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安倍を助ける「霞が関支配」 ―― 知事の6割中央官僚
― 進む中央集権化 ―

2014年12月16日 08:20

 安倍晋三が仕掛けた師走総選挙が終わった。自・公合わせて326議席。公示前と変わらぬ勢力だが、安倍は白紙委任を得たとばかりに、強権的な姿勢を強めることが確実だ。そこで気になるのは、これまで各党が提唱してきた「地方分権」や「道州制」といったキーワードが影を潜めたこと。政府・与党は「地方創生」などと聞こえの良いことを言っているが、安倍政権の手法は「中央集権国家」のそれだ。特定秘密保護法の制定、集団的自衛権の行使容認、原発推進――国民的な議論を排除し、安倍の一存ですべてが進む政治状況は、独裁と言っても過言ではあるまい。すっかり弱くなった「地方」。改めて調べてみると、安倍のうしろに控える『霞が関』によって牛耳られる地方自治体の姿が浮き彫りとなる。

知事の6割は霞が関官僚
 下は、公表されている47都道府県の知事名、前職、当選回数、出身校をまとめた表だ(注:佐賀県は、古川康氏が衆院議員に転身したため現在は知事不在)。

知事経歴表

 ピンク色で示した通り、47人の知事のうち、28人が霞が関の官僚出身。内訳は次のようになる。
・総務省(旧自治省含む)⇒13人
・経済産業省(旧通産省含む)⇒8人
・財務省⇒3人
・国土交通省(旧建設省・運輸省)⇒2人
・外務省⇒1人
・農林水産省⇒1人

 特徴としては、地方自治体の元締めともいえる旧自治省やその流れをくむ総務省出身が多いこと。次いで、経済産業省、運輸省と続いており、霞が関とのパイプを求める地方の弱さは、相変わらずだ。この状況に終止符を打たない限り、地方の自立は掛け声倒れになってしまうだろう。

 もう一点、注目すべきは原発立地県の実情。原発があるのは北海道、青森、宮城、福島、茨城、新潟、静岡、石川、福井、島根、愛媛、佐賀、鹿児島の13道県だが、うち8県の知事が霞が関官僚出身。新潟の知事を除き、いずれも積極的な原発再稼働容認の姿勢である。霞が関は原子力ムラと表裏一体。再稼働への動きが加速する背景には、原発立地県のトップが、県民ではなく原子力ムラの方を向いている現実がある。

沖縄――知事の背信
 安倍政権の進める原発推進や軍備強化といった政策には、地方自治体の協力が不可欠。まず、知事を取り込むことが必要だ。安倍は昨年暮れ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡って、沖縄の仲井眞弘多前知事を、毎年度3,000億円の沖縄振興予算と引きかえに抱き込み、埋立承認を認めさせた。仲井眞氏は元通産官僚。本籍は霞が関にあった。沖縄の誇りをいとも簡単に売り渡した背景には、省益や国益を優先させる官僚特有の考え方があったともとれる。

佐賀――知事の身勝手
 佐賀県の古川康前知事も同じ。総務省出身の同氏は、玄海原発(佐賀県玄海町)3号機のプルサーマル発電を認め、知事辞職の直前には新型輸送機オスプレイの佐賀空港配備を実現するための路線を敷いた。あげく任期途中で県民を踏み台にして国会議員に転身し、政権党の一員として安倍を支える姿勢を露わにしている。身勝手なのも、上昇志向が強いのも、霞が関官僚に共通する性癖だ。

鹿児島――知事の独裁
 原発再稼働の嚆矢になりそうな川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の立地県・鹿児島では、総務省出身の伊藤祐一郎氏が県政トップに君臨している。昨年、50年間で2例目のリコール(解職請求)対象となった同氏は、極めつけの暴君。川内原発再稼働を巡っては、同意権限を求める周辺自治体住民の声を無視。避難計画は不備のまま、一方的に議論を打ち切り、再稼働への同意を表明した。

 伊藤の暴政は目に余る。薩摩川内市では100億円もの公費をかけて産業廃棄物の管理型最終処分場を整備しているが、建設地は薩摩藩以来の霊峰「冠嶽」。信仰の聖地や水源を守りたいという地元住民の反対意見をカネと力で踏みつぶし、問答無用で事業を進めてきた。さらに、鹿児島市松陽台町には、環境整備もせぬまま県営住宅増設を表明。これまた地元町内会の意向を黙殺して、建設を強行している。いずれも事業試算は不十分。赤字必至と見られており、いずれ県民が尻拭いする形になるだろう。古川にしても伊藤にしても、民衆の苦痛が出世と名誉の糧となっている。総務省出身の知事に、ろくな人間はいないようだ。

遠のく「地方分権」
 47都道府県の知事のうち、6割が霞が関出身者。これは、知事の座が官僚の天下り先になっていることを示している。中央集権を志向する安倍政権にとって、官僚出身の知事は重宝な存在だろう。佐賀や鹿児島のように、元官僚が政府の方針に逆らうことはない。わずかな例外もあるが、大半は霞が関の地方駐在員。安倍の強権政治を、どこまでも支えることが予想される。地方分権の実現を望むことは、百年河清を俟つに等しい。



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