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原発もオスプレイも容認 知事目指す樋渡前武雄市長の身勝手
任期3年半残し市政放棄

2014年12月 4日 09:00

佐賀県庁 佐賀県における官僚出身の首長というのは、ろくでもない人間ばかりのようだ。まず古川康氏が、玄海原発(佐賀県玄海町)再稼働や、新型輸送機オスプレイの佐賀空港配備といった重要課題を放り出し、知事から国政へ転身。次いで武雄市長の樋渡啓祐氏が辞職し、4日、知事選出馬を表明した。ともに総務省出身。任期途中で次のステップに進むという無責任な振る舞いには、開いた口が塞がらない。とくに樋渡氏の身勝手さは目に余る。武雄市長として3度目の当選を決めたのは今年4月。なんと3年6か月もの任期を残していたのだ。自身の野望のためなら、有権者を踏み台にすることも厭わないらしい。案の定、出馬会見での樋渡氏は、県民の間に根強い反対がある原発再稼働やオスプレイを容認し、政権にすり寄る姿勢を露わにした。(写真は佐賀県庁)

改革者というより独裁者
 樋渡氏は毀誉褒貶相半ばする人物である。まず評価すべき点。赤字の市民病院を民間に委譲するなど、財政立て直しに成果を上げる一方、レンタル大手「TSUTAYA(ツタヤ)」と組んで武雄図書館を再生。同館は全国的に話題となり、来館者は1年で100万人近くに上っているという。良し悪しはともあれ、教育分野での取り組みも斬新。市内の全小学生にタブレット端末を無償配布したり、学習塾「花まる学習会」(さいたま市)と提携して公教育に民間のノウハウを導入するなど、常に注目を浴びる施策で世間の耳目を集めてきた。

 次に悪評。樋渡氏は改革者として名をあげる一方、独裁色の強い市政運営と他者への容赦ない攻撃を続けてきた。病院問題や図書館、タブレット端末利用の教育、学習塾との連携など注目された施策には、当然反対の声もある。しかし、樋渡氏は聞く耳持たず。意に沿わぬ相手に対してはTwitterなどで、醜いまでの攻撃を加えてきた。『気色悪い』『ゴキブリ以下』――ネット上に残る“つぶやき”の一例だ。市民病院の民営化に際しては、リコール(解職請求)運動に対し、機先を制する形で自ら辞職。あわてた相手陣営を尻目に再選を決めるというしたたかさを見せた。「人格に問題あり」――そう話す県内の政界関係者は少なくない。樋渡氏が知事選での推薦を求めた自民党県連関係者の一部でさえ、同氏に強い警戒感を抱いており、別の経済官僚を擁立する動きがあったほどだ。

軽んじられる県民の声
 その樋渡氏、4日の出馬会見で、原発再稼働やオスプレイの佐賀空港配備を容認し、安倍政権にすり寄る姿勢を露わにした。先月17日に首相官邸で菅義偉官房長官と会談し、知事選出馬を伝えていたが、この時、原発再稼働やオスプレイで政権に協力することを約束した可能性がある。わざわざ官邸に出向いたのは、政権政党の後ろ盾を得るためと見るのが自然。佐賀県民の声を聞く前に、政権の意向を確認した格好だ。「県民の声より政権の声」――これが樋渡氏の実相ではないのか。

 最大の問題は、任期を3年6か月も残して、武雄市長を辞職したことだ。古川氏の国政転出で、知事の座が目の前にぶら下がった途端、4月の市長選で市民に約束したことを反故にするというのだから、無責任極まりない。自身のブログであれこれ言い訳しているが、「はいそうですか」と納得する市民がどれほどいるだろう。

 前述したとおり、古川氏も樋渡氏も総務省の元官僚。仮に樋渡氏が知事になれば、無責任な同省の先輩・後輩で知事の座をたらい回しする形になる。佐賀県民はこれを許すのか?原発やオスプレイを容認する人物など、隣県の住民にとっては迷惑としか言いようがないが……。



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