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「原発廃止論」が勝利 伊藤鹿児島県知事へ後輩の一撃
高校英語ディベート 県優勝は知事の母校

2014年11月 5日 09:30

川内原子力発電所 県民の声を無視して九州電力川内原子力発電所(薩摩川内市)の再稼働に突き進む伊藤祐一郎鹿児島県知事に、高校の後輩たちがきつい一撃を放った。
 今年12月に開催される「第9回全国高校生英語ディベート大会 in 静岡」の鹿児島県予選、優勝したのは伊藤知事の母校「ラ・サール高校」のチーム。「日本政府は原子力発電所を廃止すべきだ。(The Japanese government should abolish nuclear power plants.)」という論題で、同校チームは「原発廃止に賛成」の立場だった。
 数日中にも川内原発再稼働に合意を与える見通しの伊藤知事、後輩たちの活躍を素直に喜べるのだろうか。
(写真は川内原発)

鹿児島大会の優勝は知事の母校
 12月13・14日の両日に静岡県浜松市で行なわれる全国高校生英語ディベート大会の論題は、「The Japanese government should abolish nuclear power plants.(日本政府は原子力発電所を廃止すべきである)」。高校生が「原発の廃止」という重い課題についてディベートするが、現在、全国の都道府県では予選の真っ最中だ。そうしたなか、11校17チームが参加して「鹿児島県高校英語ディベートコンテスト」が開催された。

 3日、鹿児島情報高校で行われた同コンテストの決勝は、ラ・サール高校Bチームと大島高校Aチームの対決となった。論題は全国大会と同じだ。原発廃止を訴える賛成派としてディベートに立ったのはラ・サール高校のチーム。同校は、原発再稼働推進派の伊藤知事の母校である。3日は奇しくも、川内原発再稼働にお墨付きを与えるべく、“SM大臣”こと宮沢経済産業大臣が鹿児島入りし、川内原発を視察したうえで、伊藤知事に説明を行っていた。

 ラ・サールの生徒たちの原発廃止の主張は、およそ次のようなものだった。
≪原発は危険この上ない。再稼働が進められる川内原発についても、専門家が指摘するとおり、火山が近くにあり、稼働は極めて困難である。また、いかなる対策を取ろうと、原発の安全が保たれることはない。原発が安全だとの主張は楽観的過ぎると言わざるを得ない。また、産経新聞の報道によると、北朝鮮は原発へのテロ攻撃を明言しているという。イスラエルのイラン原発への攻撃の可能性同様、それは考えられることであり、この点でも、わが国の原発は危険であると言わざるを得ない≫

 論理的で説得力のあるラ・サール高校の生徒たちの主張は、ジャッジの心をとらえ優勝。原発再稼働に向けて暴走を止めない大先輩への、若き後輩たちからの警鐘・警告となった形だ。

とぼしい原発推進の論拠
 高校英語ディベートは極めてシビアなもので、何よりも論理性やデータの信用性が問われるという。国や電力会社の発表に信頼性が失われた中、高校生が原発容認論を展開するには困難がともなう。実際、ディベートに参加した高校の関係者からは、「原発推進を叫ぶ論拠が極端に少ないということがわかった。電気代が上がるだの、コストが安いといった幼稚な原発擁護論では、戦う道具にもならない」といった声が上がっていたほどだ。

 会場でディベートの模様を見ていた鹿児島市の男性は、次のように話す。
――ディベートとは、論題を賛成・反対の両派から論じるものであり、プレイをする個人の真意を主張するものではないことは百も承知です。しかし、私が目にした高校生の白熱したディベートからは、明らかに「日本政府は原発を廃止すべき」との主張が強く響いてきました。どれだけ反対派が新しい安全基準だの経済上の問題だのを持ち出そうと、原発に100%の安全を保障することはできません。火山の噴火や地震の予知はできないんですから。何より、増え続ける放射性廃棄物のことを挙げれば、原発廃止賛成の主張が説得力をもって、聞く人に伝わるのは当然でしょう。

 別のコンテスト関係者はこう語る。
――私が見たラ・サール高校と大島高校の試合は、非常に印象的な試合でした。原発再稼働を進める伊藤祐一郎鹿児島県知事が、ラサール高校の卒業生であることは、鹿児島では広く知られています。その後輩たちが、原発廃止賛成派として論じたのは、皮肉と言うしかありません。彼らの主張は、「安全をいくら保証しても、原発の安全が保障されることはない。川内原発については、火山噴火の危険もある。テロ攻撃に対しても全く無防備である。原発が安全だという主張はあまりにも楽観的過ぎる」というものでした。説得力がありました。伊藤知事は、後輩たちの主張を聞いて、自分の愚かさを見つめ直したほうがいい。

 「原発の是非」について、詳細なデータを持ち寄って、真剣に議論を尽くした高校生たちの英語ディベートは見事だった。十分な議論も尽くさず、川内原発再稼働に同意を与えようとしている鹿児島県の政治家たちとは対照的だ。立地自治体である県と薩摩川内市だけの同意で原発を動かそうとしている伊藤知事の姿を、高校の後輩たちはどう見ているのか――聞いてみたいと思ったのは、記者だけではなかったはずだ。



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