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川内原発再稼働 推進の「陳情書」に見るエゴ

2014年11月11日 07:00

20140114_h01-01t.jpg 7日、鹿児島県の伊藤祐一郎知事が、九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に合意することを表明した。
 薩摩川内市議会、岩切秀雄薩摩川内市長、そして県議会が相次いで再稼働を容認する姿勢を示したのを受けてのことだが、一連の流れを支えたのは、たった1件の「陳情」だった。
 数十件の反対陳情を黙殺し、県議会が採択した陳情書を見ると、改めて原発の抱える問題点が浮き彫りとなる。
(写真は、九州電力川内原子力発電所)

地域発展を阻害する「原発」 
 5月12日に県議会で受理され、先週7日に採択された『川内原子力発電所1・2号機の一日も早い再稼働を求める陳情』には、次のように記されている。

(陳情の要旨)
 平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一発電所の事故を機に、全国の原子力発電所は長期運転停止を余儀なくされた。  これにより、わが国においては,産業の血液ともいわれる電力の需給逼迫、火力発電燃料費の大幅増加に伴う国富の海外流出、更には電気料金の値上げといった事態を招き、企業活動やわが国経済成長の大きな足かせとなっている。

 一方、本市を振り返ると,合併後の新「薩摩川内市」の発展に高い関心が寄せられてきたが、少子高齢化の到来や過疎化の進行、中心市街地をはじめとする各地商店街の衰退等によって、取り巻く環境は大変厳しい状況にある。

 また、地域を支える重要産業のひとつの九州電力川内原子力発電所が運転を停止したことで、定期検査や補修に関わる建設・電気業関係者、作業員の宿泊を収入の柱とするホテル旅館・民宿業はもとより、流入人口減少により、サービス業、バス・タクシー業など関連するすべての業種に売上減少等の影響が拡大することが懸念されている。

 国は本年4月11日に閣議決定した「エネルギー基本計画」において、原子力発電を「重要なベースロード発電」と位置付け、原子力規制委員会が新規性基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、原子力発電所の再稼働を進めるとしている。
 したがって、川内原子力発電所1・2号機が新規性基準に適合すると判断された場合には、安全性の確保を大前提にその活用を推進し、疲弊する地域経済の活性化に繋がることを切に希望するものであり、下記事項について賛同くださるよう陳情する。

 川内原子力発電所1・2号機が新規性基準に適合すると判断された場合には、その後の手続きを迅速に進め、一日も早く再稼働すること。

 注目すべきは、陳情書の中のこの一文。≪一方、本市を振り返ると,合併後の新「薩摩川内市」の発展に高い関心が寄せられてきたが、少子高齢化の到来や過疎化の進行、中心市街地をはじめとする各地商店街の衰退等によって、取り巻く環境は大変厳しい状況にある。

 原発は、一部業者の利益を生んでも、普遍的な地域活性策にはならないことを、この陳情書がはからずも露呈した形だ。薩摩川内市は、平成16年10月に川内市、樋脇町、入来町、東郷町、祁答院町、里村、上甑村、下甑村、鹿島村が合併してできた市だが、発足当時に10万を超えていた人口は徐々に減り続け、現在は96,000人前後。原発が、「地域発展」に寄与していないことは明らかだ。

 川内原発が動いても、九電関係者や一部業者が潤うだけ。≪少子高齢化、過疎化、中心市街地をはじめとする各地商店街の衰退≫が止まることなどない。原発立地自治体はもともと過疎地。原発があってもなくても、別の地域振興策をひねり出さない限り、活性化は無理なのだ。原発に生活の糧を求める人々にとっては、原発再稼働が死活問題であることは事実。だが事故が起きた場合に被害を被る国民の数は、何万、何十万人規模。再稼働を容認するかどうかを、より多くの国民に尋ねるのは民主主義国家なら当たりまえのことだろう。それが無視される現実は、絶望的というしかない。

一部のエゴで進む原発再稼働
 陳情書の次のくだりは、原発再稼働を求めたのが、一部の業界団体だったことを如実に示している。

九州電力川内原子力発電所が運転を停止したことで、定期検査や補修に関わる建設・電気業関係者、作業員の宿泊を収入の柱とするホテル旅館・民宿業はもとより、流入人口減少により、サービス業、バス・タクシー業など関連するすべての業種に売上減少等の影響が拡大することが懸念されている

 陳情書を提出したのは「薩摩川内市原子力推進期成会」(会長・山元浩義・川内商工会議所会頭)。記されている通り、同会は商工会議所を中心に、市内の県建業会やホテル・旅館、輸送といった原発と密接なつながりを持つ業界団体の集まりだ。問題の陳情書は、大局的な見地から出されたものではなく、薩摩川内という一部地域の、一部業界団体の目先の利益のためのものなのだ。もちろん、彼らには暮らしを維持する権利が保障されているが、他市町村住民の生殺与奪権はない。自分たちさえ良ければそれでいいという問題ではないはずだが、多くの国民の意見は、原発政策に生かされていない。ちなみに、薩摩川内市議会で採択された陳情書も、「薩摩川内市原子力推進期成会」が提出したもの。県議会で採択されたものと同じ内容だった。

 ところで、今回と同じような愚行が、川内原発3号機の増設問題でも行われていたことがわかっている。福島第一原発の事故を受けて沙汰やみになっている3号機の増設だが、福島第一の事故が無ければ、とうに着工していた可能性が高い。伊藤知事は平成22年11月に3号機増設を了承しており、本来なら今年中に着工、31年12月に運転開始予定だった。

 下は、3号機建設の「賛成」に関する陳情書を提出した団体名。中核となっていたのは「川内原子力発電所3号機建設促進期成会」だが、会長を務めていたのは「川内商工会議所」の会頭。会長や建設、観光、飲食などの業界団体の顔ぶれをみると、再稼働を求めて今回の陳情書を出した「薩摩川内市原子力推進期成会」の構成とほぼ同じだったことがわかる。

川内原子力発電所3号機建設促進期成会 
川内商工会議所
薩摩川内市の未来・展望を語る会
薩摩川内市ホテル旅館組合
鹿児島県タクシー協会川内支部支部長手打一也
鹿児島県建設業協会川内支部支部長廣瀬十士
太平橋通り商店街振興組合
川薩電気工事工業協同組合
鹿児島県印刷工業組合川薩支部
薩摩川内建築建友会
鹿児島県料飲業生活衛生同業組合川薩支部
薩摩川内市電設協会
社団法人川内青年会議所
薩摩川内市商工会
Woman 創ing
薩摩川内地区安全運転管理協議会
川内間税会
(社)鹿児島県環境保全協会川薩支部
入来建友会
鹿児島県建設業協会甑島支部
薩摩川内市危険物安全協会
北薩造園業協会
川内造園技術協会
川内川宮里グラウンドゴルフ同好会
食を観る会
川内商工会議所女性会
(社)川薩法人会
(社)川薩法人会女性部会
薩摩川内市特産品協会
川内ガス販売協同組合
(社)鹿児島県産業廃棄物協会薩摩支部
西薩クレーン協会
薩摩川内市管工事業協同組合
薩摩川内観光協会
川内食肉事業協同組合
阿久根市観光協会
阿久根市旅館組合
阿久根建友会
鹿児島県タクシー協会西薩支部
出水電気工事工業協同組合
鹿児島県料飲業生活衛生同業者組合
阿久根市飲食店組合
串木野市電設協会
川薩電気工事工業協同組合
串木野建築協会
串木野緑地建設組合
鹿児島県建設業協会日置支部
いちき串木野市管工事組合

 「命よりカネ」を選択した伊藤鹿児島県知事、岩切薩摩川内市長とそれぞれの議会、さらには1枚の陳情書を提出することで「道具」を用意した業者ら。共犯関係にある彼らは、原発を動かすことで真の地域発展が遠のくこと、さらには多くの国民に不幸をもたらすことに、何の感慨も持たないのだろうか。



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