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福岡市副市長 市政批判報道に圧力メール
確認取材にも傲慢回答

2014年10月30日 08:15

福岡市役所 福岡市(高島宗一郎市長)の副市長が、現市政に批判的な記事を書いた朝日新聞の記者に、脅しともとれるメールを送信していたことが明らかとなった。
 報道の自由を否定する暴挙だが、メールを受け取った側の朝日新聞も沈黙を守っており、権力側の圧力に屈した形。腐敗した市政と記者クラブの関係を象徴する出来事といえそうだ。
(写真は福岡市役所)

副市長の暴走
 記者に圧力をかけていたのは貞刈厚仁副市長。関係者の話によると、今月8日から10日にかけて、朝日新聞に高島市政の検証記事が掲載された直後、記事を書いた女性記者に、報道内容を批判したうえで「今後の付き合いを考える」といった趣旨のメールを送信していた。

 問題の検証記事は、11月の市長選を前に高島市政の4年間を上・中、下の3回に分けて振り返ったもの。市長の実績を列挙すると同時に、問題点を指摘するという、ごく当たり前の内容だった(下がその記事)。

朝日新聞 記事

 〔選択 福岡市長選〕のワッペンが付けられた検証記事は、順調にみえる人工島の土地分譲の裏で進む税金投入、今年4月に市長が宣言した「待機児童ゼロ」が実態とかけ離れていること、これまた市長が声高に宣伝している国家戦略特区に不安材料があることなどを詳しく報じており、事実関係は何一つ間違えていない。記者の力量が評価される内容の記事だ。しかし、貞刈副市長は、この検証記事が掲載された直後、記者クラブ所属の女性記者に不満をぶつけるメールを送っていた。

 報道内容に間違いがあれば、市として正式に抗議するのが筋。だが、貞刈副市長は個人的にメールを送り、記事の内容を批判したうえで「今後の付き合いを考える」として取材活動を阻害するかのような脅し文句を並べていた。市長選を前に、高島市政にとって都合の悪い事実を隠ぺいする狙いがあるのは明らか。さらには、現市政を高く評価する記事を書けと強要したに等しい。

 福岡市役所では現在、一部業者との癒着が噂される市長の政務秘書が人事にまで介入、「天皇」と呼ばれるほどの権力を誇っており、貞刈副市長はその秘書ともっとも近い関係。ともに高島市政を支える立場で、腐敗が進む市の現状を、なんとしても表に出したくないという思いが歪んだ圧力につながったとみられる。

容認できない副市長の言い分
 29日、問題の圧力メールについて確認取材を申し入れたHUNTERに対し、貞刈副市長は、これまたメールで次のようにコメントを寄せた。

私が朝日の記者に送信したメールは、記事について私の所感を述べたもので、《「今後の付き合いを考える」趣旨のメール》との指摘については意味不明であり理解できません。このメールが朝日新聞に圧力をかけるような内容とは思いませんし、そのような意図もありません。

私たちは福岡市政発展の為に精一杯働いているつもりです。様々な民意を代表する議会での審議を経て議決を得て事業を遂行しています。停滞は許されません。

マスコミの記者は短期間で異動します。既に議論がなされ、それを踏まえて進めている事業について、蒸し返すような記事や、一方的でバランスを欠く記事と思うものには率直に所感を伝えております。直接、お会いして意見交換することも有りますが、今回はメールで意見させてもらった次第です。マスコミ報道の役割は依然大きいと思います。それだけに信頼性の高い記事であることを期待します。

貞刈

 副市長は、記者にメールを送ったことを認めている。そのうえで、朝日の記者に向けた『今後の付き合いを考える』という文言については、「意味不明であり理解できません」。記述自体を否定せず、ぼかした形で言い逃れする役人特有の手法だ。問題は、回答文を貫く副市長の考え方。回答を要約すると、次のようなことになる。

  • 議会を通した案件を、事業として進めている。
  • 事業への批判は、一度終わった議論を蒸し返すこと。
  • 批判は一方的な報道であり、バランスを欠いているから「所感」を伝えている。
  • 短期間で異動するような記者は黙っていろ。

 何様か知らないが、報道の使命を分かろうとしない役人特有の傲慢な姿勢としか言いようがない。前述したように、報道内容に間違いがあれば、福岡市として正式に抗議し訂正を求めるべきで、副市長がいちいち「所感」の形で異議を申し立てる必要などない。市ナンバー2の立場にいる人間が、所感と称してクレームをつけた時点で、それは「圧力」。貞刈氏は、その常識が理解できていない。さらに、“記者は短期間で異動する”と前置きして持論を展開しており、これは記者に仕事をするなと言っているに等しい。議会で認められた事業でも、経過が不適切なら批判は当然。だが、貞刈氏はそれさえも否定している。明らかに報道内容を捻じ曲げようとする圧力だ。

 問題はまだある。貞刈副市長は記者に送ったメールの中で、記事の内容が“共産党の主張と同じだ”といった文言を使ったとされ、事実なら政治的な中立を要求される公務員の立場を逸脱するもの。特別職だから問題ないとは言えず、市政運営自体が歪んでいることを証明した形だ。報道への圧力、特定政党の否定――いずれも即刻辞任に値する暴挙である。

 福岡市役所をめぐっては、高島市政に批判的な記事を書いた記者クラブ所属記者を、副市長ら幹部職員が呼びつけて圧力をかけることが常態化。そのせいか市政の暗部を照らし出すような調査報道は、ここ数年1件もない。腐った市政に、無力な記者クラブ――それが福岡市の現状なのだ。

しっかりしろ朝日新聞 
 余計なことかもしれないが、この際、朝日新聞にも苦言を呈しておきたい。報道の自由を侵害する役人の暴走に対し、朝日新聞は毅然とした対応を取るものと思っていた。しかし、副市長のメール送信から今日まで、この問題が報じられた形跡はない。「役所側からの抗議は日常茶飯。大したことではない」として不問に付すというのなら、それは権力の監視を使命とする報道機関の役割を放棄したも同然だ。かつての朝日なら、猛然と抗議し、日を置かずに紙面化されていたはず。権力と対峙するという朝日の存在価値を放棄するのなら、政権の犬「読売・産経」と何も変わらない。メールを送りつけられた記者が、上司に報告をしているのは確か。ならば、社として報道機関の矜持を示すべきだろう。報じないということは、つまり「逃げ」。権力側の圧力を圧力と感じないのであれば、「朝日新聞」の看板を下ろすしかあるまい。しっかりしろ、朝日新聞!



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