従軍慰安婦と吉田調書をめぐる誤報問題で揺れる朝日新聞、さらにはこの時とばかり朝日叩きに明け暮れる読売・産経。一連の騒動がメディアの在り方に疑問を投げかけるなか、12月には産経がジャーナリスト・江川紹子氏のコメントを確認なしで不正に掲載。さらに渦中の朝日まで大学教授の見解を承諾なしで記事にしていたことが判明した。
調査報道の内容だけでなく、識者のコメントまで怪しいとなれば、新聞の何を信じればいいのか……。そう思っていたところへ、今度はTBSの記者が、自民党の政治資金で沖縄のリゾートホテルに宿泊していたことが報道された。25日、ネット上でその事実を自ら報じたTBSだったが、配信された記事は基本的なところで間違っており、指摘を受けて記事を削除――。大手メディアの報道姿勢に疑問が広がっている。
自局の恥、報じたものの…
下は、25日00時58分にTBSのホームページ上に配信されたニュースの画面を写したものだ(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
記事のタイトルは〔TBS記者の宿泊代、自民沖縄参院支部 支払い〕。TBS本社ビルの写真に続いて、リードにあたる部分にこうある。
TBSテレビ報道局の記者が、取材で出張した際に宿泊したホテル代を、自民党の政治資金団体に支払ってもらっていたことがわかりました。
じつは自社の恥を報じたこのニュース、冒頭の一行で間違いを犯してしまっている。
今回の問題は、昨年6月、TBSの記者が取材(?)で訪れた沖縄で、自民党の島尻安伊子参院議員が代表を務める「自民党沖縄県参院選挙区第2支部」にホテルの宿泊代を支払ってもらっていたというもの。政治資金を原資に取材する記者など聞いたことがないが、支払いを行ったのが自民支部であることは間違いない(下が同支部の政治資金収支報告書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。TBSも事実関係を認め、報道までしている。
一方、TBSニュースのリードにある「政治資金団体」とは、政治資金規正法に基づき、政党への資金援助を得るため政党が設立した団体のこと。政党とは別に企業献金を受け取ることが認められており、1政党につき1団体が設置可能だ。自民党の場合は「一般財団法人 国民政治協会」がそれにあたる。
TBS記者の宿泊代を支払っていたのは、前述の通り「自民党沖縄県参院選挙区第2支部」で、「一般財団法人 国民政治協会」ではない。つまり、TBSの流したニュースのリードは、明らかに間違い。誤報と言われてもおかしくあるまい。
間違いに気付いたHUNTERの記者が、TBSに電話して確認を求めたのが同日9時50分頃。折り返しで返事が来たのは11時近くだった。TBSの広報は「用語の誤用でした」と間違いを認めたが、その後、ネット上の記事は削除されている。
それにしても、「政治資金団体」と「政党支部」の区別がつかなかったことには開いた口が塞がらない。政治資金問題の“いろは”が分かっていない記者が原稿を書き、チェックが利かずにたれ流した格好。正式な訂正もなく、ネット上の記事を削除してしまった同局の姿勢にも疑問を禁じ得ない。大手メディアの報道内容、ますます信用できなくなってきた。