

法律順守明言したが…
 5日の会見、民間企業が同県湧水町で計画している産業廃棄物最終処分場の設置許可を出したことについて聞かれた知事は、次のように答えた。

 産廃の仕組みは、法律がありますが、その法律の中で産廃の設置自体についての我々の判断は、いわゆる自由裁量ではなくて、規則裁量になっています。一定の条件を満たしたら許可しなくてはならないことになっています。そういう意味で、県としてはきちっとした手続きを踏んできちっとした内容であれば、それについてはああいう形で判断せざるを得ないというのが現在の法体系ですね。

 “一定の条件を満たしたら、許可しなくてはならないという法律の仕組みに従って判断した”と言うのだが、一体どの口が言わせているのか……。かつて知事は、その法律を無視して国から厳しい指導を受けるという、真逆のことをやっていたのである。

国に指摘された違法性
 平成24年1月、環境省は、鹿児島県が民間企業から提出された管理型産業廃棄物最終処分場の許可申請を長期にわたって放置したことを違法(不作為)であると認め、速やかに処分を行うよう命じる「裁決」を下した。

 環境省に審査請求を行なっていたのは宮崎県に本社を置く九州北清株式会社。同社は、平成19年ころから、鹿児島県姶良郡湧水町に埋立容量40万6,000㎥の管理型最終処分場の建設を計画。県と協議を重ね、平成21年6月から7月にかけて設置許可申請に必要な産業廃棄物処理施設設置許可申請書」や「処理施設設置等事前協議書」を提出したが、県は次第に態度を変え、平成22年3月には一方的に協議を打ち切られていた。

 九州北清側の話によると、平成19年ころから処分場建設について県と協議を開始し、平成21年春には、処分場予定地にある自治会への説明会も終了。県が処分場設置の条件としている「公害防止及び生活環境の保全に関する協定書」も締結済みだったという。九州北清は、この時点で産業廃棄物処理施設を設置する場合の手続きについて「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」や県が定めた規定に従ってすべての作業を終えており、今月5日の会見で知事が述べた『一定の条件』は満たされていた。処分場建設の許可申請を黙殺された九州北清が、環境省に対し審査請求。同省が「裁決」のなかで企業側の主張を全面的に認めたのである。

 平成24年4月、九州北清が計画する湧水町での処分場整備の見通しについて聞かれた知事は、こう語っていた。

 ただ、これは地元住民の反対等非常にいろんな問題がありますので、簡単にできる施設ではありません。ですからついうっかり事業を進めると、かえって社会全体が混乱して何も進められないというような状況になる、そういう性格も十分持っているかと思いますが、民間の方も地元住民の合意の下に一定の地域振興策を図りつつ、必要な施設としてそういう施設を整備されるということであれば、それはそれで結構なことかと思います。

 次いで、環境省の裁決についてさらに聞かれた知事は、国を無視した暴言を吐いている。

 国は国で勝手にいろんなことを言うのです、現在の法体系の中で。何もしていないので何かやりなさいということ。丁寧に今後、先ほど言いましたように意見交換から入るのかなというのが今の認識です。

 許可を出さずに国から違法性を指摘されると「国が勝手なことを言う」、許可を出したら「法律に従った」――じつに身勝手な言い分だ。二枚舌の理由は、自らが主導した公共関与型産廃処分場の整備計画にあった。

二枚舌の背景
 九州北清の処分場整備計画が表面化した頃、知事が、原発立地自治体である薩摩川内市に計画していたのが産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」だ。鹿児島県は、平成18年から県内に公共関与の管理型最終処分場の建設を進める方針を固め、平成19年には県環境整備公社を事業主とする処分場を薩摩川内市川永野地区に建設することを決めた。これまで度々報じてきたとおり、建設地決定の過程は不透明で、地場有力ゼネコン「植村組」グループへの便宜供与だった疑いさえある。さらに、薩摩川内市では、処分場建設に反対する地元住民らを多数の県職員を動員して弾圧したり、反対派の精神的支柱となっている高野山真言宗の「冠嶽山鎭國寺頂峯院」を宗教法人の許認可権をちらつかせ恫喝するなど、およそまともな行政機関とは思えぬ強権ぶりを示して、強引にエコパーク事業を進めたのである。

 巨額な公共事業推進にあたって大義名分に掲げたのは、管理型の処分場がないという当時の県内事情。その状態が続かなければエコパークかごしまの建設理由を失う。民間の処分場などもってのほか。知事はこのため、九州北清の処分場設置許可申請を握りつぶしていたのである。法律などお構いなしの身勝手な行政運営だった。

 国の裁決が下されたものの、県はその後ものらりくらりと九州北清との折衝を引き延ばし。しかし、法律を無視することはできない。エコパークかごしまの工事進捗状況を見ながら、湧水町での処分場建設に許可を与えるしかなかった。エコパークかごしまは、再三の工期遅れで当初の完成予定が1年以上延びたものの、昨年暮れに竣工。「県内に最終処分場がない」という大義名分を振りかざす必要がない段階になっていた。昨年7月、県は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の規定に従って九州北清の許可申請書を告示、縦覧を経て11月に設置許可を出している。

 知事の二枚舌が、処分場をめぐる自己保身のためだったことは明らか。その時ごとに発言が変わる政治家の言葉を、信用することはできない。知事はエコパークかごしまの立地地盤について、「日本一安全」と言い切っている。しかし、同事業の工事が遅れたのは、豊富な湧水が原因。地下水の影響で、事業が破たんする可能性が指摘されている。川内原発も同じ。知事はこれについても「川内原発のあのサイトは極めて岩盤も固いし、従来からあの地域には地震や大きな津波の書籍上のあれ(記述)もありませんし、たぶん全国でもそういう意味で一番岩盤も固くて安定したところに立ち上がっていると私は思っています」(今月5日の会見での発言)と語っている。「思っています」程度で、原発再稼働を決められても困るのだが……。



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